強敵#2
前回のおさらい
さらにゲヘナ進み強敵に遭遇。
「グォォォッ!」
ブラックホーンウルフが一直線に突っ込んでくる。
さっきまでとは違う。
今度は迷いなく蓮の喉元を狙っていた。
(来る……!)
蓮は腰を落とし、《魔法盾》を構える。
ブラックホーンウルフの鋭い爪が振り下ろされる。
(今だっ…!)
蓮は盾へ魔力を集中させた。
「《反射》!」
ガキィィィン!!
高い金属音が森中へ響く。
爪が盾へ触れた瞬間、蓮は衝撃を真正面から受けるのではなく、斜めへ受け流した。
さらに魔力を一気に流し込む。
ドォン!!
「グルッ!?」
ブラックホーンウルフの前脚が弾かれ、身体がわずかによろめいた。
「効いた!」
初めてできた隙。
蓮は迷わず踏み込む。
「はぁっ!」
何千回も振り続けた袈裟斬り。
鋭い一撃がブラックホーンウルフの肩口を捉えた。
ギィンッ!
「……硬い!」
甲高い音が鳴る。
刃は毛皮を切り裂いたものの、浅い。
黒い毛並みの下には硬い筋肉があり、致命傷には程遠かった。
「グルァァァッ!」
怒りの咆哮。
巨大な尻尾が横薙ぎに迫る。
「しまっ!」
避けきれない。
蓮は咄嗟に盾を構えた。
ドゴォッ!!
猛烈な衝撃。
身体が再び吹き飛ばされ、地面を何度も転がる。
「ぐぅ……!」
背中に激痛が走る。
死に近づいている感覚が、嫌というほど伝わってきた。
「こんなに差があるのか……。」
息を整えながら立ち上がる。
「グルルル……。」
ブラックホーンウルフは追撃してこない。
獲物を追い詰めるように、ゆっくり距離を詰めてくる。
蓮は冷静に状況を分析した。
(真正面からじゃ勝てない。)
攻撃力も、防御力も足りない。
だが、一つだけ自分が勝っているものがある。
「技術だ。」
祖父から十年以上教え込まれた剣術。
そして《魔法盾》。
この二つを組み合わせるしかない。
ブラックホーンウルフが再び飛び出した。
今度は右前脚。
蓮は半歩だけ身体をずらす。
「《反射》!」
ガキィィン!!
衝撃を受け流し、相手の前脚を弾く。
その勢いで懐へ潜り込む。
「そこだ!」
剣が閃く。
ザシュッ!
今度は前脚へ浅い傷を刻むことに成功した。
「グルァッ!」
ブラックホーンウルフが苦しそうに後退する。
「やっぱり……!」
致命傷ではない。
だが確実に傷は付けられる。
一撃では無理でも、積み重ねれば倒せる。
希望が見えた。
しかし、その瞬間。
ブラックホーンウルフの身体から黒い魔力が溢れ始める。
「……え?」
傷口から噴き出すように黒い光が全身を包み込む。
毛並みが逆立ち、赤い瞳がさらに深い紅へ染まる。
ズンッ。
周囲の空気が重くなった。
「まさか……。」
探索者協会で開かれていた講習で聞いたことがある。
追い詰められた魔物の中には、一時的に身体能力を引き上げる個体が存在すると。
「グォォォォォォッ!!」
咆哮と同時に地面が砕けた。
ブラックホーンウルフは先ほどまでとは比較にならない速度で蓮へ襲い掛かる。
「速――!」
視界から消えた。
蓮が気配を感じた時には、巨大な牙が目の前まで迫っていた――。
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