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強敵#3

前回のおさらい

蓮は逃げることなく格上と戦う。

考えるより先に身体が動いた。

蓮は右腕の《魔法盾(アイギス)》を前へ突き出し、牙が触れるその一瞬に全神経を集中させる。

「《反射(パリィ)》!」

キィィィンッ!!

甲高い音が森へ響く。

しかし――。

「ぐっ!」

タイミングがわずかに遅れた。

衝撃は返せたものの、受け流しきれず、蓮の身体は大きく吹き飛ばされる。

背中から木へ叩きつけられ、肺の空気が一気に押し出された。

「かはっ……!」

息ができない。

視界が揺れる。

腕は痺れ、《魔法盾》を支える右腕が震えていた。

(危なかった……。)

あと少し遅ければ、牙は喉を食い破っていただろう。

ブラックホーンウルフは再び距離を取る。

獲物を仕留め損ねたことに苛立っているのか、低く唸りながら蓮を睨みつけていた。

「グルルル……。」

蓮は肩で息をしながら立ち上がる。

(焦るな。)

深呼吸する。

祖父との稽古を思い出す。

まだ幼かった頃、自分より何倍も大きな祖父に何度も打ち込んでは、簡単にいなされていた。

その度に言われた言葉。


見るのは”最初に動く場所”だ。


「最初に……動く場所。」

蓮はブラックホーンウルフをじっと見つめた。

肩でもない、牙でもないら脚でもない。

視線を落とす。

「前脚……!」

飛び掛かる直前、必ず前脚へ力を溜めている。

そこだけは隠せない。

「だったら!」

ブラックホーンウルフが再び飛び出す。

前脚が沈む。

(今だ!)

蓮は一歩だけ踏み込んだ。

「《反射》!」

ガキィィィン!!

今度は完璧だった。

爪が盾へ触れた瞬間、衝撃を横へ流し、そのまま魔力を一気に解放する。

ドォォン!!

「グルァッ!?」

ブラックホーンウルフの身体が大きく傾いた。

初めて完全に体勢を崩した。

「ここだ!」

蓮は迷わない。

低く潜り込み、右前脚へ渾身の一撃を叩き込む。

ザシュッ!!

鮮血が飛び散る。

「グルァァァッ!!」

苦痛の咆哮。

右前脚から血が流れ、ブラックホーンウルフの動きが明らかに鈍くなる。

「効いてる!」

勝機が見えた。

どれだけ硬い相手でも、脚を潰せば機動力は落ちる。

そこから確実に削ればいい。

しかし、その油断を見透かしたかのように、ブラックホーンウルフの口元が歪んだ。

「……?」

次の瞬間だった。

ブラックホーンウルフは傷付いた右前脚ではなく、左前脚だけで地面を蹴った。

「なっ!?」

常識外れの跳躍。

巨体とは思えない高さまで飛び上がる。

蓮が見上げた時には、巨大な影が真上を覆っていた。

「まずい!」

着地点は自分の頭上。

避ける時間はない。

蓮は咄嗟に《魔法盾》を頭上へ掲げた、直後――。

ズドォォォォンッ!!

凄まじい轟音と共にブラックホーンウルフが落下する。

地面が陥没し、土煙が一帯を包み込んだ。

「ぐっ……!」

盾越しに伝わる衝撃で膝が地面につく。

腕は限界に近い。

それでも《魔法盾アイギス》は砕けることなく、蓮を守り抜いていた。

(この盾は……本当にすごい。)

だが、守るだけでは勝てない。

土煙の向こうで、ブラックホーンウルフがゆっくりと立ち上がる。

赤い瞳はまだ戦意を失っていない。

一方の蓮も剣を握り直す。

互いに傷付きながらも、一歩も引かない。

静かな森に、二人の荒い息遣いだけが響いていた。

そして次の一撃が、この戦いの勝敗を決めようとしていた。

誤字脱字等御座いましたら指摘お願いします!

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