第35話 魚人族
気づけば1ヶ月毎日更新達成してました。
ひとえに読んでくれる皆様のおかげです。
本当にありがとうございます!
〜127日目〜
ガザドロフの子供が生まれるまで一緒にいたかったんだけど、海の主との期限が迫っているので城をあとにすることにした。
「ちょっと待って、お兄ちゃん!」
「走るなって! お腹に響くだろう」
慌てて馬車を止め、ガザドロフに駆け寄る。
「お腹は痛くないか?」
「大丈夫。心配してくれてありがとう」
「当たり前だろ。それでどうしたんだ?」
「この子の名前。男の子ならアレクセイ。女の子ならイヴってつけるよ。覚えておいてね、お兄ちゃんパパ」
ちゅ、とほっぺにキスされた。
今度こそ城をあとにした。
〜128日目〜
来たときと同じく休みなしで馬車を走らせ、ミツトモ商会参の国支部がある街まで戻って来た。
本来ならここで馬をかえて出発したいんだけど、普段海中で過ごしているエーラにはきつそうだ。
宿を取ることにした。
カブリラが防犯面も考えて3人で1部屋にしましょう、と言い出した。
確かに魚人族はいま人身売買の目玉になっているし、カブリラも希少な竜人だ。
離れるよりかは一緒のほうが安心かも。
エーラにもきちんと説明して納得してもらった。
念には念を入れカブリラにはフードをかぶって顔を隠してもらい、人魚のエーラには大きな布袋に入ってもらってから宿屋にチェックイン。
ちなみに人魚だからと言って常に水の中にいる必要はないらしい。
食事は頼まず、手持ちの干し肉で済ました。
「寝てていいぞ。俺は起きて見張っとく」
エーラがなにか言いたそうにしている。
ってあれ?
そういえば今の今までエーラの声を聞いたことがなかった。
「もしかして喋れないのか?」
頷くことで肯定された。
寡黙な少女だなとは思ってたけど ⋯⋯
「悪いことを聞いてしまったな」
エーラは首を横に振り、指でなにか操作し始めた。
それは水魔法で、空中に文字を書いていたのだ。
不思議と読めてしまう。
スキル異世界言語のおかげかな。
『謝るのはこちらです。遠いところまで来させてしまって申し訳ありませんでした。本当にありがとうございます』
「海の主と俺が勝手に約束したことだから、きみは気にしなくていい。そんなことよりも、明日も早いから寝たほうがいい」
エーラは頷き目を閉じた。
疲れていたのだろう。
すぐに寝息が聞こえてきた。
「彼女、かわいいですね」
カブリラがエーラの髪を指で梳く。
「寝込みを襲わないんですか?」
「お前、俺をどんな奴だと思ってるんだ?」
「女と見れば見境なく襲う最低男だと思っていま ⋯⋯ 嘘ですよ嘘。そんな怖い顔をしなくれもいいじゃないですか」
「ったく、お前は本当に性格悪いな」
「褒め言葉と受け取っておきます」
話は変わりますが、とカブリラが急に真剣な表情をした。
「隼人さんは人身売買を潰そうとしてるんですか?」
「当たり前だろ」
「ならミツトモ商会が関わってるってことがどういうことかわかってます?」
何が言いたいかわからない。
「簡単に説明してあげますよ。ミツトモ商会はワイン事件で潰れた商会を買い上げ、一気に全国区になりました。全ての国に商会の支部があるんです」
「それが?」
「つまり人身売買は全国区で行われてるってことですよ」
「──あ」
そういうことか。
俺は今までムァイケルがいる参の国支部を潰せばいいと思ってた。
でもミツトモ商会が元凶なら、全てを潰さなくちゃ人身売買はなくならない。
「隼人さんは自分1人でできると思いますか? ミツトモ商会は裏社会だけじゃなく、王族やその地の権力者にも顔がききます。もちろん冒険者にも」
「 ⋯⋯ 無理だな。最悪、こっちが悪者にされかねない」
「ですよね。だから、やるんなら一斉にです。全国蜂起です」
「協力者を仰げと?」
「近いですけど、少しだけ違いますね」
言ってカブリラはなぜか気持ち良さそうに寝てるエーラを指差した。
「彼女は魚人族の姫です。その子供は魚人族の長となります。わかりますよね」
「 ⋯⋯ 子作りしろと?」
「隼人さんを裏切ることがない絶対の味方ですよ」
「それはそうだけど ⋯⋯ 」
視線は自然とエーラの下半身に。
どっからどう見ても魚だよな。
どうやっていたせばいいんだ?
「そこは心配しなくていいですよ。言葉は悪いですが、人魚は発情すると露出しますので」
「そ、そんなこと誰も聞いてない!」
「あたしの早とちりでしたか? でも本気で考えておいてください。子竜くんたちを見てわかりましたけど、あなたの子供は普通の子供よりも強くなる。それは虐げられてきた種族にとって、とても心強いことです」
スキル子孫繁栄はそういう効果だからな。
「考えておく」
そう答えるしかできなかった。
〜129日目〜
日が昇る前に2人を起こし街を出ていった。
国境橋を渡り、壱の国に無事戻ってくることができた。
「ベズエラに寄りますか?」
「時間が勿体無いから、このまま行こう」
馬車を走らせる。
真っ直ぐに向かったおかげで日が変わる前に海の主がいる場所に辿り着いた。
俺はエーラを抱きかかえ、海の中へと連れて行く。
「エーラ」
呼びかけると、胸の貝殻の中から一匹の子クラゲを取り出した。
子クラゲは迷うことなく一直線に海へ潜っていく。
直後、不自然な渦が誕生。
けど、海を騒がせることなくゆっくりと海の主は浮上してきた。
その頭には子クラゲが乗っている。
「アリ、ガ、トウ」
「いいってことよ。もう人間を襲うなよ」
「ヤクソク」
クラゲ親子が海の中に消えていった。
「あとはエーラか。家はどこにあるんだ?」
その問いに彼女が指差した場所は海中だった。
〜130日目〜
夜の海は人魚のエーラでも危ないらしく朝を待ってから海中に潜った。
この世界には水中魔法というものまであるらしい。
エーラにかけてもらった魔法で、俺たちはいま水中でも呼吸ができるようになっている。
気分はスノーケリング。
沖縄の海みたいだ。
行ったことないけど。
魚が綺麗だな。
美味しそう。
⋯⋯ 遅いって怒られた。
エーラに手を取られ速度アップ。
連れて行かれたのは海中都市だった。
都市?
訂正。
村だな。
エーラが村に入ると、多くの住民が駆け(泳ぎ)寄ってきた。
女性が多い。
男性は ⋯⋯ 子供やお年寄りばっか。
若い男の人魚はいないんだろうか?
その中に 、
「よく無事で帰ってきてくれました!」
エーラによく似た女性がいた。
お姉さんかな?
エーラよりも胸が大きくてスタイルがいい。
『ご心配おかけしました、お母様』
光魔法?
水中に光りで文字が書かれる。
って母親かい!
めっちゃ若くて綺麗なんですけど。
「人間に捕まったと聞いたときは目の前が真っ暗になりましたよ」
『あちらの豊月隼人様とカブリラ様に助けていただいたのです』
どうも、と挨拶をしておく。
エーラの母親が頭を下げた。
「娘がたいへんお世話になりました。私は魚人族の王ピーレと申します」
「豊月隼人です。こっちが竜人族の
「カブリラですわ。ピーレ王とお会いできてとても嬉しいです」
優雅に挨拶をするカブリラ。
簡単に頭を下げただけの俺がマナー知らずに思ってしまう。
「ところでピーレ王。この村には男性の姿が1人も見えませんが」
「人種魚人の生態をご存じではありませんか?」
人魚って人種魚人って言うんだ。
変なのー。
「勉強不足です。すみません」
「あまり知れ渡っていないかもしれませんね。私たち人魚は種族同士では子供を作れないので、適齢期が来たら地上に伴侶を探しに行くんですよ。男性はそのまま地上に残り、女性は子種を貰って戻ってくるのが習わしです。この子も──」
エーラを見て苦笑する。
「それで海上付近に。そのとき捕まったんでしょうね。本当に助けていただきありがとうございます」
再度お礼を言われ、
「ささやかですが宴を催しますので、こちらへどうぞ」
「そんないいでいたっ!」
カブリラに足の小指をおもいきり踏まれた。
「なにすんだよ?」
「チャンスを不意にするつもりですか?」
「なんのチャンスだよ?」
「エーラ姫は伴侶を求めている。相手は他種族しか無理。そこに現れた隼人さん。これはもう一昨日の話を実践しろと言ってるようなもんじゃないんですか」
一昨日の話 ⋯⋯ って子作りかい!
「あの、ご多忙でしょうか?」
「いえいえ。あたしも隼人さんも喜んで参加させてもらいます」
「それは良かったです。準備ができるまでは私たちの屋敷へどうぞ」
なし崩し的に魚人族での滞在が決定した。
おわかりでしょうが、明日は子作りです!




