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レイト・デイズ  作者: 有栖
終章『デイズの終わり』
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第二十二話『あの方』


『ヴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!』


雄叫びというよりは駆動音を上げながら突っ込んでくる掃除機を睨みながら桃華が叫ぶ。


「まずいですわっ!かなり強力な概念体ですわよっ!!」

「桃華ちゃん!あれ、強いの??」


見た目は巨大であるがただの掃除機であるため、少し怖がりながらも、白羽はふたりの恐れる概念体の強さに疑問を持つ。


「強いですわっ!無駄な"心"のない、ただ"吸い込む"という機能だけを具現化している概念体ですのっ!!」

「しかも、あの概念体はただの掃除機型じゃないっ!!吸引力の変わらない"サイクロン"掃除機型なのっ!!」


桃華とアイにそういわれ、怜斗と白羽は、心のある概念体の姿を思いだし、納得する。

思い返されたのは主に七不思議。


「アイさん、お願いいたしますわ!」

「わかった!!白羽お姉ちゃん達はその辺に隠れててっ!!」


そう言って、アイと桃華は素早く概念体の方に向かう。


「隠れろって言われても…。」

「怜斗君!あそこの物陰に隠れようっ!!」


そう言って、白羽は走って物陰を目指す。

――が、そこで概念体の注意が白羽の方に向く。


『ヴォォォォッ!!』


空気が渦巻き、掃除機が吸引を始める。


「キャアアアッ!!」

「うおおっ!?」


凄い吸引力だ。

サイクロン掃除機は伊達じゃない。


「ちょっ!?やばっ!!」


白羽は近くのものに捕まるが、物に触れない怜斗はどうしようもなく吸い込まれる。


「怜斗君っ!?」


白羽が咄嗟に手を伸ばすが、もちろん触れることは出来ずにすり抜ける。


「グファッ!?」


しかし、4mの壁がなんとか吸い込まれるのを阻む。


「ちょっ、潰れるっ!!」


しかし、壁に思いっきり吸いつけられて結構な負荷がかかっているようだ。


「うおおっ…。やばいやばいやばいやばいっ!!」

「怜斗君ッ!」


すると、怜斗の後ろにアイが瞬間移動で現れる。


「ちょっと待ってねっ!」


アイが怜斗に触れると、ふたりの姿がかき消える。


「はいお届けっ!」


消えたことをを認識したと同時に、怜斗とアイが白羽の傍に現れる。


「うわあ、ビックリした!」

「えへへっ、それじゃあ二人はここにいてねっ!!」



ふたりにそう言い残し、アイの姿が再び消える。

彼女は瞬間移動を小刻みにしながら、概念体に一気に接近する。


「アイさんっ!側面はどこも硬いですわっ!!」


桃華が弓を射ながらアイに向かって叫ぶ。


「それなら下はどうかな~?エイッ☆」


アイが手を一降りすると、ドンッ!!と地面が爆発する。


『ヴォォォォッ!?』


概念体が困惑したような雄叫びを上げながら吹き飛ばされ、ひっくり返る。

掃除機はひっくり返ったらなかなか戻れない。


「桃華ちゃん、一気にいくよっ!」

「はいですわっ!」


合図を受けた桃華は一気に飛び上がり、火を纏った矢を雨のように浴びせる。

霊の力を使って矢を強化しているのだ。

矢を射尽くした桃華は、怜斗達の傍に着地をする。


「エイッ!エーイッ!!」


アイは、可愛く声を出しながら、概念体の周りを爆破したり雷を落としたり噴火させたりしている。

耳をつんざくような轟音が断続的に響き続ける。


「アイさんは恐ろしいですわ…。」


怜斗達の横で少し休憩をしている桃華が、アイの戦いっぷりを見てそう呟く。


「そうなの?」

「あなたも霊になれば恐ろしさがわかりますわ、仁科白羽。わたくしは矢を媒介にしなければ霊の力を炎や雷に変化させられませんの。」

「だけどアイちゃん、バンバンやってるよ?」


そんな話をしている間にも、轟音が響き続けている。


「だから恐ろしいのですわ。アイさんは媒介なしでやってのけますの。しかも、持っている霊力も段違いですわ。さすがは、黄泉第二の使い手…。」

「アイちゃんが一番じゃないの?」

「第一の使い手は、わたくし達の上司ですわ。」

「上司…?」

「ええ。黄泉の管理者。そして、あなた達の前に立ちはだかる方ですわ。」


桃華がそう言うと同時に、攻撃を止めたアイが傍にフッと現れる。


「無理っ!!」

『無理!?』


開口一番、アイが諦めを口にする。


「もう結構力を吸ってたみたいだから、強くなってて硬すぎ!!」

「あんなに音がしてたのに…。」

「あははっ、一発も通らなかったっ!」


『テヘッ☆』と笑うアイだが、状況は笑えるものではない。

掃除機は、吸い込む部分を鞭のように使って地面を叩き、その反動で起き上がる。


『ヴォォォォッ!!』


怒ったような雄叫びを上げながら、怜斗達の方へジワジワと移動してくる。

そして、グワッとノズルを掲げ、『吸い込んでやろうかー!』というような挙動を見せる。


「まずいですわ…。アイさんですら傷をつけられない概念体だなんて…。もう、あの概念体を倒せるのは"あの方"しか…。」


その桃華の言葉に言霊が宿っていたのか、上から唐突に声が響く。


「断罪だっ!!オラアアアアアアアアッ!!」


その声と同時に一筋の雷が概念体を捉える。


『ヴォオオオオッ!!』

「ハハハッ!悲鳴じみた叫びだなっ!!すぐに楽にしてやるよっ!!」


フッと掃除機の胴体的な部分の真上に一人の青年が現れる。

その手には一振りの剣が握られていた。


「オラァッ!!」


人間離れした速度で振り下ろされた剣は、衝撃波の尾を引きながら概念体を切り裂く。


『ヴォ…オォォ…。』


苦しげなうめき声を上げながら、胴体を切り裂かれた概念体が透けて、消えていく。


「うわあ…。」

「すごいなあ…。」


怜斗と白羽が感心しながら見ていると、アイが厳しい顔をして怜斗に話しかける。


「怜斗お兄ちゃん、感心してる場合じゃないよ。来たんだよ、あの人が」


それを聞いて、怜斗の表情も厳しいものになる。


「ああ、そうか…。あれが…。」


地面に降り立ち、剣を無造作に持っている青年を見ながら呟く。

青年を見た桃華が驚いたような表情で青年に声をかける。


「スサノオ…様。」

「おう、いかにもスサノオ様だぜ。」


その声に反応して、いつの間にか瞬間移動していた青年

――黄泉を管理する神、スサノオは答える。


「桃華、八潮怜斗の発見ご苦労さん。」

「は、はい…。ありがとうございます。」


スサノオの言葉に、桃華は素直に頭を下げた。


「で、アイよ。」

「何かな。スサノオおにーちゃん?」


こめかみをヒクつかせながら呼びかけてきたスサノオに対し、アイはいつも通りの無邪気な声で答える。


「どうして八潮怜斗と接触後すぐに連絡しなかった。」

「エヘヘッ、見てたら楽しくなっちゃって。」


舌を小さく出しながらそう言うアイに、スサノオは大きくため息をつく。


「はあ…。ったく…。お前ほど霊力が使える奴はいねぇから失う訳にはいかねえんだよなあ…。まあ許してやるよ。」

「ありがとっ!!」


上司であり、神であるスサノオ相手に敬語を使わないアイはなかなかに肝が据わっていると言えよう。


「さて、だがしかしだ。八潮怜斗に関しては、いくらお前が肩入れしているとしても容赦はしねぇぞ?」

「うん。わかってる。怜斗お兄ちゃんにもそう言ってあるから。」

「ふん、そうかよ。」


そう言ってスサノオは怜斗の方を見て、厳しい顔をする。


「"大罪人"八潮怜斗。まず、ここでお前に一つ罰を与える。」

「何っ!?」


スサノオのその言葉に怜斗は身構える。


「お前が仁科白羽に隠している秘密を、今俺の口から告げてやる。お前は、俺が言うまでその事実を口にできねぇ。」


スサノオは、ニヤリと意地悪に笑いながらそう言うと、怜斗に向けてチャックを閉めるように手を動かす。


「なっ!?」


対して怜斗の表情には焦りの色が浮かび、スサノオの方に向けて飛び出す。


「止めろっ!!」

「止めねぇよ。これも罰だ。甘んじて受けろ。」


そしてスサノオは怜斗から目を離し、白羽の方を向く。


「仁科白羽、ここでお前に真実を伝える。あいつがひた隠しにしていたことだ。心して聞けよ。」

「止めろっ!!言うなぁっ!!」


怜斗が必死に制止しようと叫びスサノオに迫るが、4mの壁にぶつかって止まらざるを得ない。


「くそっくそっ!!」


それでも怜斗はなんとか制止しようと必死に壁を叩き、叫ぶ。

その光景を見ながら、アイは悲痛な表情を浮かべる。


「これは、お前にとって重い事実となるだろう。」

「止めろおおおおおおおおおおっ!言うなああああああっ!!」


怜斗の制止も虚しく、ここで真実が明かされる。


「仁科白羽、お前はもう死んでいる。」

「――え…?」




白羽の目の前が真っ暗になった。

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