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守られていた場所

前回のおさらい

《刻の支配者》を使い圧倒的な力の差でミノタウロスを撃破。そして奥へ進む。

ミノタウロスが守っていた場所へ向かい、蓮は慎重に歩みを進める。

探知(ディテクション)》が示す反応は、すぐそこだった。

魔物の気配はない。

周囲に敵対反応も存在しない。

それでも蓮は油断せず、岩壁の奥へと進んでいく。

やがて、通路の突き当たりへ辿り着いた。

「これは……。」

そこには、自然にできた洞窟とは思えない空間が広がっていた。

壁面は人の手で削り出されたように滑らかで、床には薄く幾何学模様が刻まれている。

長い年月を経ている様にも見えるが、不思議なことに崩れた形跡はほとんどない。

「人工物……?」

蓮は思わず息を呑む。

ゲヘナで、これほど明らかな建造物を見るのは初めてだった。

さらに奥へ進む。

10メートルほど歩いた先で、《探知》が反応していた場所へ到着する。

そこにあったのは――巨大な石造りの扉だった。

高さは3メートル近く。

黒曜石のような漆黒の石で造られ、表面には見たこともない古代文字が無数に刻まれている。

中央には、大きな鍵穴。

蓮は目を見開いた。

「鍵穴……?」

その形に見覚えがあった。

収納ポーチへ手を入れる。

取り出したのは、以前宝箱から入手した鍵。

試しに近付けてみる。

すると…

カチッ。

鍵が独りでに鍵穴へ吸い込まれた。

「え……?」

ゴゴゴゴゴゴ……

重厚な振動が響き渡る。

古代文字が一斉に淡い青白い光を放ち始めた。

やがて巨大な扉がゆっくりと左右へ開いていく。

長い年月閉ざされていたとは思えないほど滑らかな動きだった。

「開いた……。」

蓮は白い剣を構え直す。

《探知》。

敵反応なし。

解析(アナライズ)》。

罠反応なし。

深呼吸を一つ。

ゆっくりと扉の中へ足を踏み入れた。

部屋は意外にも広くなかった。

直径十メートルほどの円形の石室。

中央には小さな祭壇が一つ置かれているだけだった。

祭壇の上には、何もない。

しかし、《探知》が示していた反応は、確かにそこから放たれていた。

蓮が祭壇へ近付いた、その瞬間。

足元の魔法陣が淡く光る。

「……!」

視界が白く染まった。

何も見えない。

何も聞こえない。

身体が浮くような感覚。

次の瞬間。

知らない景色が目の前へ広がっていた。


◇◇◇


燃え盛る炎。

巨大な城壁。

無数の魔物。

その中心で、一人の青年が立っていた。

年齢は二十代ほど。

金髪に、深い蒼色の瞳。

身に纏うローブは傷だらけだった。

「まだ終わらせはしない。」

青年が静かに呟く。

その右手へ膨大な魔力が集まり始めた。

蓮は声も出せず、その光景を見つめる。

(これは……誰なんだ。)

青年の前には、一振りの剣。

何の変哲もない鉄の剣だった。

しかし。

青年が剣へ手を添えた瞬間。

莫大な魔力が刃へ流れ込んでいく。

ブォン……

刀身が輝き始めた。

「魔力とは、ただ放つものではない。」

青年が誰かへ教えるように語る。

「纏わせる。流す。浸透させる。己の意思で制御する。」

剣が眩い光を放った。

その一振りだけで。

遥か前方の巨大な魔物が、一刀のもとに両断される。

轟音。

衝撃波。

大地が裂ける。

蓮は息を呑んだ。

(魔法じゃない……。剣そのものが強化されている。)

青年はさらに続ける。

「魔力付与。」

「それは最も基本であり、最も奥深い技術。」

「武器にも。防具にも。己の肉体にも…魔力は宿る。」

青年は拳を握る。

その拳にも魔力が流れ込み、一撃で巨大な岩山を粉砕した。

「魔力は、全てを強くする。」

青年は静かに笑う。

「扱えるかどうかは、才能ではない。」

その言葉と同時に。

景色が崩れ始めた。

炎が、空が、青年の姿が。

全て白い光へ溶けていく。

最後に青年が振り返る。

その視線だけが、真っ直ぐ蓮を見た気がした。

「この力を、未来へ。」


◇◇◇


次の瞬間。

蓮は石室へ戻っていた。

「はぁっ……!」

荒く息を吐く。

心臓が激しく鼓動している。

今のは夢ではない。

確かに誰かの記憶だった。

その時。

収納ポーチの中から眩い光が漏れ始めた。

「これは!」

蓮は慌てて《能力継承結晶(スキルクリスタル)》を取り出す。

虹色だった結晶が、祭壇から溢れる光へ呼応するように浮かび上がった。

ブゥゥゥン……

祭壇の中心から一本の光が伸びる。

それは真っ直ぐ《能力継承結晶》へ吸い込まれていく。

結晶内部で七色の光が渦を巻く。

眩しさは次第に増し、石室全体を照らした。

蓮はただ見守ることしかできない。

やがて。

光が一点へ収束し、《能力継承結晶》の中心へ、新たな紋様が刻まれる。

蓮は《解析》を発動する。


――――――――――

《能力継承結晶》

記録能力:《魔力付与(エピテマ)

使用可能。

譲渡可能。

――――――――――


過去の記憶を継承した《能力継承結晶》へと変わった。


蓮は結晶を両手で包み込む。

微かに温かい。

まるで、新しい命が宿ったようだった。

「これが……《能力継承結晶》。」

胸の鼓動が高鳴る。

あの青年が見せた、武器へ魔力を宿す技。

あれを自分も扱えるようになるのだろうか。

蓮は期待を胸に、《能力継承結晶》を砕く。

すると虹色の光が蓮に吸収されていく。

スキルが継承された感じがあった。

そして改めて石室を見渡す。

静まり返った空間には、もう先ほどまでの光はない。

この祭壇には、もう何も無い。

未知の遺跡、そして、継承した《魔力付与》。

ゲヘナは、蓮が想像していたよりも遥かに深い謎を秘めていた。

第二スキル:《魔力付与》

常時発動可。

アーツなどは無く、熟練度が上がると付与できる魔力量が上がる。


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