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救援部隊到着

前回のおさらい

一人でイヴガルムと戦闘、チャンスが訪れる。

「この距離なら……届く!」

蓮は息を止めた。

左手に握る白い剣へ限界まで魔力を流し込む。

「《魔力付与(エピテマ)》最大出力!」

ゴォォォォッ――!!

黄金の魔力が剣身を包み込む。

あまりにも膨大な魔力に、白い刀身そのものが悲鳴を上げるように細かく震え始めた。

(耐えろ……!)

蓮は避けられる可能性が低い箇所に狙いを定める、

イヴガルム最大の武器。

鞭のようなしなやかさと破壊力を持つ尾。

そこを断てば、戦闘能力は格段に落ちる。

「はああああぁぁぁぁっ!!」

蓮は身体を捻り、全身の力を乗せて剣を振り抜いた。

黄金の軌跡が森を切り裂く。

イヴガルムも危険を察知し、瞬時に身を翻す。

しかし。

「間に合えッ!!」

ズバァァァァァァッ!

重い手応え。

黒い鱗が砕け散る。

硬質な骨を断ち切る感触。

直後……

ギャァァァァァァァッ!

森全体を揺るがす絶叫が響き渡った。

巨大な尾の先端、およそ半分が宙を舞う。

切断面から深紅の血が噴き出し、周囲の巨木を赤く染めた。

「やった……!」

蓮は着地すると同時に距離を取る。

イヴガルムは数十メートル先まで跳び退き、苦しげに尾を振る。

完全には切断できなかった。

だが、最大の武器を半ば失わせることには成功した。

翠色の瞳が蓮を睨み付ける。

先程までの余裕はない。

そこには明確な怒りと警戒が宿っていた。

「グルルルルル……」

低い唸り声。

再び飛び掛かろうとした、その時だった。

ピィィィィィッ!

森の向こうから鋭い笛の音が響く。

「いたぞ!」

「こっちだ!」

「救援部隊到着!」

複数の探索者たちの声が木々の間から聞こえてきた。

さらに、

「神代ぉぉお!」

聞き覚えのある豪快な声。

桐生だった。

《黒狼》を先頭に、救援部隊が一斉に森へ飛び込んでくる。

十数人を超える探索者たちが武器を構え、イヴガルムを包囲するように展開した。

「飛竜種だと!?」

誰もが息を呑む。

目の前にいるだけで圧倒される存在感。

だが、その尾は半ばから切断され、大量の血を流していた。

「……神代がやったのか。」

桐生が信じられないという表情で呟く。

イヴガルムは周囲を見回した。

そして低く唸る。

「グァァァ……」

数秒の睨み合い。

次の瞬間。

ズァァァッ……

巨木を蹴り、一気に森の奥へ跳び上がる。

巨大な翼を広げ、音もなく木々の上を滑空する。

「逃げるぞ!」

「追うな!」

桐生が即座に叫ぶ。

「深追いするな!」

誰も動かなかった。

あの速度では追い付けない。

何より、さらに奥は未踏区域に近い。

やがて気配は完全に消えた。

森へ静寂が戻る。

「終わった……。」

蓮はそこで初めて全身の力を抜いた。

ガラン。

手から白い剣が落ちる。

「……あ。」

パキッ。

刀身へ一本の亀裂が走る。

次の瞬間。

パリン……

白い刀身が細かな破片となって崩れ落ちた。

魔力を限界以上に流し込んだ代償だった。

蓮は静かに柄だけとなった剣を見つめる。

「最後まで……ありがとう。」

長く共に戦ってきた相棒は、その役目を終えた。

桐生が肩へ手を置く。

「十分すぎる仕事だった。」

その言葉に蓮は静かに頷いた。

ふと視線を向けると、切断された巨大な尾が地面へ横たわっていた。

黒曜石のような鱗に覆われたそれは、半分だけでも三メートル近い長さがある。

「これ……持ち帰れるか?」

桐生が笑う。

「当たり前だ。」

「飛竜種の素材なんてものによっては国宝級だぞ。」

探索者たちは総出で尾から鱗と骨を綺麗に取り出し収納袋へ収め、気を失っていた恵も慎重に運び出した。

幸い《盾神の守護(プロテクション)》のおかげで大きな怪我はなく、意識も徐々に戻り始めていた。

「蓮……勝ったの……?」

「倒せなかった。」

蓮は苦笑する。

「でも、生き残れた。」

恵は安心したように微笑んだ。

「それで十分だよ。」


◇◇◇


数時間後。

第一居住区。

救援部隊の帰還と同時に、協会は騒然となった。

「飛竜種と遭遇!?」

「しかも全員生還!?」

「尻尾を切断したって本当か!?」

運び込まれた巨大な尾を見た瞬間、職員たちは言葉を失う。

鑑定班も総出で確認を行い、結果はすぐに出た。

「間違いありません。」

「S+レートの迅影竜イヴガルムの尾です。」

協会中がどよめく。

S+レートの素材。

日本でも前例がほとんどない代物だった。

その日のうちに噂は第一居住区全体へ広がった。

「聞いたか?」

「《(ネクサス)》の神代がS+レートを退けたらしい。」

「討伐じゃない。」

「それでも尻尾を切り落として生還したんだ。」

「高校生だろ……?」

「またとんでもない奴が現れたな。久々のSレート誕生か?」

酒場でも武具街でも、話題はそれ一色だった。


◇◇◇


翌日。

蓮と恵は一つの店を訪れていた。

第一居住区でも屈指の鍛冶工房。

店内には数多くの魔物素材と武器が並んでいる。

奥から屈強な鍛冶師が姿を現した。

「依頼か?」

蓮は収納袋から、大量の黒い鱗と骨取り出す。

鍛冶師の目が見開かれた。

「……おい。これは。」

「迅影竜イヴガルムの素材です。」

数秒。

鍛冶師は素材を見つめ続けた。

やがて深く息を吐き、静かに笑う。

「面白ぇ。こんな素材を打てる日が来るとは思わなかった。」

蓮は柄だけとなった白い剣を差し出す。

「この剣は役目を終えました。」

「だから……この素材で、新しい剣を作ってください。」

鍛冶師はゆっくりと頷く。

「任せろ。お前さんだけの一振りを作ってやる。」

こうして蓮の新たな武器作りが始まった。

迅影竜イヴガルムの力を宿す漆黒の剣は、まだ誰も知らない新たな伝説の始まりとなるのだった。

誤字脱字等御座いましたら指摘お願いします!

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