第34話 ガザドロフ・チャイカ
〜125日目〜
兵士たちによって用意されたゲーム専用の部屋に移動。
テーブル1つに椅子が2つ置かれただけの殺風景な部屋だった。
そこに兵士数人がかりが大きな水槽を持ってきた。
1人の少女が入っている。
青色の髪、透き通るような肌、大きな胸を隠しているのは貝殻。
なにより目を見張ったのは下半身だ。
足がなく、魚のようだ。
人魚か。
「彼女が魚人族の姫でエーラちゃんだよ」
近寄ろうとしたら制された。
「ゲームが先だよ、お兄ちゃん」
「その子が本当に魚人族の姫かどうか確かめさせてくれ」
「ぶぅ。僕が嘘をついてると思ってるんだ。そんなことしないのに」
頬を膨らまし拗ねるガザドロフ。
本当に幼く見える。
何歳なんだろうか?
気になるところだ。
「嘘をついてるとは思ってないけど、一応」
「言い訳はいいよ。どーぞ、お好きなだけ」
許可が出たので水槽ごしに話しかける。
「子クラゲは一緒か?」
彼女は首を縦に振ると、貝殻の中から小さなクラゲを取り出した。
「確かに魚人族の姫だな」
「でしょ。僕は嘘つかないもん。じゃ、座ってお兄ちゃん」
席につく。
「好きなの選んで。ゲーム内容もお兄ちゃんに任せるから」
「なんでもいいのか? 例えばトランプ以外でも?」
「構わないよ。手っ取り早くじゃんけんでもいいよ」
「いや、せっかくだからトランプにしよう。こっちの世界に来てから初めて見たし」
ガザドロフが作ったというトランプが5つ。
どれもかわいいイラスト付きなんだけど、その中でも猫さん柄を選択。
睦月は元気にしてるかな。
「ゲームはポーカー? ブラックジャック? カブ?」
「ポーカーで」
「オーケー。中立をたもつために竜人のお姉ちゃん、これ配ってくれる」
カブリラがディラーになる。
トランプを5枚配り、
ハートのエース、クローバーのエース、ダイヤの5と8、スペードの8がきた。
すでにダブルペアだ。
「交換は一回だけね。僕は3枚かえる」
「俺は1枚だ」
引いたカードはスペードのエース。
フルハウスの完成だ。
役としては強いほうなんだけど ⋯⋯
「いくよ──オープン」
ガザドロフの手札は同じ数字が4枚。
つまりフォーカードだった。
スキル必勝に偽りなしか。
「俺の負けだな」
「だね。あ、言ってなかったけど、僕がゲームで勝つと相手からスキルを奪えるんだ」
ガザドロフが手を広げると、体からなにかが抜けていった。
ステータスを開くと、
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豊月隼人
子孫繁栄の女神の信者
Lv:15
HP14368/14368
MP7863/7863
攻撃12133
防御14364
魔力8148
魔防14077
速度13330
幸運74
称号
無職・ニート・ヒモ
加護スキル
子孫繁栄
──子はかすがい・子は親の背中を見て育つ
異世界言語
自己回復
観察
魔法創生
叡智
一般スキル
炎魔法Lv1・拳法Lv1・風魔法Lv1
槍Lv1・遠見Lv1・飛行Lv1・剣Lv1・聖技Lv1・雷魔法Lv1・集中Lv1・魔眼Lv2・魔力操作Lv1・魔法増幅Lv1・魔具制作Lv1・騎乗Lv1・言語Lv1・水魔法Lv1・治癒魔法Lv1・
HP強化(小)・攻撃強化(小)・防御強化(小)
MP強化(小)・魔力強化(小)・魔防強化(小)
物理耐性(大)・魔法耐性(大)・異常無効
特殊スキル
生存
天運
福運
龍使役
龍変化
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加護スキルも特殊スキルも無事に残っていた。
一般スキルだとなにがなくなったのかよくわからない。
ガザドロフを観察してみよう。
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ガザドロフ・チャイカ
闇の女神の信者
Lv:18
HP193/193
MP168/168
攻撃192
防御113
魔力174
魔防104
速度214
幸運7
加護スキル
ゲーム
必勝
異世界言語
一般スキル
剣Lv1・槍Lv1・斧Lv1・噛みつきLv1
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1番いらない噛みつきかい!
奪われたのは一回も使ったことのない凡庸スキルだった。
「ちぇ。一般スキルだったか。やっぱりあれから運気も低迷してるや」
「あれからって?」
「あいつに負けたときから」
スキル必勝を持ちながら負けた?
「お兄ちゃんも気をつけなよ。壱の国の同郷者はスキルを無効化する加護を持ってるから」
「そいつの名前は? どんな奴だったんだ?」
「Aと呼んでって言われたよ。あと顔から足まで全身を黒いローブで覆ってたからわかんない。声は女の人だった」
名前も外見もわからず。
わかったのは女性ということか。
それだけでは気をつけようもないな。
「あ、でもミツトモ商会と関係があるみたいだった。僕に会いにきたのもそれが目的だったみたいだし」
「ミツトモ商会?」
「うん。この国で新しい商売をしたいから容認してほしいって頼まれたんだ」
まさか──
「人身売買?」
「そう。ゲームに勝ったら、て条件をつけて断ろうとしたんだよ。でも見事に負けちゃった」
ミツトモ商会も関与してるんじゃなくて、元凶だったのか!
「おかげで国の治安がさらに乱れるし ⋯⋯ 散々だよ。変な契約もさせられるし」
「契約?」
「多分Aの加護の1つだと思う。勝つ気満々だったからちゃんと読まなかった僕も悪いんだけどね。ていうか元々僕には読めなかったんだ」
これ、とガザドロフはポケットから1枚の羊毛紙を取り出した。
そこに書かれていたのは、この世界の言葉でも英語でもなく日本語だった。
壱の国の地球人は日本出身だとわかる。
羊毛紙の文章を読むと、人身売買を容認することともう1つ──
「10日に1度、Aが所有していないスキルを献上すること。って書いてあるな」
「そうなんだ。最初は自分のスキルを渡してたんだけど、もう加護しか残ってなくて ⋯⋯ 仕方がなくレアスキルの持ち主にゲームを挑んではスキルを奪ってたんだ。つい昨日もエーラちゃんの特殊スキル『海王召喚』を渡したところだよ」
魚人族を集めてたことのはそのためか!
「俺を待っていたのも」
「珍しいスキル持ってるでしょ? 僕にちょうだいよお兄ちゃん」
満面の笑み。
けど、話を聞いた今ではどこか無理やりに作ってるように見えた。
「 ⋯⋯ ゲームはもうしないぞ」
「だよね。それにしてくれても結果は同じだろうし」
ガザドロフがトランプを広げた。
「1枚引いてみて」
適当にとる。
ハートのクイーンだった。
「なかなか強いね。以前の僕なら負けないけど、今は ⋯⋯ 」
ガザドロフが引いたカードはクローバーの2。最弱のカードだった。
「やっぱりね。運気が落ちすぎてスキル頼りでしか勝てなくなってる」
「ちなみにスキルを献上しなかったらどうなるんだ?」
「10日間を過ぎると僕の全スキルはAに奪われるらしい」
借金みたいだ。
10日に1度、利子を払ってるようなもんか。
それも元金が減らずに一生搾取され続け、返済が遅れると全額返済を求められるという ⋯⋯
「それでいいのか?」
「よくないよ。でも、現状打破する方法も思いつかないし、おとなしく従うしかないんだよね」
「1つだけあるかと思いますよ」
今まで黙って聞いていたカブリラが口を開いた。
「さっき昨日献上したと言いましたよね? だったら、次まで10日あるということです」
「そう、なるけど ⋯⋯ それがなに?」
「今なら間に合うんですよ」
カブリラが俺を見て、ニヤッと笑った。
ちょっと待て。
なにを言うつも
「子作りしてください」
〜126日目〜
カブリラの提案は的を得ていた。
今の段階で俺と子供を作れば、ガザドロフのスキルは子供に遺伝する。
10日を過ぎればガザドロフ自身はスキルを失うかもしれないけど、子供と二人三脚でやっていけばいい。
なによりもこれで契約に悩まされることがなくなるのだ。
ガザドロフは1日悩み──その提案を受け入れた。
「僕、こういうのは初めてなんだ。よろしくね、お兄ちゃん」
「もちろんだとも。ただ1つだけ気になることが。きみは何歳なんだ?」
「女性に年を聞くなんてマナー違反だよ。でも安心していいよ。子供は産めるし、地球にいたとしてもお兄ちゃんが捕まることはないよ。さあ来て」
抱きしめる。
「まずはなにをするの?」
「キスからかな」
唇を合わせるだけの優しいキス。
「大人のキスもお願い」
「わかった」
2度目のキスは濃厚に。
「これ、すごいね。頭が真っ白になっちゃう」
「まだまだ。これからだよ」
「優しくしてくれるって信じてるよ、お兄ちゃん」
〜事後〜
「ウソツキウソツキウソツキウソツキウソツキ! 全然優しくなかったし! 気持ちよくなんかないし! お兄ちゃんのバカ! あん。ちょ、触んないでよ。え、じゃ舐めてって? なにを ⋯⋯ これ? えー、無理無理無理無理! 気持ち悪いから近づけあん。待って、そこダメ。ダメって言ってるのに ⋯⋯ あん。ホントに待っんん。もう1回? バカ。まだヒリヒリしてるのに。ってそんな顔しないで。次はほんとに優しくしてくれるならいいよ、お・に・い・ちゃ・ん」
ガザドロフのお腹が大きくなりました。




