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レイト・デイズ  作者: 有栖
第三章『病院の幽霊』
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第十七話『縁日と大輪の花』


『っ!?』


ゲーム大会開始からしばらく経ち、昼ご飯すらも忘れ、縁日へ行く時間が近づいた頃に、三人が同時に『ハッ!?しまった!?』みたいな表情で顔を上げる。


「しまった…宿題…。」

「全くやってないんよ…。」

「そもそも白羽が変なこと言うから…。」

「ゴメン…。」


そんな三人を霊二人は呆れ顔で見る。


「やっと気づいたな…。」

「ああ、やっとだな…。」


そんな霊ふたりに白羽が小声で話しかける。


「教えてくれればよかったのに…。」

「何回か声かけたけどお前全く気づかなかったぞ?」

「あう…。そんなあ…。」


相当な集中だったようである。

それを勉強に使えばいいのにというのは無理な相談だろう。


「まあしょうがないか…。夏休みはまだ始まったばっかだしね!着替えて縁日行こう?」


青葉がそう言い、白羽は頷いて鞄の中から浴衣を取り出し、着替えようとしてピタリと動きを止める。

この中にふたり、男がいる。

その事実を露とも知らずに、青葉が自分の服に手をかける。


「わーーーーっ!!!」


白羽が、傍から見たら怪しい叫びを上げて怜斗と亮の方を睨む。


「出てけーーーーっ!!」


その声の圧力に負けたのか、ふたりは焦ったように部屋の壁をすり抜けて外に出る。


「ぐはあっ!」

「痛っ!!」


焦って出すぎて宿主から4m以上離れてしまったのか、壁の向こうから悲鳴が聴こえる。


「ふう…、一安心…」


白羽が額の汗を拭い、仕事をした感を出すと、ふと変な視線を感じた。


「白羽…何か今日変だよ…?」

「こ…怖いんよ…。」


まあ当然のことながら、青葉と弥呼子が恐怖の目を白羽に向けていた。


「あ…あははー…。」


白羽は、苦笑いでごまかした。

そして着替えが終わり、白羽はそっと壁際で囁く。


「もういいよー。」


その声を聞き、怜斗と亮が部屋の中に戻ってくる。


「全く…あんなに怒鳴らなくても…。」

「怜斗の言う通りだ…。俺達だってそのくらいの倫理感はある…。」

「ゴメン…つい…。」


よく考えたら今まで白羽は怜斗に着替えと風呂を覗かれていない。

叫ぶ前に気づけば怪しいものを見る目で見られなかったものを。


「まあ、見えないことをいいことに覗きをしたりする霊もいないこともないんだけどな。」


怜斗のそのセリフで、白羽はいろいろ不安になった。

霊が見えない生活にもう戻れない。不安すぎる。


「じゃあ、縁日行こう!!」


青葉が準備の完了を確認してそう言った。


そして場所は移動して近所の神社。

既に縁日は始まっており、神社の境内には様々な屋台が並び、色とりどりのちょうちんがつるされている。


「とりあえず何かたべよっか?」

「わかったー。」

「了解なんよ!」

「俺達は食えないな…。」

「久しぶりに何か食いたいなー…。」

「白羽と弥呼子は何たべる??」

「うーん、私は焼きそばかなあ…。」

「ウチはお好み焼きにするんよ。」

「俺はわたあめが食べたいな…。亮は?」

「俺は、タコ焼きだな。」

「いや、怜斗君達は食べれないでしょ」


流れでシレッと混ざっている霊に白羽がツッコミを小声で入れる。

ところで、怜斗が結構甘いもの好きである。どうでもいい情報だ。


「よーし、じゃあみんな買ってきてここに集合ねー!」


と、現在地の鳥居を青葉が示す。

そして3人は一旦別れ、各々好きなものを買いに行った。

そして、15分後の鳥居。


『混んでた……。』


3人はドッと疲れた顔をしている。

やはり人が多く、屋台が全体的に混んでいるようだ。


『いただきます!』


3人はそんな中で確保した食糧を食べる。


「なんかさあ…こういうとこで食べる焼きそばとかっておいしいよね。」


と、焼きそばを啜る白羽。


「あ、わかるー。なんか特別な感じだよねー」


と、広島風お好み焼きを食べる青葉。


「特殊効果なんよ!!」


と、お好み焼きを食べる弥呼子。


「懐かしいなあ…。」

「食べたいなあ…。」


と、縁日の食べ物を見せつけられてノスタルジックな雰囲気になる霊二人。

そんな明暗の分かれた食事が終わり、3人+αは縁日を巡る。


「久しぶりだなあ…縁日なんて…。青葉は最近行ってる?」

「ううん、全然。すごい久しぶり。」

「ウチは家が特殊やから、こういう所には縁があるんよ。」

「お祓いだっけ?」

「そうなんよ!悪霊はウチが成仏させるんよ!」


人混みの中にもかかわらず、テンションが上がった弥呼子がアニメの効果音がつきそうなポーズをとりながらそう言う。


「ぐああっ!止めろおおおおっ!!」

「怜斗、嘘はよせ。」


怜斗の茶番に亮がツッコミを入れる。

効果はないようだ。

というか、周囲を通る人や、その中の何人かに憑いている霊まで『何だ何だ?』と弥呼子の方を見ている。


「と、いうわけで悪霊に憑かれたらウチにお任せ!!」


『意外と霊っているんだなあ…。』と苦笑いで周りを見回していた白羽が、そんな弥呼子のセリフを聞き、チラッと怜斗の方を見て考える。


『祓ってもらおうかなあ…?』

『嘘だ白羽っ!?俺のことが、嫌いになったのか…?』

『ち…違うの怜斗君っ!……怜斗君??』

『おうっ!怜斗だぜ!』


ふたりは、七不思議と同じ念話のようなものを身につけた。

いくらなんでも唐突だが、こういうのは得てしてそんなものである。


「あ、あれやろうあれ!!」


青葉が何かを見つけた。

その目線の先にあったのは、射的。


「いいね!」

「ウチもやるー!」


3人はお金を払い、コルク銃を構える。


『あのぬいぐるみカワイイなあ…』

『お、手伝おうか?』

『いいのっ!?』

『おう!』


怜斗はコルク銃に手を添え、『ムムム』と唸る。


「ちなみに怜斗お兄ちゃんは今、霊の力である霊力をコルク銃に注いでるんだよ?」


そんな解説をしながら、ピョコッと白羽の横からアイが顔を出した。


「うわあっ!?」

「えへへ、前に解説し忘れたんだけどね。霊の力は意志の強さにも左右されるんだよ?」

「意志の強さ?」

「うん。籠ってる感情の強さって言ってもいいかな。強く念じることで、霊の力を生み出せるの。怨霊とかはこの類なんだー。」

「へえ…そうなんだ…。」


白羽は、いきなりのアイの登場と解説に困惑する。


「それじゃ、今日のアイの霊教室はおしまい!!それじゃあね!!」

「え、あ、うん。じゃあね!!」


嵐のようにやってきて嵐のように帰っていこうとしたアイが、ふと足を止めて怜斗に話しかける。


「怜斗お兄ちゃん、気をつけてね。そろそろあの人達が嗅ぎ付けたかも。」

「ああ、わかった。」

「白羽お姉ちゃんも。この日常を大切にね?」

「う…うん。」


白羽は、アイが何を言っているかわからずに困惑する。


「それじゃあねっ!!」


そして、アイは去って行く。嵐のように。


「ねえ怜斗君、アイちゃんは何を…?」

「あ、白羽。もう撃てるぞ。」

「え?あ、うん…。」


質問をうやむやにされた白羽は、不服そうな顔をしつつ、ぬいぐるみに狙いを定める。

バンッ!!!!

コルク銃からは考えられない音が鳴り、発射された弾はぬいぐるみに吸い込まれて――


そのままぬいぐるみの脳天を撃ち抜いた。


綿を噴出したぬいぐるみはどこかグロテスクで、白羽は顔を真っ青にする。


『………』


当然、屋台の周りにいたすべての人が沈黙し、呆然とした。

この衝撃のせいで、白羽は怜斗にさっきのアイとの会話のことを聞きそびれてしまった。

だが、ここで白羽が何かを聞いたところでもう遅かっただろう。

もうすでに、運命の歯車は音を立てて回りはじめているのだから。


『怜斗君…いくらなんでも強くしすぎだよ…。』

『ゴメン…。』


白羽は、首から上がなくなったぬいぐるみを抱えながら怜斗に念話で文句を言う。


「白羽、弥呼子っ!あれやろう!!」

「あ、待ってよ青葉っ!!」


その後3人は、輪投げをしたり、おやつを食べたりして縁日を満喫する。

そして辺りは暗くなり、3人は神社の近くにある丘で花火が始まるのを待っていた。


「花火、ここで見るの久しぶりだなあ…。」

「私はいつも家だったな…。」

「ウチもその場で見るのは久しぶりなんよ…。」

「花火か…懐かしいな。」

「亮は何か花火に思い出あるか?」

「うーん、やっぱ彼女とやった線香…。」

「けっ!元リア充の惚気なんて聞くかよっ!!」


と雑談をしていると、バンッと爆発音と共にまばゆい閃光が辺りを照らす。


『わああっ!』


その一発目を皮切りに、二発、三発と色とりどりの大輪の花が大空に咲き誇る。

周りの観客も歓声を上げ、花火を見物する。


『キレイだなあ…。』

『そうだなー。でも、お前の方がキレイだぜ?白羽。』

『えっ!?えっ!?』


白羽の顔が真っ赤に染まる。

いつものようにおどけた表情なのだろうと思いつつ彼の顔を見ると、その表情はいつになく真面目で、精悍で……。

白羽の顔はさらに赤く染まってしまうのだった。


彼女が自分を見ていることに気がついた怜斗は、白羽の顔を見るとそれまでの表情からいつものおどけたものに戻り、快活に笑いながら白羽に言う。


『やはは、なーんて、ベタなセリフだろ?』

『もーっ!!怜斗君っ!!』



怜斗は亮の惚気を嫌ったが、これも聞こえていれば一種の惚気ではないだろうか…?

そして花火も終わり、3人は帰路につく。


さて、穏やかな日常はここで終わり。

ここからは、霊達の時間だ。

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