第50話 家族無双2
更新遅れてすみません!
仕事が急に増えまして、しばらくの間2日に1回更新のペースになりそうです。
次回は6/11月曜日の0時頃に更新します!
水晶に映し出された場所は王都の外だった。
剣の実力はヴァーリアンに劣るものの指揮能力の高さを買われたボアの大将軍パルアイス率いる5000の兵。
構成は歩兵3000、騎馬500、弓1000、魔法隊500となっている。
それと向かい合っているのは獣人だけで構成された3000人。
先頭に立っているのはまだ幼さが残る猫種獣人の男の子だった。
「皐月くんよ。で、隣にいるのがお姉ちゃんの弥生ちゃんと如月ちゃん」」
マニエル様がそう教えてくれた。
「あとは多分どっかに睦月と卯月ちゃんもいるはずなんだけど、人が多過ぎてわかんないね。あ、始まるよ」
「え?」
水晶に視線を移す。
ちょうど馬上のパルアイスが兵たちに檄を飛ばしたところだった。
王国の歩兵3000人が動き出した。
対する獣人たちも皐月くんという猫種獣人の合図でいっせいに走りだす。
2つの塊がぶつかり合った。
王国兵はよく鍛えられていて、パルアイスの手足のごとく機敏に動く。
旗色が悪い部分はすぐさま一度後退させ、弓なり魔法を撃ち込ませる。
逆に攻勢と見るや騎馬隊を突っ込ませてきた。
ここらへんはさすが歴戦の強者って感じだ。
人数の面でも劣っている獣人軍はよく頑張ってると思う。
その中でも2人の猫種獣人が一際目立った。
マニエル様が如月と紹介してくれた背の高い少女は単騎で突っ込み多くの兵を──それも部隊長を狙い澄ませて殴り倒していた。
もう1人は少しぽっちゃり気味の女の子、弥生ちゃん。こっちは戦闘には参加せず、ただひたすら傷ついた獣人に回復魔法をかけている。
回復量もさながらかけれる範囲が広い。これは回復魔法の進化型で治癒魔法だと思う。
弥生ちゃんに回復してもらった獣人たちが再び戦場に戻って行く。
それでも戦力の差は誤魔化しきれない。
次第に如月ちゃんの周りを囲む兵が増えてきた。弥生ちゃんの治癒魔法が間に合わなくなってきた。
「マニエル様、これは危ないんじゃ?」
「大丈夫。皐月くんがまだ動いてないからね」
言われてみれば最初先頭に立っていた幼い猫種獣人くんは、そこから一歩も動いていなかった。
「あ」
その皐月くんと目があった。
つまり上空を飛んでいるホークくんを見つけたのだ。
ピースされた。
勝利のVサイン?
「始まるわよ。あの子のスキルが」
マニエル様の言う通り、ピースサインを下げた皐月くんが今度は指揮者のように両腕を広げた。
淡い白い光が両腕から発され、隣の獣人に、そのまた隣の獣人へと伝染していく。
倒れていた獣人たちも光に包まれると1人、また1人と起き上がり始めた。
「これがあの子のスキルで指揮よ」
「え ⋯⋯ 指揮というと対象者のステータスを数%上げるスキルですよね?」
珍しくもなんともない一般スキル。
現にパルアイス将軍も持っていたはず。
でも、私の知ってるスキル指揮はあんな白い光は出さなかった。
「ふふふ。私もつい最近知ったんだけど、指揮のスキルレベルを50まで上げると追加効果が生まれるのよ」
「レベル50ですか!?」
普通の人では一生かけても上がらない域。そもそもスキルはレベルと違って上がりにくいのに ⋯⋯
「それでどんな効果が追加されたんですか?」
「チェイン効果って言ってたわ。指揮する人数が多ければ多いほど、ステータスの上昇幅が大きくなるらしいわ」
チェイン=鎖。
あの白い光は鎖を意味していたんだ。
「人数が多いほどって、あの規模だとどうなるんですか?」
「皐月くんが言うには2倍だって」
「にば、い、ですか?」
獣人自体、人間よりステータスが高い。
それを2倍にするということは ⋯⋯ 単純に考えると6000人に匹敵する?
いやいや、そんな考え方は間違ってるけど
『うおおおおおおおおおおおおおおおお!』
水晶からでもうるさいと思ってしまうほどの大音量の雄叫び。
それとともに獣人が再び突進を開始した。
今度は皐月くんも一緒だ。
あ、弥生ちゃんが後方から魔法で援護してる。
如月ちゃんが囲まれていた王国兵を吹っ飛ばした。
「あら、睦月ってばいいとこ取りするつもりね」
「どういうことですか?」
「あの偉そうな人を見てて」
偉そうな人とは馬上で指揮をとるパルアイスのことかな。
いきなりの獣人猛攻に混乱する部隊を必死に立て直そうとしているのがわかる。
やっぱり名将だわ。
ん?
いまなにかいた気が ⋯⋯ 気のせいじゃなかった。
パルアイスの後ろに猫耳の美少女がいた。
首筋に手刀一発。
パルアイスがガクンとなって馬から落ちた。
猫耳美少女は満足そうに頷くと馬上から姿を消した。
いや、違った。
上空に飛び上がり、そこでホークくんに似た男の子に掴まえてもらったんだ。
「あの猫耳が睦月よ。であそこまで密かに運んできたのがホークくんの弟でファルくん」
マニエル様が紹介してくれるけど耳に入ってこない。
私は水晶が映し出す光景に釘付けだった。
パルアイスが倒れたあと周りは騒然。
指揮系統が乱れに乱れた。
歩兵と連携が取れず弓隊は孤立。そこを獣人に突かれた。
騎馬隊は勝手に突撃して弥生ちゃんの魔法で返り討ちにあったり、魔法隊は詠唱中に如月ちゃん率いる部隊に蹴散らされたりと歩兵以外は壊滅状態。
ここまでくると放っておいても勝手に自滅しそうなものだけど、皐月くんは手を止めなかった。
その右手が幼い猫種獣人を指した。皐月くんそっくりだから弟かな。
「卯月くんよ」
指名された弟くん。もとい卯月くんがなにやら叫んだ。
途端に両拳が炎に包まれる。
なにあれ?
「スキル魔法拳。ただ剣じゃなくて拳に宿らせる応用スキルよ」
マニエル様が解説を入れてくれる。
あんな小さい子が応用スキルを使うなんて、あの兄弟はいったい何者なの?
卯月くんが飛び上がりファルくんの背中に着地。
ファルくんが高度を上げていき、卯月くんが飛び降りた。
地面に向かって両拳を突き出す。
ドッガーン!
そんな擬音語が聞こえてきそうなほどの爆発。
土煙がおさまったとき、卯月くんが落ちた場所には深いクレーターができていた。
これを見て歩兵たちが完全戦意喪失。
そこへ皐月くんがなにやら叫んだ。
多分降伏勧告じゃないかな。
現に兵士たちが武器を手離していた。
この戦いも隼人様側の圧勝で終わった。




