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レイト・デイズ  作者: 有栖
第三章『病院の幽霊』
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第十九話『灯台デモクラシー』


「これから、青葉の額のマークとそれによって起きている衰弱についての作戦会議を始める。」


バンッとセリフと共に白羽がライトで照らされて真っ暗な部屋に浮かび上がる。(注;白羽の脳内映像)


「お、おい…。どうしたんだよ白羽…。」

「怜斗君、今は私のことは隊長と呼びなさい。」

「訳がわからない…。」


怜斗が、白羽の謎の演技に困惑する。


「隊長、本作戦において俺は戦力にならないかと。」

「亮っ!?」


亮も乗っかり、メガネをクイッと指で上げながら参謀風の演技を始める。

怜斗の表情に更に困惑の色が増す。


「ふむ、というと?」

「俺は青葉に憑いているからこの場を離れられない。」

「なるほど、『4mの壁』ね。」

「ああ、だから俺は青葉に憑き続けて衰弱を防ぐ。」

「わかった。じゃあ私と怜斗君で今回の件の首謀者と見られる霊について調査する、以上。本作戦に関して何か質問は?」

「隊長!!しかしながら亮が浮遊霊に戻れば捜索部隊を増やせますっ!!」


流れに乗ろうと、怜斗がやけくそに叫ぶと、白羽と亮がジト目で怜斗のことを見る。


『うわあ…こいつなにやっちゃってんの…。寒いわあ…。』

「お前らが始めたんじゃねーかっ!!」


なんとも息の合ったセリフである。お前ら緊急事態の割には呑気だなっ!!

ツッコミはさておき、怜斗のセリフに白羽が反応し直す。


「浮遊霊に戻る?」

「ああ…。白羽は知らなかったか。実はな――」

「どこからともなくババンと参上っ!ここはアイが説明するねっ?」

『うわっ!?』


説明をしようとした怜斗を遮るように、アイがピョコッと姿を表す。

説明したがり、アイちゃんである。

擬音の言いまわしが古いアイちゃんである。

二回紹介した理由は特にない。



「浮遊霊は自由に人に憑いたり離れたりできるの。こんなふうに!!」


と、アイが近くを通りかかったおじさんの手を両手で掴む。

その手が輝き、一瞬アイとおじさんの間に光の紐のようなものが見えた。


「これでアイは今、この人に憑いたことになるの。」

「意外と簡単なんだね…。」

「そして、簡単に浮遊霊に戻れるよ。」


パチンッと指を弾くと、おじさんが自分の肩を抑え、「一瞬肩が重くなったな…。」と呟きながら歩いて行った。

4m以上離れてももちろんアイは壁にはぶつかっていない。


「ね?意外と簡単なんだよ。」


アイの様子に感心したような表情の白羽が、怜斗を横目で見ながら言う。


「そうなんだ…。あ、怜斗君。よかったら離れてくれる?」

「やだねー。結構居心地いいからお断りだ。」


流れるようなやりとりに、アイはクスクスと笑いつつ今回の捜索案に関してコメントする。


「あははっ、でも亮お兄ちゃんが残るのは賛成だよ?アイも一応探すけどあんまり期待しないでねっ!!」

「わかった。ありがとう、アイちゃん!!」


そう言って、アイはフッと消える。

たぶん、病院内のどこかで霊を探しているのだろう。


「アイちゃんって神出鬼没だよね…。」

「アイは空間転移できるからな…。」

「怜斗君はできないの?」

「無理。あんなに上手く力を使えない。」

「そうなんだ…。すごいんだねえアイちゃん…。」

「一体何年霊をやってるんだか…。っと、あんまり雑談に時間を使ってもダメだな…。」


アイの実年齢は乙女の秘密である。……言い回しが古いな!


「あ、そうだね。青葉を苦しめる凶悪な霊を探しに行かないと!」

「よし、絶対見つけるぞっ!!」

「おーーっ!!」


気合いを入れた二人は、とりあえず病院の中を歩き回ることにする。


-2分後-


「歩くのはいいけど何処を探そう…。」

「今更かよっ!?いや、まあ確かに闇雲に探すには広すぎるな…。」

「霊の気配はないんだっけ?」

「病院だからかもしれないが、よくわからん。気配を消すのが上手いのか、ただ紛れてるだけなのか…?」

「じゃあ足で探すしかないかな…。刑事は脚だよ!」

「ああ、そうだな…?」


納得しかけた怜斗は一瞬首をかしげる。

当然白羽は刑事ではない。


「よーしっ、覚悟を決めて歩こーっ!!」

「ほんとはサボりたかったのかよ…。」


少し歩くと、点滴をカラカラと引きながら歩いている入院患者らしきおじいさんに出会った。


「すいませーん。」


どうやら、患者の人に聞き込みを始めるようだ。


「あぁ?あんだってえ?」

「あのー、聞きたいことがあるんですけどー」

「あぁ?わしは耳が遠いでのお。」

「質問してもいいですかーっ?」

「あぁ?ああ、ああ、ええよええよ。」

「この病院で、幽霊の噂とか、聞いたことありませんかー?」

「おぉ!!」

「あるんですかっ!?」


なにかを思い出したようなおじいさんの表情に、白羽が期待に満ちた目を向ける。


「わしは98歳じゃ、趣味は将棋、これでも若いころはは"ぷれーぼーい"でのお。」


だが、返ってきたのは質問とは完全に食い違った答え。


「…。」

「ダメだ白羽、このじいさん役に立たん。」

「いや、まだわかんないよ。」


だが、白羽はめげずに聞き直す。


「そうじゃなくて、幽霊の噂とか、聞いたことありませんかー?」

「おぉっ!!」

「ありますかっ!!」


今度こそ何かを思い出したようなおじいさんの表情に、白羽が期待に満ちた目を向ける。


「腹減った。」

「……。」

「白羽、ダメだこのじいさん役に立たん。」

「…うん。」


白羽が怜斗と念話で話しているうちに、おじいさんは『飯だ飯ー。』とか言いながら歩いて行ってしまった。


「ま、まあめげるな白羽。聞き込みはいいと思うぞ!!」

「うん…頑張る。」


そして、白羽は会った人すべての人に聞き込みをする。


「あの!!幽霊の噂とか知りませんか?」

「…さあ?」

「あの!!幽霊の(以下略)」

「知らないなあ…」

「あの!!(以下略)」

「ごめんなさい、わかりません」


-30分後-


「収穫なしか…。」

「青葉ぁ…。」


白羽は、かなり落ち込んでいる。

そんな彼女の様子に苦笑しながら、怜斗は話しかける。



「大丈夫だって白羽。そんなに早く衰弱してる訳じゃないし、亮も憑いてるじゃないか。」


怜斗が慰めようとするも、白羽の表情は明るくならない。

怜斗は、少し『うーん』と考え込んで、ハッと何かを思いついたような顔をする。


「そうだ、そもそも噂を力のベースにしてる霊が今回の犯人なら、患者から病院関係者まで聞いて噂を聞かないなんてことは有り得ないんだ。」

「あ……。」

「だから、この聞き込みで今回の犯人は怨みとか未練とかの感情を力のベースにしてるんだ。ほら、聞き込みの収穫あったじゃないか!」

「う、うんっ!!」


怜斗の必死の励ましに、白羽の顔に笑顔が戻る。


「あとは、何処にそいつがいるかってことだな…。」


少し怜斗が考えていると――


「白羽お姉ちゃん、怜斗お兄ちゃん!耳寄りな情報持ってきたよ。」


アイが、ふたりの目の前にフッと現れた。


「アイちゃん、情報って?」

「ちょっと病院の資料を覗いて来たんだけど、青葉お姉ちゃんの病室で最近たくさん亡くなってるよ!!しかも、みんな亡くなるほど重い病気じゃなかったみたい。」


そこで一息つき、続ける。


「それで、その連鎖の最初に亡くなった人だけは、ちゃんと"重たい病気"だったの。これ、怪しくないかな?」


気がついたら、三人は青葉の病室の前まで移動してきていた。


「そうだったら、最初から"ここ"にいたんだ…。」

「そうだね。白羽お姉ちゃん、怜斗お兄ちゃん、早く終わらせちゃおっ!!」

『おーっ!!』


気合いを入れた後に、怜斗がボソッと呟く。


「でも普通に考えたらこの病室に犯人がいるに決まってるんだよな…。ほら、こういう時は灯台デモクラシーって言うし?」

『いや、言わない。』


それを言うなら灯台下暗しである。

怜斗の馬鹿な発言にツッコミつつ、締まらない空気の中で白羽は来たときよりも重く感じる1144号室のドアを開けた。

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