第十三話『enter the mirror』
「いよいよ最後だね!」
「ああ、特に悪い奴はいなかったな。」
「みんないい霊だったね。」
ハーフのトイレの花子さん、高山アリア。
保健室のエンジェル(白羽目線)、荻原七瀬。
頂点を求める少女、北島綾子。
無邪気なランナー、下村徹夜。
優雅なピアノ奏者、秋山百合。
勘違いの権化、吉田登。
白羽と怜斗は、今まで会った6人のことを思い返し、複雑な気持ちになる。七不思議としてはやや残念な6人だった。
「だな。あ、『鏡の中の少年』ってどんなのなんだ?」
「あ、えっと……。あれ?」
七不思議の噂話を読みあげようとした白羽の動きがピタッと止まる。
「どうした?」
「『鏡の中の少年』だけ物語がない…。本当に漠然とした噂しかないみたい。」
「その噂は?」
「えっと…。『夜に踊り場の鏡の前を通ると鏡の中に引き込まれて異世界に連れていかれて帰れなくなる。』」
「それだけなのか?」
「うん、それだけ…。」
「そうか…。まあ、百聞は一見に如かず。」
「そうだね、とりあえず行こっか。」
とは言っても、目的の踊り場は階段を降りてすぐの所にある。
ひょいひょいっと軽快に階段を降り、目的の鏡の前につく。
「あれ、特に誰もいない?」
「霊が見当たらないな…」
白羽は疑問に思い、ヒョイッと鏡を覗き込む。
その瞬間、ユラッと鏡の表面が揺らぐ。
『ん?』
ふたりが、同時に首を傾げる。
と、白羽を吸い込むように風が鏡の中にむけて吹き込む。
「えっ…?キャアアアアッ!!」
白羽は、一瞬呆けた顔をした後に、必死に抵抗する。
だが、あまりの風圧になすすべなく白羽は鏡の方に引き寄せられる。
「イヤッ!イヤッ!!助けて怜斗君っ!!」
「白羽ーッッ!!」
白羽が助けを求めて伸ばした手を掴もうと、怜斗も必死に手を伸ばす。
そしてその手は、白羽の手を握――
ろうとしてスカッと空振る。
「あ、幽霊だから触れねえ…。」
「怜斗君ーーッ!!!」
白羽が、悲鳴のような叫びと共に、鏡に飲み込まれる。
「あー…どうすっかな…。」
怜斗が、困り顔で頬を掻きながら浮いていると、
「グフッ!?痛ッッ!!」
まるで壁に押されるかのような挙動で鏡の中に吸い込まれる。
――4mの壁である。
そして、踊り場から人が消えた。
ふたりの世界が反転する。




