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パーク統合と進化

前回のおさらい

第五ゲヘナで初めての戦闘。

何かを感じ取る蓮。

蓮は目を閉じ、意識を研ぎ澄ませた。

探知(ディテクション)》の範囲は半径500メートル。

本来なら、それより先に存在する魔力を感知することはできない。

だが今、確かに感じた。

ほんの一瞬だけ。

遥か彼方から、山のような魔力がこちらへ圧し掛かるような感覚を。

「……消えた。」

蓮が小さく呟く。

「消えた?」

「ああ。気のせいだったのかもしれない。」

恵は蓮の表情を見つめる。

一緒にいたからこそ分かる。

蓮はこんな時に冗談を言う人ではない。

「戻る?」

「いや。」

蓮は首を横へ振る。

「まだ安全圏だ。もう少しだけ周囲を見てみよう。」

「うん。」

二人は周囲への警戒を強めながら、草原をゆっくり進み始めた。


◇◇◇


十分ほど歩くと、草原の景色に変化が現れた。

背丈ほどあった草は腰の高さまで低くなり、ところどころに大きな岩が点在している。

その岩肌には鋭い爪痕のようなものが無数に刻まれていた。

「これ……。」

恵がしゃがみ込み、岩へ触れる。

まだ砕けた石が足元へ散らばっている。

蓮も《解析(アナライズ)》を発動した。

――――――――――

対象:岩壁

状態:大型生物による損傷

推定時期:二日前

――――――――――

《解析》の結果を見ると同時に脳内に新たな情報が流れる。


《解析》の熟練度が最大に達しました。


《解析》がLv.10になり熟練度がMAXになった。

「…大型の魔物が縄張り争いでもしたのかな。」

蓮が周囲を見回した、その時だった。

《探知》の反応が急に動き出す

「右前方。」

「距離、150メートル。」

「数は……四。」

「こっちに来る。」

ほぼ同時だった。

ドドドドドッ!!

地面を揺らしながら四つの影が飛び出してくるのが見える。

「鹿……?」

いや、違う。

体高は二メートルを超え、骨の様な角が樹木の枝のように何本も伸びている。

全身を覆う筋肉は鎧のように硬そうだった。

《解析》

――――――――――

《ホーンディア》

推定レート:A

特徴:高い突進力を持つ大型草食魔物。縄張り意識が極めて強く、侵入者を容赦なく排除する。角での攻撃が2種、1.風の魔力前方に飛ばす。2.角での物理的な刺突攻撃。その他に後ろ足の蹴り上げを得意とする。

弱点:炎属性、関節部、首元。

――――――――――

「いきなりAレート!」

蓮の言葉に恵が表情を引き締める。

「しかも四体!」

次の瞬間。

四頭が一斉に突進してきた。

まるで大型トラックが突っ込んでくるような迫力。

「《前方城壁(スクード)》!」

ゴォォォッ!!

黄金の城壁が展開される。

轟音。

一頭目が激突した瞬間、地面が震えた。

しかし勢いは止まらない。

第四ゲヘナの魔物とは質量が違う。

二頭目。

三頭目。

四頭目。

連続して激突し、《前方城壁》へ亀裂が走る。

「恵!」

「分かってる!」

恵はすぐさま一歩踏み込み、レイピアで炎の魔力を流し込んだ。

剣魔共鳴(レゾナンス)

炎がが刀身を包む。

「はぁっ!」

一頭目の脚に刺突を繰り出す。

ガギィン!!

硬い。

しかし確かな手応え。

巨体が体勢を崩した。

「今!」

蓮が飛び出す。

魔法付与(エピテマ)

黄金色の魔力を宿った剣が首元目掛け振り下ろされる。

ズドン!!

一頭目が倒れた。

残る三頭。

だがその時。

「恵!」

蓮が叫ぶ。

《探知》の反応が増えている。

戦闘音を聞きつけた魔物たちが、四方八方から集まり始めていた。

蓮は舌打ちする。

第五ゲヘナでは、一つの戦闘が次の戦闘を呼ぶ。

これでは長期戦は危険だ。

「恵!短期決戦!」

「了解!」

二人の息はぴったりだった。

蓮が正面から引き付ける。

恵が側面を駆け抜ける。

並列思考(マルチコアマインド)》による魔法と剣技の攻防。

《魔法盾》による戦場の支配。

《解析》や《探知》による弱点把握と周囲の警戒。

互いの能力が噛み合い、二人は一切無駄のない動きを見せる。

五分後。

最後の一頭が静かに倒れた。

「ふぅ……。」

恵が息を整える。

「思った以上に疲れるね。」

「敵より、周りを警戒し続ける方が大変だ。ここを離れよう。」

その時だった。

再び。

ゾクリ…。

背筋を冷たいものが走る。

「……まただ。」

今度ははっきり感じた。

さっきよりも強い。

そして近い。

《探知》の範囲外。

それでも存在だけは分かる。

巨大な魔力。

圧倒的な格。

まるで山そのものが歩いているような威圧感。

「蓮?」

「この感覚……。」

蓮は目を閉じる。

《探知》をさらに強く発動する。

魔力が波紋のように広がる。

限界まで集中した、その瞬間。

ピシッ……

頭の奥で何かが弾けるような音がした。

視界が一瞬だけ白く染まる。

そして。

500メートルだった感知範囲が、一気に外側へ広がっていく感覚。

600...800...1000..2000。

これまで届かなかった場所まで、世界が繋がった。

そして、


《探知》の熟練度が最大に達しました。

《解析》《探知》の熟練度が最大に達した為、パークの統合を開始します…統合完了。パーク《天眼(ヘヴンリーアイ)》を習得しました。

----------------------

《天眼》Lv.1

探知、解析はそのままに、新たに探知の半径1キロを任意の方向に変更可能(自身からの直線で最大2キロ)

----------------------

「え……。」

蓮自身が驚く。

そして見えた。

2キロほど先。

草原を悠然と歩く、15メートルはあろう巨大な影。

全身を亀の様な甲殻で覆われた四足歩行の魔物。

圧倒的な存在感。

「……そんな。」

蓮の額から汗が流れる。

「どうしたの?」

恵が不安そうに尋ねる。

蓮はゆっくりと息を吐いた。

「《探知》が…進化した。」

「え?」

「今この瞬間に進化した。」

恵は目を見開く。

パークは成長する。

だが、それは何年もの鍛錬を積んでようやく上がるものだ。

蓮は遠くを見つめたまま続ける。

「距離は直線距離で多分……2キロくらい。」

「その先に、とんでもない魔物がいる。」

「今まで感じたことがないくらい強い。」

恵も息を呑む。

「どうする……?」

蓮は即座に首を横へ振った。

「いや。このまま引こう。」

その言葉に迷いはなかった。

蓮は静かに剣を鞘へ納めた。

「第五ゲヘナは、想像していた以上に広くて、深い。」

「今日は予定通り情報収集を優先しよう。」

恵は安心したように笑う。

「うん。それがいい。」

二人は巨大な魔力を避けるように進路を変え、探索を続け、夕方には第一居住区への帰路についた。

その背後では、2キロ先にいる巨大な魔物が、蓮の魔力に反応しゆっくりと目を開けこちらを見ていた事を二人はまだ知らなかった。

誤字脱字等御座いましたら指摘お願いします!

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