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レイト・デイズ  作者: 有栖
第三章『病院の幽霊』
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第十六話『夏休み初日-朝の動乱-』


「行ってきまーす!!」

「気をつけてねー」


白羽は、少しの勉強道具とたくさんの遊び道具を持って青葉の家に向かう。

やはりそちらが本命か。

始まる前から勉強会の雲行きが怪しくなってきた。

白羽の家から青葉の家は、徒歩で10分ほどだ。

だが、その道のりに立ちはだかるのは日差しが猛威を振るう夏である。10分の徒歩でも暑くて疲れるのだ。


「着いたあ…。」


白羽は、額の汗を拭いながら青葉の家を見上げる。


「いやあ、暑そうだなあ。」


そんな汗だくの白羽を、怜斗が『大変そうだなあ…。』と眺める。


「怜斗君暑くないからずるいよお…。」

「やはは、霊の特権だぜ!」


満面の笑みでそう自慢する怜斗。

白羽は若干イラッとして、怜斗に向けてピョンピョンと飛びかかり掴みかかろうとする。


「もー、ずるい!ずーるーい!!」

「やはは、いいだろー。」


当然白羽が怜斗に触れることはかなわず、白羽はただ汗を余計にかくことになっただけであった。


「はあ……。エアコン入ってないかなあ…。」


そんな願望を口にしながら、普段より長く感じた道のりを越え白羽は青葉の家のインターホンを鳴らす。

すると、玄関の向こうからパタパタと誰かが走ってくる音が聞こえ、勢いよく扉が開く。



「白羽?いらっしゃい!」

「おお、怜斗と白羽か。」


青葉と亮のお出迎えである。


「お邪魔しまーす。」

「エアコン…エアコン…。」


(霊なのに)きちんと挨拶をする怜斗と、七不思議『エアコン女』となった白羽が青葉宅に入る。

と、いうかエアコン女だと空気を入れ換えてくれそう役立つ霊のようなニュアンスである。


「天国だああああああっ!!」


勝手に青葉の部屋に入り、念願だったエアコンの恩恵を授かった白羽が叫ぶ。


「天国だってよ。」

「死んでないのにな。」


そんな白羽の上で怜斗と亮が何か言っているが、白羽は聞こえないふり。


「はい白羽、お茶だよ。」

「ありがとーっ!」


白羽は、青葉の差し出したお茶を受け取るやいなや、グビッグビッと喉を鳴らしながら飲み干す。


「プハアッ!うまいっ!!」


まるでCMのようなカメラ目線で言葉を放つ。

カメラがどこにあるかは知らない。


「あれ、弥呼子は??」

「きっともうすぐ来ると思う。」


ようやく熱さによる呪縛から解き放たれて普段の調子を取り戻した白羽が発したその言葉と同時にインターホンが鳴る。


「あ、来た!」


噂が人を呼ぶとはよく言ったものである。

そして、弥呼子も合流して青葉の部屋の小さなテーブルを囲む。


「うわ…弥呼子。今日も巫女服なの…?」


学校以外で、彼女は巫女服を着ている。

見ているだけで暑そうだ。


「ウチは修行中やから。過酷な環境で感覚をとぎすますんと。最近はだいぶ霊の存在を感知できるようになってきたんよ?」


弥呼子が胸を張ってそう言うが、目と鼻の先では怜斗と亮がジト目で彼女を見ている。


「いや、感知できてないだろ。」

「できてないな。」


まだまだ彼女は半人前なようだ。


「さて、3人揃ったし宿題やろーっ!」


発案者である青葉が元気よくそう言い、勉強会が始まった。

学生最大の敵、夏の宿題を前にしてどうして彼女はこんなにテンションが高いのだろうか。


対して、白羽と弥呼子はというと――


『はあ………。』


とてつもなくテンションが低かった。

普通がこうであり、青葉が間違っているのだ。

そうに決まっている。


そんな雰囲気ではあるが、三人は各々宿題を取り出してやり始める。

カリカリと文字を書く音だけが響く中、霊ふたりも喋るのを自重しているようだ。

ただ、やはり暇なのか、浮きながら組体操をしている。

その技はとても人間には真似できず、宙に浮いている者ならではの独創性に目を奪われる。

5分、10分と経ち(組体操は続いている)、ある程度集中していた白羽のシャーペンを持つ手が、次第にプルプルと震え始める。

ペキッと芯が折れたついでに白羽の心の芯も折れ、バッと顔を上げて叫ぶ。


「逆に気が散るわっ!」


溜めに溜めたツッコミの勢いは凄まじく、青葉と弥呼子はビクッとする。

そんな二人を見て、怜斗と亮もビクッとした。

ついでに白羽もビクッとした。

なぜ彼女もビクッとしたのか。


傍から見たらいきなり叫んだだけの白羽に、青葉が恐る恐る問いかける。


「白羽…どうしたの…?とり憑かれたみたいに叫んで…。」

「怖かったんよ…。」

「え?あはは…。ちょっと勉強に疲れちゃって。ほら、『この集中した空気をぶち壊すっ!』みたいな?」


とり憑かれている白羽がしどろもどろな感じで言い訳をする。


「もー、白羽集中切れるの早すぎだよー?」

「あはは…ゴメン…。」


目の前で人間業でない組体操が行われていて集中できる人間を逆に紹介してほしい。

ここまでくると白羽は咄嗟の言い訳を貫くしかなく、鞄の中から携帯ゲーム機を取り出し、いい笑顔で言う。


「ゲームしよっ!?」


そんな白羽を見て、青葉と弥呼子は苦笑いしながら宿題をするのを止める。

かくして、勉強会は幕を降ろしてゲーム大会が始まる。

まあ、勉強会なんてやはりきっとこうなる定めなのだろう。


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