日本最大の探索者都市
今回短めです!
冬の冷たい風が、協会本部の窓を静かに揺らしていた。
東京。日本最大の探索者都市。
その名を聞いただけで、蓮の胸は高鳴る。
「東京……ですか。」
協会長は静かに頷いた。
「第五ゲヘナは第四ゲヘナとは比較にならない。」
大型モニターが切り替わる。
日本地図の中央。
東京都。
そこには六つの巨大なゲヘナが表示されていた。
「現在、日本で確認されている最深部は第六ゲヘナ。」
「だが、第五ゲヘナを安定して攻略できる探索者はごく僅かだ。」
教会長が説明を続ける。
「東京支部にはSレート探索者も複数所属している。第五ゲヘナは、そのレベルの探索者たちが主戦力となる。」
蓮は画面を見つめた。
(ようやく……そこまで来たんだ。)
探索者になった頃は、Aレートでさえ遥か遠い存在だった。
それが今では、自分たちもその一員となり始めている
「もちろん。」
協会長が付け加える。
「まずは第五ゲヘナのセーフエリア周辺。そこで実力を確かめ、経験を積み、東京支部との連携を覚えてもらう。」
恵も真剣な表情で頷く。
「分かりました。」
「それと。もう一つ重要な話だ。」
「はい?」
「先程も言ったがパーティー名だ。」
「探索者登録上、今後はパーティーとして活動してもらう。」
「指名依頼。国外派遣。国家任務。」
「その全てがパーティー単位になる。」
蓮と恵は顔を見合わせた。
今まではただ一緒に潜っていただけで、正式なパーティーではなかったのだ。
「今日決めなくても構わない。」
協会長が微笑む。
「東京へ出発するまでに登録してくれればいい。」
「了解しました。」
◇◇◇
協会を出ると、外は雪が降り始めていた。
今年初めて見る雪だった。
白い結晶が静かに街へ舞い降りる。
「寒いね。」
恵が吐く息を白く染めながら笑う。
「東京かぁ。」
「少し緊張する。」
蓮も空を見上げる。
「愛知を離れるのは久しぶりだ。」
「でも楽しみ。」
「第五ゲヘナってどんな場所なんだろう。」
「さあ。」
蓮は苦笑する。
「第四でも十分危険だったし。第五は想像もつかない。」
しばらく二人で雪景色を眺めながら歩く。
その途中。
恵が突然立ち止まった。
「パーティー名どうする?」
「何か考えないと。」
「候補ある?」
「いや……全然。」
「私も。」
二人は思わず笑ってしまう。
「意外と難しいね。」
「うん。」
探索者には、それぞれ有名なパーティーやクランが存在する。
「私たちらしい名前……。」
恵は少し考え込む。
蓮も色々と考えてみるが…
「焦らなくていいか。」
蓮が笑う。
「東京へ行くまで時間あるし。」
「そうだね。」
恵も頷く。
「ちゃんと二人で決めよう。」
幼い日に交わした約束は、今では新たな形へ変わっていた。
◇◇◇
その頃。
東京探索者協会本部。
日本最大規模を誇る作戦会議室。
一人の男性が資料へ目を通していた。
年齢は三十代前半。
鋭い眼差しと歴戦の傷跡。
胸元には、日本で3人しか存在しない”SSSレート探索者”
彼の前へ、一人の職員が駆け込んできた。
「失礼します!」
「愛知支部から正式通知です!」
男性は資料を受け取る。
そこへ記されていた名前を見て、小さく眉を動かした。
『神代 蓮』
『一条 恵』
『Aレート探索者』
『東京第五ゲヘナ攻略予定』
「……高校生か。」
男性は静かに呟く。
しかし。
続く資料へ目を通した瞬間、その表情が変わった。
「特殊個体ミノタウロスをBレートの時に単独討伐……?」
「第三・第四ゲヘナ完全攻略。」
「魔力量SS……。」
男は静かに笑った。
「面白い。」
窓の外には、東京の夜景が広がっている。
日本最前線。
そして、人類最前線。
二人の若き探索者は、まだ知らない。
東京には、自分たちとは比較にならないほど多くの強者が集い、そのさらに先には、第五ゲヘナという未知の領域が待ち受けていることを。
そして、その最深部が最後であることを誰も知らない。
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