第45話 蛇神
桜雪親子が陸の国を出る前のこと
桜雪「ない! ないでござる!」
さくら「母上、なにがないの?」
桜雪「密かに買い集めていた西洋の服がどこにもないでござるよ!」
さくら「あ、もしかしてあれかな?」
桜雪「心当たりがあるでござるか!?」
さくら「皐月兄上たちが持っていったよー」
桜雪「 ⋯⋯ さくら、今すぐ旅に出るでござるよ!」
桜雪(殿悩殺用にセーラー服にバニー、セクシー下着を買ってただなんて恥ずかしすぎるでござる!)
〜143日目〜 ③
桜雪に事情を簡潔に説明。
「思い出したでござるよ。拙者、さくらを人質にとられたので戦闘を放棄したんでござった」
ま、卑怯な手を使いたくなる気持ちは痛いほどわかるけどな。
「とりあえず2人を自由にするでござるか」
桜雪が一瞬にしてさくらとオーガの仮面を壊した。
「え ⋯⋯ あ、母上! 元に戻ったんだ」
「心配かけたでござるが、もう大丈夫。あとは拙者と殿に任すでござるよ」
さくらとなぜか鼻の頭を掻きむしってるオーガを背に、俺と桜雪は蛇神の前に立った。
蛇神が両手を上に挙げる。
「降参よ、降参」
「随分といさぎがいいな」
「勇者を取られた以上、あたしに勝ち目はないわ。そうでしょう真田桜雪さん」
「確かにお主如きならいつでも斬れるでござるよ」
俺ならともかく桜雪なら蛇神相手でも楽勝かもしれない。
「わかってるから降参するのよ。刀を向けないでくれる? さくらちゃんからも言ってあげて」
「 ⋯⋯ 母上」
さくらが裾を引っ張り上目遣いに桜雪を見る。
「子供を使うとは卑怯でござろう」
「生き延びるためにはなんでもするわよ。それが卑怯というなら卑怯でけっこう。ギランさんもそう思わない?」
「 ⋯⋯ ⋯⋯ ⋯⋯ 」
誰も反応しない。
ギランって誰のことだ?
オーガのことか?
「反応しないということは、あたしのスキルについてそこのオーガから聞いていたのね」
なんのことだ?
「でも厄介な勇者親子はもらったわ。スキル蛇食い」
蛇神が投げキッス。
小さな蛇が2匹飛ばされ、桜雪とさくらの体内に吸い込まれていった。
「今のは!?」
「スキル蛇食い。名前に反応した者のスキルを食い尽くし、体内から出て行くさいには魂をも奪う呪いよ。空っぽになった体には蛇が巣食い操り人形と化すわ。さあ、食べなさい我が子たち」
あ、思い出した。
咄嗟に偽名を使ったんだった。
そういうスキルだったとは ⋯⋯ 本名教えなくてよかった。
「な、でござるか?」
「くる、しよ、ちち、え」
って、よくなーい!
「桜雪とさくらから呪いを取り除け」
隼丸を蛇神の喉元に突きつける。
「殺すならどうぞ。でもあたしを殺しても呪いは解けないし、奪ったスキルはあれの元に届けられる契約になってるの」
「あれ──なんのことだ?」
「壱の国の加護者よ。あれは見たこともないスキルを使って、あたしの愛する人を奪ったこの世界を壊そうとしてくれているの」
またA、か。
「そいつに会いたい。どこに行けば会える?」
「会ってどうするのよ?」
「みんなのスキルや魂を返してもらう」
「無駄よ。あれの野望は止められないわ」
「それを決めるのはお前じゃない。答えろ、そいつはどこにいるんだ?」
「言うと思う?」
揺らぐことのない瞳。
これは死んでも言いそうにないな。
『相棒』
突如響く隼丸の声。
いつもの陽気さがまったく感じられない真剣な声だった。
『すまねえけど俺様の言葉を蛇神に伝えてくれねえか?』
そういえばお前たち知り合いだったんだな。
わかった。
任せろ。
『ナルルナージャ』
「ナルルナージャ」
「っ!」
蛇神が驚いた様子で顔を上げた。
「どこで、誰から、その名を聞いたの? その名前はあなたごとき人間が気軽に口にしていい名前じゃないのよ」
「『豊穣の女神ナルルナージャ』」
「だから、簡単に口にするんじゃ
「『俺様がわからないのか?』」
「──なんですって?」
「『昔は神様の目を盗んでよく愛し合ったじゃねえか。お前は背中と左胸が弱いんだっけな』」
「な、な、ななななにを!」
蛇神の顔が真っ赤になる。
「『照れるとどもる癖は治ってないんだな。懐かしいぜ、ルナ』」
「え ⋯⋯ その呼び方、嘘でしょ? まさか ⋯⋯ 闘神キルガリアル様?」
「『今はお前と同じで邪神の身だ。名前も隼丸になった』」
真っ赤になっていた蛇神の目に涙が溜まっていく。
「『おいおい、泣くなよ』」
「探したんです。ずっとずっと探してたんです。もう一度あなたに会うためにあたしは長い間ずっと!」
蛇神が抱きついてくる。
いや、隼丸は俺じゃなくて刀だから!
あなた勘違いしてますよー。
『役得だな、相棒。抱いちまえ!』
いやいやいやいや!
そんな場合じゃないから。
とりあえず桜雪とさくらの呪いだけでも止めるように頼んでくれよ。
『かっかかか。さも俺様が言ったかのように言えばいいのに、相棒は真面目だな。いいぜ伝えてくれ』
隼丸の言葉をそのまま投げかける。
「『俺様からのたっての願いだ。この2人の呪いを解いてやってくれ』」
「 ⋯⋯ それはできません」
「『俺様よりも壱の国の加護者を選ぶのか?』」
「いえ、そういうことではなくて⋯⋯ あたしでは遅らすことはできても解くことはできないんです」
なんてこった!?
「じゃ、誰なら解けるんだ?」
隼丸を待たずに俺が訊ねていた。
「このスキルを作った壱の国の加護者。もしくはナイチンゲールのスキルなら」
ナイチンゲール?
この国の加護者か!
今すぐ行こう!
『待て、待て待て相棒。慌てるな。まずは蛇神に呪いを遅らせてもらえ』
あ、そうだったな。
俺は蛇神に頼み込む。
彼女はどこか艶めかしく笑うと、耳元で囁いてきた。
「条件があります。あたしに何百年かぶりのお情けをくださいまし」
桜雪親子を別室に連れて行き、オーガに看病を頼んでから部屋の前まで戻ってくる。
扉を開ける前にもう一度確認。
本当にいいのかよ。
お前の元恋人なんだろ?
『かっかかか。もはや俺様と相棒は一心同体。細かいことは気にすんな!』
俺にNTR属性はないんだが ⋯⋯
『ま、正直なところ俺様が相手してやりてえよ。なんなら今の俺様の黒くてぶっとくて硬いのをぶち込んでやってもいい』
柄のことを卑猥に言うな!
『俺様ならではの表現だろ。詩人と思わねえか?』
思わん!
『芸術がわかってないな。で話は戻すが、あいつには子を作って家庭を築いてもらいたいんだ。本来なら俺様がしてやれたことを相棒が代わりにやってほしい──頼む!』
急に真面目なトーンになるなよ。
ま、お前がそう言うなら ⋯⋯
『すまねえな相棒。この恩は必ず返すぜ。あとは楽しんでくれ』
そう言うと隼丸は意識を切らした。
呼びかけても起きることはなかった。
覚悟を決めて部屋に入る。
蛇神はすでに一糸まとわぬ姿だった。
胸が大きいわけでも、モデルのように引き締まってるわけでもない普通の女性だ。
なのに目を離せない魅力がある。
これが神か!
「キルガリアル様 ⋯⋯ いえ、隼丸様」
蛇神が俺にまとわりついてきて、体とともに唇を押し付けてくる。
舌で強引に俺の唇をこじ開け、中の舌を捉えらえ、捕らえられた。
もうこれだけで昇天してしまいそうになる。
「うふふふ、まだだ・め」
蛇神がゆっくりとしゃがんでいく。
俺の体に舌を這わせながら。
なんとも言えない快感に襲われる。
ズボンに手がかかり、一気に下ろされた。
パンツも脱がされ、んちゃ!
「あら、もうこんなに元気になっちゃって」
チュ、と触れるだけのキスをされる。
どこに?
そんな野暮なこと聞くなって。
部屋中に響く卑猥な音。
もうだめだ。
我慢できん!
「きゃっ!」
蛇神を押し倒し、野獣のように襲いかかる。
「あん! 昔より激しいっ! あ、そこ弱いの。だめ、だめだめだめだめ! そこばっかぁん! 本当にだめなの。グリグリはだめだって、だめええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
神であろうとも妊娠はするのであった。




