第37話 ゴブリンくんが行く 〜その4〜
番外編です。
明日は本編に戻ります。
我はゴブリン。
名前はまだない。
「ゴブ様〜」
名前はまだない。
「ゴブ様ってば」
名前はないのだ。
「 ⋯⋯ ゴミ様」
「せめてゴブと呼べ!」
「やっと向いてくれた」
「あ ⋯⋯ 」
ワニーの狡猾な罠に引っかかってしまった。
こやつ、進化してから頭がよくなったからな。
「して何の用だ?」
「ワニーたちはどこに向かってるのかなって思って」
「知らん!」
胸を張って答える。
エモル率いるイエローモールたちに地上までの道を掘ってもらったのはいいが、いざ外に出るとそこは見知らぬ樹海だった。
適当に森の中をさまようこと10日あまり。
食料には困らないが、いまだ出口が見えてこない。
⋯⋯ 同じところをグルグル回ってる気もするが気のせいだろう。
そういえば森を彷徨っているうちに配下が増えた。
後ろを振り向くと、我らに続くモンスターの群れ。総勢10匹。
「うむうむ。我も種に恥じない立派なゴブリンリーダーになってきたものだ」
「 ⋯⋯ ゴブ様、何度も言いますけど、こんな小物を仲間にしてどうするんですか?」
小物とは失礼な。
ピンクキャット、ピンクドッグ、ピンクナーガ、ピンクラビット、ピンクスワロー、ピンクマウスx4。
ピンク色で染めた自慢の軍団となろう。
なによりも我にはワニーには考えつかないだろう壮大な計画があるのだ。
ん!
あそこにいるはピンクリザード!
成長すれば二本足で歩けるようになるが、今はまだ成長途中の子供もようだな。
今のうちに手なづけるべし。
我 VS ピンクリザード(子供)
エクスカリバー6号(太い枝)で容赦なくボッコボコに殴ってやったら降参してきた。
我ウィン!
「貴様はこれからリザドと名乗るがよい」
ピンクリザードが首肯する。
同時に世界が止まる。
きたきたきたきた!
我の狙いどーり。
『特殊進化条件:異種族10種を従属にする。を満たしました。ゴブリンからオーガに移行できます。逸脱しますか? YES/NO』
YESだ!
はっはっは。
これでまた王に近づける。
時間が動き出し、白い光が我を包み込んだ。
いた、いたたたたた!
前回と同じような痛みが襲ってくる。
しかも今回は頭痛がひどい。
が、これもまた強くなるため。
我慢だがっまーん!
光りが弾けた。
さて我はどうなった?
目線が少し高くなったか。
体は ⋯⋯ おおお! 筋肉隆々ではないか!
色は赤色のままだな。
ワニーたちの反応は──
「ゴ、ゴブ様、そのお姿は?」
「進化したのだ」
「どう見てもゴブリンじゃなくなったんですけど」
「なんだと?」
鏡はないので川に走る。
そこに映った顔は我のまま。
でも頭に立派な角が一本生えていた。
これはもはやゴブリンではない。
オーガだ!
人型モンスターの中でも真ん中ぐらいに位置する種。
もちろんゴブリンより上だ。
ステータスはどうなった!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ゴブ様(仮)
豊月隼人とゴブリンクイーンの第一子
Lv:1
HP3500/3500
MP812/812
攻撃2846
防御2019
魔力944
魔防863
速度1412
幸運77
一般スキル
剣Lv32・回復魔法Lv38・指揮Lv39・炎魔法Lv27・槍Lv1・遠見Lv6・言語Lv16・威圧Lv1・気合Lv1・再生Lv1
特殊スキル
福運
鬼力
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レベルは1に戻ったがステータスは元の数値にプラス補正されたようだ。
我はまだまだ強くなれ
GYAAAAAAAA!
突如聞こえてきたのは悲鳴だった。
それもワニーたちを残した方角からだ。
なにかあったのだろうか!
元いた場所目掛けて走る。
みんなは──無事だ。
悲鳴の発生源はここではなかっ
GYAAAAAAAA!
また聞こえてきた。
こっちだ。
「ゴブ様置いていかないでください!」
「貴様らはここに残れ!」
「ワニーも行きます!」
「 ⋯⋯ ピルフはリザドたちを頼んだ。ワニー、来い」
「はい!」
ワニーの手を取って、そのまま抱き寄せた。
「え、ええ? ゴブ様お顔が近すぎます!」
「すまぬ。貴様の足に付き合っておると悲鳴の主が死んでしまう」
ワニーの頬が赤くなっている。
目が潤んでいる。
なぜだろう?
熱があるのか?
おでこを触ってみる。
熱はないか。
「い、行きましょうゴブ様!」
「うむ!」
結局、抱いたまま走る。
GYAAAA!
悲鳴とともに刃と刃がぶつかり合い音も聞こえきた。
近い。
「いた!」
草むらに隠れる。
戦っていたのは赤い熊──レッドベアーだ。
見たら隠れる。
会えば逃げる。
戦うなんてもってのほか。
森の災いとまで呼ばれ恐れられている存在。
それが右手をもがれ、左目には大きな傷。
体の至る所から血を流していた。
相手は人間だ。
それもワニーと同じぐらいの幼女。
自分の背丈ほどある長刀を構え、ふと目だけをこちらに向けてきた。
バレている!?
なら仕方なし。
「ワニーはここにおれ」
我は堂々と草むらから姿を現した。
レッドベアーは驚き、人間の幼女は刀の切っ先をこちらに向き変えた。
「レッドベアーよ。もしも命長らえたらならば我から名をもらえ」
本来なら従属するようなモンスターではないが、この状況だ。
果たしてレッドベアーは──大きく頷いた。
「約束だぞ」
我は人間と正面から向きなおる。
腰からエクスカリバー6号を抜く。
「ここからは我が相手だ」
「 ⋯⋯ 森にオーガがいるなんて珍しい。でもやることに変わりはない。魔法剣付与『雷』」
人間が持つ刀に雷が宿った。
待て、待て待て待て!
それは反則であろう!
こちらは太い枝一本だぞ。
「いくよ」
「た、たーいむ!」
「ん?」
「少しだけ待て!」
考えろ。
あれに対抗するための武器は ⋯⋯
石。
無理だ。
木の棒。
無理だ。
大木。
持ち上げられん。
だったら ⋯⋯ は!
あった。
我としたことが自分がオーガになったことをすっかり忘れておった!
「ねえ、まだ?」
「もう少しだけ待ってくれ!」
我は自分の角に手をかけ、
「ぬおおお! ぬおおおおおおお!」
「 ⋯⋯ なにしてるの?」
「見てわからんとは愚か者だな。オーガの1番の武器である角を抜こうとしているのだ!」
「 ⋯⋯ それ抜けないと思う」
「そんなはずはなかろう! では何のために角があると言うんだ? 武器にするためであろう。レッドベアー、手伝ってくれ」
左手一本になったレッドベアーに角を持ってもらい、
「ぬおおお! ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ポン。
軽い音とともに角が抜けた。
「見よ、抜けたではないか!」
ん、視界が赤い。
違う。
赤い雨が降っておるのか。
「ゴブ様、頭から大量の血が!」
ワニーの指摘でようやく角が抜けたあとから出血してることの気付いた。
慌てて回復魔法をかけて傷をふさいだ。
「危うく死にかけた。しかし、武器はしかと手に入れたぞ」
レッドベアーから角を受け取る。
⋯⋯ 持ちにくい。
どうやって使えばいいんだ?
手に引っ付かんのかこれ?
「ねえ」
「すまん。これの使い方がわからんのだ」
「 ⋯⋯ さくら、もう帰っていい?」
「え?」
「きみを見てるとなんかやる気がなくなっちゃったっていうか ⋯⋯ とりあえず母上のとこに帰る。バイバイ」
人間が帰っていく。
追い返した!
「ゴブ様!」
ワニーが飛びついてくる。
レッドベアーも生き延びて喜んでいる。
我は勝った!
「勝ったぞ!」
まだ見ぬ人間の父よ。
我はゴブリンからオーガになったぞ。
配下も増え、着々と勢力も増やしておる。
いつか必ずあなたを見つけてみせる!
少しでも続きが読みたい。気になる。という方はブックマークしてください。
モチベーションが上がります!




