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レイト・デイズ  作者: 有栖
終章『デイズの終わり』
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第二十三話『デイズの真実』


「仁科白羽、お前はもう死んでいる。」

「……え…?」


スサノオの口から真実が明かされる。

白羽は絶句。口を開けて、呆然としている。

怜斗は、悔しさに満ちた表情。

アイは悲痛な表情で白羽から目を逸らしている。


「私…死んで…?」


白羽はまだ少しも言葉の意味が飲み込めていないようだ。


「ここから先は俺は知らねえ。ほら八潮怜斗、教えてやれよ。あの日の真実を。」

「てめえ…。」


ジロリとスサノオを恨めしそうに睨みつける。

だが、呆然としている白羽をチラッと見て、少し深呼吸してから口を開く。


「ごめん、白羽。ホントはこの事実は俺が言わなきゃいけなかったんだ…。優柔不断だったばっかりに、こんな形になっちまった……。だから、せめてあの日。お前が事故にあった日の事を話させてくれ……。白羽の事故の日に何があったのかを…。」


そして、怜斗は思い出しながら語り始める。

事故からの日々の真実を。


***


「はあ…幽霊ってすることないな…。」

暇だ。ただただ暇だ。

毎日惰性で浮いてるけど、実際幽霊にすることなんてない。

俺は怨みではなく、ただ『もう少し生きたいなー。』と、漠然と霊になったから復讐とかの目的がないのだ。


「あー、暇だー。もう成仏しよーかなー…。」


と、暇を撒き散らしながらフワフワウロウロしていると、近くから見知った声がする。


「あっ!怜斗お兄ちゃんだ!!」


高鍋アイ。

霊になった俺に手取り足取り霊のイロハを教えてくれた。


「おー、アイ。何やってんだ?」

「えへへ、お散歩。」

「そっか、アイは毎日暇じゃないか?」

「ううん、毎日こんなふうにイロイロな霊と話したりしてるから楽しいよ?」

「そうか…。」


アイは毎日が楽しいようだ。

俺も、何か楽しみを見つけないといけないな…。

***


「アイ…。お前、いつからこの街でサボってた…。」

「えっと、二ヶ月くらいかなあ…?」

「なっ……。お前なあ…。」


そう言うスサノオは、頭が痛そうな表情だ。

自由奔放な部下を持つと大変なのだろう。

そんなふたりを横目で見ながら、怜斗は話を進める。

白羽の顔は伏せられており、その表情はうかがえない。



***


「この道はあれだなあ…。トラックが通るなあ…。狭いのに。」

「うん、なんか国道の抜け道になってるんだって。」

「へえ…。でもこんなにスピード出してると事故でも起きそうだよなあ…。」


そんな話をしている俺達の耳に甲高い、嫌なブレーキ音とバァンッという衝撃音が届く。


「あんなふうに?」

「そう、あんなふうに…。って、うおいっ!!」


呑気にアイが指を指した先では、少女が宙を舞っていた。


「ちょっ……!やばいだろアレ!」


慌ててそっちに飛んでいくも、少女は地面に叩きつけられてグッタリとしている。


「うわあ、血がヤバイな…。」

「怜斗お兄ちゃん、この娘、もうダメだよ…。死んじゃってる。魂はまだ留まってるけど…。」

「なんとか助けられないか…?」


必死で頭の中で方法を模索して、とある方法を思いついた。


「そうだ、俺が憑けば…。憑いて力を注げば生きられるんじゃ…。」


俺は、急いで少女の手を掴もうとする。


「待って!!」


パシッと手をアイに捕まれる。


「怜斗お兄ちゃん、人間を生かすためには凄いたくさんの力がいるよ?怜斗お兄ちゃんが干からびて消えるくらいの力が。もしできても死が確定した人間を生き返らせるのはこの世の摂理に反する禁止事項。だから、黄泉の人に捕まっちゃうよ?」

「でも、俺も事故で死んだんだ。もう目の前で、あんなに理不尽な死を見たくない。それを見るくらいなら、捕まるか、消えるかしたほうがましだ。」


俺はそう言って、チラッと倒れている少女の方を見る。

この娘を死なせたくない。死ぬ所は見たくないし、

何より、割とタイプだ。


「はあ…。まだ霊として若いなあ…。これくらいは慣れなきゃダメなのに…。」


俺がそんなことを考えていると、アイが小さい声で何かを呟いて手を放す。


「わかったよ。私も黄泉の取締官なんだけどお兄ちゃんたちのことは見逃してあげる。でも消えそうになったら止めるし、私以外の黄泉の人に捕まりそうになったら諦める。わかった?」


アイが、いつもと違う大人びた表情と口調でそう言う。


「ああ、わかった。」


俺は、そう言って少女の手に自分の手を翳す。


「おおおっ!!」


ありったけの力を注ぎ込む。

だが、俺の中の力が尽きる気はしない。

助けたい。ただ、この少女を助けたい。

その感情から力が溢れ出す。

そして、倒れている少女に少し生気が戻ってくる。


「よし…なんとか持ち直したか…。」


俺はかいていない汗を拭う。

あとは、継続的に一定量の力を流し続ければこの少女は生きられる。

ホッと一息つき、ふと足元を見ると、鞄から出てしまったのであろうノートが落ちていた。


「仁科白羽…。」


***


「んで、今に至ってる。」


怜斗は、あの日の真実を語り終える。


「怜斗お兄ちゃんは凄いよ。噂っていう形では霊力がつかないのに白羽お姉ちゃんを生かしたいっていう感情だけでずっと力を生み出してるんだから。」


と、アイが白羽に語り掛けるものの、彼女は未だに何も言えないようだ。

うつむいてピクリとも動かず、表情も読み取れない。


「しょうがないよね…。いきなり死んでるなんて言われたんだから…。」


アイは、経験論から白羽の沈黙をやむなしとする。

誰しもそうだろう。いきなりこのようなことを言われて受け入れられる人なんているわけがない。


「俺にとってもその精神力は凄まじい。尊敬するぜ。だからこそ――」


そこでスサノオは一旦言葉を切り、一瞬の間の後にこう続けた。


「八潮怜斗、お前に二つ目の罰を与える。お前と仁科白羽、お前達二人には黄泉で俺の管理下で働いてもらう。」


それはすなわち……


「――それに伴い、仁科白羽はこの世の摂理通り、死んでもらう。」


そういうことである。

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