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救援

前回のおさらい

探索者に絡まれたと思ったら心配されてただけでした。

桐生たちと別れてからも、蓮と恵はしばらく第一居住区を歩いていた。

武器屋では第五ゲヘナで採れた魔鉱石を使った武器が並び、防具店には魔物の素材から作られた鎧が展示されている。

「やっぱり名古屋とは全然違うね。」

恵が感心したように呟く。

「ああ。」

蓮も店先に並ぶ装備を見渡した。

どれも耐久性や着やすさを重視した造りで、一週間と野営しながら探索することを前提としているものばかりだった。

食料店には保存食が山のように積まれ、水筒や寝袋、携帯結界装置まで売られている。

第五ゲヘナでは一度外へ出れば数日帰らない探索者も珍しくない。

だからこそ、この居住区一つで生活に必要な物が全て揃うようになっていた。

「今は必要ないけど、いずれはこういう装備も必要になるかもね。」

「そうだな。」

蓮は頷きながら店を後にする。

その時だった。

カンッ、カンッ、カンッ――。

居住区全体へ乾いた鐘の音が鳴り響いた。

昨日聞いた帰還の鐘とは明らかに違う。

短く、鋭く、緊迫感を伴う音。

通りを歩いていた探索者たちが一斉に立ち止まる。

「警戒鐘だ。」

「何があった?」

「また東側か?」

周囲がざわつき始める。

広場中央の大型魔導掲示板へ赤い文字が浮かび上がった。

『東部草原地帯』

『救援要請』

『探索者パーティー一組が魔物に包囲』

その瞬間、居住区の空気が一変した。

協会職員が慌ただしく走り回り、医療班も担架を準備し始める。

「救援部隊を編成します!」

「参加可能なAレート以上は協会本部へ!」

あちこちから探索者たちが協会へ向かって走り始めた。

恵が蓮を見る。

「どうする?」

蓮は掲示板を見つめたまま答えた。

「場所は昨日探索した東部草原。」

「《天眼(ヘヴンリーアイ)》なら位置も分かる。」

蓮は迷わなかった。

「行こう。」

「うん。」

二人は同時に走り出した。

協会へ向かう探索者たちとは逆方向。

一直線に城門へ向かう。

受付では職員が慌ただしく対応していた。

「救援要請ですか?」

蓮は探索者カードを差し出す。

「神代蓮、一条恵。現場へ向かいます。」

若い職員は目を丸くした。

「え……お二人だけで?」

「はい。」

「ですが現在救援部隊を編成中です。部隊と合流した方が安全です!」

蓮は落ち着いた声で答える。

「編成を待っているその間にも状況は悪化するかもしれません。」

「俺の《探知(ディテクション)》なら最短で向かえます。」

職員は昨日提出された報告書を思い出した。

初日でホーンディア四体討伐。

草原での戦闘経験もある。

それでも危険なことには変わりない。

「……分かりました。」

端末へ入力する。

「救援活動として登録します。決して無理はしないでください。」

「はい。」

巨大な鉄門がゆっくりと開いていく。

蓮と恵は迷うことなく第五ゲヘナの草原へ飛び出した。

風が吹き抜ける。

青々とした草が波打つ。

「《天眼》。」

蓮の瞳が黄金色に変わる。

無数の魔力反応。

草陰へ潜むグラスウルフ。

岩陰で休むホーンディア。

空高く飛ぶ飛行型魔物。

全てが立体的に脳内へ映し出される。

「いた。」

蓮が進路を変える。

「北東。」

「直線距離約一キロ。」

「探索者三人。」

「魔物十六体。」

「……いや、十八体。」

恵の表情が引き締まる。

「増えてる。」

「ああ。急ごう!」

二人は一気に加速した。

途中、草陰からグラスウルフが飛び出す。

ガァァッ!!

「邪魔!」

恵のレイピアが閃く。

剣魔共鳴(レゾナンス)

炎を纏った突きが魔物の首を貫く。

止まらない。

そのまま走り抜ける。

さらに前方。

二頭が進路を塞ぐ。

「蓮!」

「任せろ!」

魔力付与(エピテマ)

一筋の閃剣が、二頭を切り裂く。

今は救助が最優先、素材は捨て置く。

《天眼》が常に最短ルートを示し続ける。

森を避け、岩場を越え、小川を飛び越える。

走り続けること数分。

耳へ金属音が届いた。

ガキィン!

ガンッ!

剣と角がぶつかる音。

「近い!」

丘を駆け上がった瞬間。

戦場が視界へ飛び込んできた。

三人組の探索者。

一人は肩から血を流し倒れている。

残る二人が必死に剣を振るい魔法を放ち続けていた。

その周囲を囲むホーンディア六体。

さらに外側には十体を超えるグラスウルフ。

完全に包囲されている。

「まずい……!」

探索者の一人が叫ぶ。

「魔力が切れる!」

「もう防げねぇ!」

一頭のホーンディアが角へ風を纏わせる。

突進。

避けられない。

その瞬間だった。

ゴォォォン!!

黄金の巨大な障壁が突如として戦場へ現れた。

ホーンディアの突進が真正面から弾き返される。

「何っ!?」

探索者たちが驚いて振り向く。

草原の向こうから二人の影が一直線に駆けてきた。

蓮…そして恵。

「助けに来ました!」

蓮の声が草原へ響く。

「もう大丈夫です!」

恵は迷わず魔物の群れへ飛び込んだ。

《剣魔共鳴》

炎を纏うレイピアが一閃。

グラスウルフ一体が宙を舞う。

蓮も続く。

《魔力付与》

黄金色の剣がホーンディアの脚を切り裂く。

「立てますか!」

蓮が叫ぶ。

探索者の一人が息を切らしながら頷く。

「す、すまねぇ……!」

「負傷者を守ってください!」

「ここは俺たちが抑えます!」

そう言い放つと、蓮は再び剣を構えたながら。

《盾神の守護(プロテクション)

蓮の周囲にいる恵と探索者3人の体に薄らと黄金色の魔力のベールが出現する。

「なんだこれ…。」

一人の探索者が呟くそれと同時に十八体もの魔物が一斉に二人へ視線を向ける。

静かな草原を吹き抜ける風。

その中で蓮は小さく息を吐いた。

「恵。」

「うん。」

「速攻で終わらせる。」

「了解!」

二人は同時に地面を蹴った。

第五ゲヘナでの、本格的な戦いが始まる。

誤字脱字等御座いましたら指摘お願いします!

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