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第五ゲヘナ

前回のおさらい

第五ゲヘナに向かうため東京に行くことに。

数日後。

東京へ向かう新幹線の車窓から、冬の景色が流れていく。

愛知を離れるのは久しぶりだった。

隣の席では恵が窓の外を眺めている。

「思ったより緊張してる?」

「少しだけ。」

蓮は苦笑した。

「今までは地元だったからな。東京は探索者の中心だし。」

恵も頷く。

「第五ゲヘナ……どんな場所なんだろう。」

二人とも資料には目を通していた。

しかし、協会が公開している情報は驚くほど少ない。

『危険』

『広大』

それ以外は曖昧な内容しか記されていなかった。

数時間後。

新幹線は東京駅へ到着する。

人、人、人。

駅を埋め尽くすほどの人波。

「すごい……。」

恵が思わず声を漏らす。

愛知とは比較にならない人口だった。

高層ビル群。

巨大な電子モニター。

そして街中を歩く人達。

「さすが東京。」

蓮も自然と周囲を見渡した。

そのまま電車を乗り継ぎ、およそ三十分。

二人は日本最大の探索者協会・東京支部へ到着した。

五十階を超える巨大な建物。

全国の支部とは比べものにならない規模だった。

入口で探索者カードを端末へかざす。

『認証完了』

『神代蓮様』

『一条恵様』

『ようこそ東京探索者協会へ』

自動音声と共にゲートが開く。

受付では既に職員が待っていた。

「愛知支部からお話は伺っております。」

「パーティー《ネクサス》のお二人ですね。」

正式に登録されたばかりのパーティー名を呼ばれ、蓮は少し照れくさそうに頷いた。

「東京支部長がお待ちしております。」

案内されたのは最上階。

全面ガラス張りの会議室だった。

窓の外には東京の街並みが一望できる。

中央に立つ一人の男性が穏やかに笑う。

「ようこそ東京支部へ。」

四十代半ばほど。

引き締まった体躯。

穏やかな笑顔とは裏腹に、歴戦の探索者だけが纏う独特の威圧感があった。

「私は東京支部長、黒崎(くろさき)だ。」

蓮と恵は自己紹介を済ませる。

黒崎はすぐ本題へ入った。

「愛知支部から聞いている。」

「君たちは名古屋の第四ゲヘナまでを全て攻略済み。」

「実力についても十分評価されている。」

机上の大型モニターへ映像が映し出される。

そこに映っていたのは、一つの異世界だった。

果てが見えない草原。

鬱蒼と茂る森林。

巨大な渓谷。

雪山。

火山。

湖。

砂漠。

様々な地形が一つの世界として広がっている。

「これが第五ゲヘナ。」

恵が思わず息を呑む。

「綺麗……。」

「第五ゲヘナには階層という概念が存在しない。それにこれまでは光となって消えて魔石を落としていたが、第五ゲヘナは死骸がそのまま残る。自分たちで魔石や素材を回収することになるだろう。」

黒崎が静かに説明を続ける。

「内部の総面積は約二十二万平方キロ。」

「日本の本州とほぼ同規模だ。」

蓮は思わず画面を見つめた。

(本州……。)

第四ゲヘナまでは迷宮だった。

最深部へ辿り着けば終わりがあった。

だが第五は違う。

世界そのものだった。

「現在、我々が安全を確認し拠点化している範囲は約一割。」


「残る九割は安全とは言い難いが4割は探索済み、残る5割は未探索域だ。」

画面には赤い線で開拓済み地域が表示される。

その外側には、広大な白地がどこまでも続いていた。

「つまり第五ゲヘナでは、『攻略』という言葉は正確ではない。」

「未知の世界を少しずつ調査し、安全地帯の確保と東京と大阪に《魔物氾濫(スタンピート)》を起こさない様にする。それが第五ゲヘナの探索だ。」

映像が切り替わる。

巨大な飛竜

十メートルを超える狼

雲の上まで伸びている大樹

どれも第四ゲヘナでは見たことがない光景ばかりだった。

「最低でもBレート級。」

「場所によってはSレート相当…それ以上の魔物が縄張りを築いている。」

「生態系そのものが一つの世界として完成しているため、不用意な戦闘は周囲の魔物を呼び寄せる危険もある。」

黒崎は二人を真っ直ぐ見据えた。

「第五ゲヘナでは探索技術、生存能力、判断力、その全てが問われる。」

蓮と恵は自然と表情を引き締めた。

説明を終えた黒崎は立ち上がる。

「では、実際に見てもらおう。」


◇◇◇


協会を出た車は、東京郊外にある探索者協会前線基地へ向かった。

高い城壁に囲まれた広大な施設。

全国から集まった探索者が忙しく行き交い、補給物資を積んだ大型トラックが次々と出入りしている。

まるで一つの要塞都市だった。

黒崎は二人を基地の中央へ案内する。

「これが第五ゲヘナの入口だ。」

蓮と恵は思わず足を止めた。

そこには漆黒に揺らぐ巨大な裂け目があった。

高さは七メートルほど。

幅は五メートルほど。

一軒家ほどの大きさしかない。

恵が小さく呟く。

「……思ったより小さい。」

黒崎は頷いた。

「入口は第一ゲヘナから第六ゲヘナまで、大きさにそれほど違いはない。」

「だが、この先には本州ほどの世界が広がっている。」

裂け目の奥から冷たい風が吹き抜ける。

今まで感じたことのない濃密な魔力。

蓮は無意識に剣の柄へ手を添えた。

未知の世界。

黒崎は静かに二人を見つめる。

「Aレートパーティー《ネクサス》。」

「君たちには、この世界のさらに奥へ進み、われわれの未踏領域を切り開いてもらう。」

蓮と恵は互いに顔を見合わせ、小さく頷いた。

二人の新たな冒険は――今、この第五ゲヘナから始まる。

章の設定はしてませんが区切るならここからが2章という扱いになります。ゲヘナ内部にも居住区があるので基本的にはゲヘナ内部での生活になります。言ってしまえばほぼ異世界!地球(東京、大阪))との連絡手段はあるので、何かあった時にSレート以上の探索者が出ていくみたいな感じで思っていただけると…


誤字脱字等御座いましたら指摘お願いします!

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