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レイト・デイズ  作者: 有栖
第三章『病院の幽霊』
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第十五話『夏休み初日-朝の動乱-』


ピピピッ!ピピピッ!

白羽の部屋に、電子音が響く。


「んん…。味噌汁が…味噌汁…。」


しかし、白羽は目覚めが悪い。

いつも、母親が起こしに来るまで起きないのだ。


「イタリアン…味噌汁ご飯…。」


そんな得体の知れない寝言を呟いている白羽のことを、怜斗がジト目で眺めている。


「こいつ、どんな夢を見てるんだ…。イタリアン味噌汁ご飯…??そういえば2時間くらい前に和風のキムチがどうとか言ってたな…。和風のキムチって何だ…?」


白羽は、どうしても料理に特殊なアレンジを加えたいようだ。

ちなみに、怜斗は寝ていない。

そもそも霊は寝なくてもいいようだ。ただ、人間であった頃の癖で寝ることもあるが。

そして、白羽の脳内は食べ物だらけなようだ。

白羽の脳内のことはどうでもいい。


「おい白羽、起きろー。目覚まし鳴ってるぞ?」

「ううっ…。味噌汁が迫ってくる…。」

「白羽!お前は何に終われてるんだっ!!」

「ハッ、味噌汁!」


白羽が、パッと目を開けた。


「俺は味噌汁じゃねえよっ!」

「あ、怜斗君だぁー。おはよぉ。」

「おう、おはよう。お前…どんな夢見てたんだよ」

「んー…?覚えてなぁい…。」


朝の白羽はいつにも増して緩い雰囲気である。


「お腹すいたぁ…。ごはぁん…。イタリアン味噌汁ご飯…。」

「お前絶対夢覚えてるだろっ!?」


しかし、白羽は怜斗のツッコミを無視して、フラフラしながらリビングに入る。


「おかあさんおはよ…。」


白羽が母に挨拶をする。


「おはよう、しら……は?」


白羽の母は、カチャンッと手に持っていた洗い物を落とす。


「白羽が自分で起きてきたっ!?今日は嵐かしら?台風かしら?もしかして天変地異……??いいえ、違うわね、成長ね…。成長なのねっ!?知らないうちに大きくなって……うぅっ…。」


ハイテンションに叫び出した母親が、うってかわってジワリと涙を浮かべる。


「おかーさん……ご飯あるー?」


白羽はそんな母親を無視する。

手慣れたものだ。


「はいはい、ちょっと待ってね。」


そう言って、母親はテキパキとご飯を作る。さっきの涙はどこへやら。

キッチンに戻った母親の手にあったものは、こんがりと焼けたチーズが食欲をそそるリゾットだ。


「いただきまーす。」


白羽はスプーンを手にとり、リゾットをすくう。


チーズの奥から出てきた物は――


「味噌汁ご飯…だとっ…!?」


後ろから見ていた怜斗が戦慄して思わず声を上げる。

白羽がイタリアン(作者の主観)な味噌汁ご飯を食べながら携帯をチェックしていると、電話が来た。


「ん、青葉だ。もしもしー?」

『もしもしー?おはよう白羽!』

「おはよー。どうしたの??」

『よかったら、今日アタシの家で夏休みの宿題やらない??』

「あ…宿題…。うえー…面倒…。学生最大の敵だよー…」

『だから早めに終わらせよーよ!もう弥呼子も呼んであるからさ!!』

「わかったー。」

『あ、あと夕方から縁日行かない??』

「伏吹神社の??いいよー。じゃあ浴衣も持ってくねー!」

『うんアタシも準備する!それじゃあまた後でね。』

「後でねー。」


電話が切れた。

恐らく勉強はついでで祭りが本命である。


「よし、そうと決まれば朝ご飯食べて準備しなくちゃ!」


白羽は、そう言ってパクパクとイタリアン(作者の主観)な味噌汁ご飯を口にほうり込む。

怜斗は、恐る恐る尋ねる。


「なあ…それ、美味いのか…」

「ひょひひーほ!!へいほふんほはへふー?」

「え…何て…?」


直訳すると、『おいしーよ!怜斗君も食べるー?』だ。

口に物を含んだ人が話す世界共通言語、ハ行語である。

ハ行語では、怜斗が某赤と緑なブラザーズの敵キャラみたいになっている。


「ゴクンッ!怜斗君も食べる??」


白羽がわざとらしくゴクンッと飲み込む。

なぜかはわからない。


「いや、俺はいいわ。てか物食えないし、霊だし…。」

「あ、そっかあ…。こんなに美味しいのになあ…。」


そんな会話をしていると、台所から母親の声が――


「白羽ー?なにか言ったー?誰かいるの??ハッ!?まさか白羽…空想の男の子と…おしゃべりを…。白羽っ!現実を見るのよ、白羽っ!!」


聞こえたはずなのだが、それと同時に母親が白羽の目の前に現れ、白羽をガクガクと揺する。こいつ、超能力者か……。

しかも、微妙に的中した予想である。

こいつ、預言者か……。


「あーうー…。おかーさんやめてえ…。違うのーっ!!」

「あっちゃあ…。ミスッたなあ…。質問しちまった……。」


揺すられている白羽を見ながら、怜斗はわざとらしく『やっちまった』と額に手を当てている。


「白羽!戻ってきて!現実はここよっ!!白羽ーっっ!!!」

「あうあー…。」



白羽の朝は、賑やかい。

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