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vsミノタウロス#1

前回のおさらい

遂にミノタウロスと対峙する。蓮は六人を逃がす為に思考を止めない。

ミノタウロスの巨体が岩盤を砕きながら迫る。

「《前方城壁(スクード)》!」

蓮が右手を突き出した瞬間、黄金の城壁が地面からせり上がる。

分厚い城壁が通路を完全に塞ぐ。

次の瞬間。

ドガァァァァァン!!

ミノタウロスの巨大な戦斧が城壁へ叩き込まれた。

凄まじい衝撃が空洞全体を揺らす。

しかし…

「……止まった。」

蓮は目を見開く。

以前遭遇した時とは違う。

Lv.3まで成長した《前方城壁》は、一撃ではびくともしなかった。

表面に僅かな傷が付いただけで、亀裂は入っていない。

「今です!」

蓮が叫ぶ。

「この隙に逃げてください!」

リーダーが我に返る。

「全員退避!」

六人は一斉に駆け出した。

しかしミノタウロスは止まらない。

「グオオオオオオッ!!」

再び戦斧が振り上げられる。

「もう一発来る!」

ドガァァァァン!!

二撃目。

黄金の城壁全体が激しく震える。

ビシッ……

今度は表面へ一本の亀裂が走った。

「二発で……!」

以前なら一撃で入っていた亀裂が、今は二撃目で現れる。

確かに成長している。

だが。

「まだ持つ!」

蓮は魔力を注ぎ続けた。

城壁は崩れない。

その数秒の間に、六人はかなり距離を離していた。

リーダーが叫ぶ。

「君も来い!」

「先に行ってください!」

蓮は叫び返す。

「まだ時間を稼げます!」

「しかし!」

「早く!」

迷っている時間はない。

探知(ディテクション)》が教えてくれる。

六人はこのまま行けばあの分岐へ到達する。

そこまで行けば逃げ切れる。

リーダーは苦渋の表情を浮かべた。

「……行くぞ!」

六人は走り出した。

その姿を確認した瞬間。

バキィィン!!

三撃目。

ついに黄金の城壁が砕け散った。

無数の光の粒となって消えていく。

「グオオオオオオッ!」

ミノタウロスが咆哮を上げる。

その赤い瞳が、目の前に残った蓮だけを捉えた。

(よし。)

蓮は静かに息を吐く。

六人の反応は遠ざかっていく。

もう追いつかれることはない。

その代わり。

自分だけが、この化け物と向き合うことになる。

「来い。」

白い剣を構える。

ミノタウロスは戦斧を横薙ぎに振るった。

轟ッ!!

空気そのものを切り裂く一撃。

「《反射(パリィ)》!」

ギィィン!!

剣を合わせた瞬間、衝撃が腕へ伝わる。

重い…あまりにも重い。

それでもLv.3となった《反射》はしっかりと機能し、斧の軌道が僅かに逸れる。

ズガァァン!!

側面の岩壁が粉砕された。

巨大な岩塊が降り注ぐ。

蓮は横へ転がって回避した。

(やっぱり桁違いだ。)

解析(アナライズ)》が表示した情報を思い出す。

アキレス腱、目。

弱点は分かった。

だが、そこを攻撃できるかは別問題だった。

ミノタウロスは再び突進する。

三メートルを超える巨体とは思えない加速。

戦斧が振り下ろされる。

蓮は紙一重で躱した。

ズドォォォン!!

地面へ巨大な亀裂が入る。

飛び散った石が頬を掠めた。

(正面からじゃ無理。)

蓮は駆ける。

狙うのは脚。

《解析》が弱点を示してくれている。

今しかない。

「はぁっ!」

白い剣が閃く。

ギィィィィン!!

硬いが斬れた…だが浅い。

アキレス腱へ僅かな傷が付いただけだった。

ミノタウロスが低く唸る。

その脚で蹴りを入れられる。

「っ!」

蓮は跳ぶ…だが避け切れない。

ドゴォッ!!

脛当てへ直撃した。

「ぐっ!」

身体が吹き飛ぶ。

何度も地面を転がり、岩壁へ激突した。

「がはっ……!」

肺の空気が一気に抜ける。

全身が痺れる。

《セイクリッドシリーズ》が衝撃を大きく軽減してくれた。

もし以前の装備だったなら、骨が砕けていてもおかしくない。

それでも。

「強い……。」

蓮は言葉を発しながら立ち上がる。

ミノタウロスは追撃してこない。

じっと蓮を見つめている。

まるで値踏みするように。

(知性……。)

《解析》にあった情報。

ただ暴れるだけの魔物ではない。

相手を観察し、戦い方を変えるだけの知能を持っている。

「グルルル……。」

鼻息が漏れる。

戦斧を肩へ担ぎ直す。

その動作だけで凄まじい威圧感があった。

《探知》を広げる。

六人は……もう三百メートル近く離れている。

探知範囲の端で、必死に走り続けているのが分かった。

(良かった。)

目的は果たした。

あとは自分だけ。

しかし、ミノタウロスは通路の中央に立ち、帰路を完全に塞いでいた。

別の通路へ回ろうにも、間に合わない。

(どうする……。)

蓮は必死に思考を巡らせる…

逃げ道が見当たらない。

「……そうか。」

蓮は小さく息を吐いた。

「逃げられないなら……戦うしかない。」

白い剣を静かに構え直す。

ミノタウロスは、その様子を見て口元を歪めたように見えた。

まるで獲物が覚悟を決めたことを理解したかのように。

「グオォォ……。」

低いうなり声と共に、巨大な戦斧を片手で持ち上げる。

ズンッ!

一歩踏み出しただけで地面が揺れた。

(来る。)

戦斧が袈裟懸けに振り下ろされる。

「《反射》!」

ギィィィン!!

剣を合わせる。

《反射》で戦斧の軌道は僅かに逸れた。

ズガァァァン!!

岩盤へ直撃した一撃が巨大な亀裂を走らせる。

その隙へ蓮は踏み込んだ。

《解析》が表示する弱点。

アキレス腱。

「はぁぁっ!」

白い剣が閃く。

ギィン!

硬い、だが今度は浅くない。

先程と同じ箇所を刃先が食い込み、赤黒い血が飛び散った。

「グオオオオッ!!」

ミノタウロスが怒号を上げる。

蹴りが飛んできた。

「《魔法盾(アイギス)》!」

黄金の盾が展開される。

ドゴォォォン!!

蓮は盾ごと吹き飛ばされた。

数メートル先まで弾き飛ばされ、岩肌へ激突する。

「がっ……!」

腕が痺れる。

(重い……!)

一撃一撃が、これまで戦ってきたどの魔物とも違う。

まともに受ければ終わる。

ミノタウロスは脚の傷など意に介さない。

再び距離を詰めてくる。

「まだ……!」

蓮は立ち上がる。

ミノタウロスの連撃を紙一重で避け続ける。

ズドォン!!

ズガァン!!

岩壁が次々と砕け、洞窟全体が悲鳴を上げる。

土煙の中。

蓮は懐へ飛び込んだ。

「《前方城壁》!」

今度は攻撃ではない。

ミノタウロスの足元へ城壁を突き上げる。

不意を突かれた巨体が僅かによろめいた。

その瞬間。

「そこだ!」

剣で再度アキレス腱を狙う。

今度はさらに深く斬り裂くことができた。

「グアアアアアッ!」

特殊個体が初めて苦痛の叫びを上げる。

(効いてる!)

完全に無傷ではない。

確かに通じる。

しかし。

その喜びは一瞬だった。

ミノタウロスは怒りに任せて戦斧を振り回す。

「《前方城壁》!」

黄金の壁が再び現れる。

ドガァァァン!!

一撃目。

城壁が耐える。

続けて二撃目。

バキッ!!

壁全体へ大きな亀裂が広がった。

そして。

三撃目。

バリィィィン!!

城壁は粉々に砕け散る。

衝撃波だけで蓮の身体が浮いた。

「ぐっ!」

地面へ叩き付けられる。

息ができない。

口の中へ鉄の味が広がる。

それでも、剣だけは離さなかった。

「まだ……終われない。」

震える足で立ち上がる。

《解析》も切れていない。

ミノタウロスの情報が頭へ流れ続ける。

その中で、一つだけ変化があった。

…右脚負傷。

蓮は目を見開く。

(解析結果が変わった……。)

弱点ではない。

だが、戦闘中の状態変化まで表示され始めている。

絶え間なく発動していた《解析》は、熟練度が上がり戦いながらも情報を更新していた。

ミノタウロスも蓮を見つめる。

最初のような余裕はない。

脚を庇うような動きが僅かに見える。

「……効いているなら。」

蓮は剣を握り直した。

勝てるとは思わない。

それでも、このまま倒れるつもりもない。

一撃でも多く。

一秒でも長く。

自分の限界を超えて戦う。

白い剣を構える蓮と、巨大な戦斧を握るミノタウロス。

静寂が二人を包む。

次の瞬間。

両者はほぼ同時に地面を蹴り、再び激突した。

誤字脱字等御座いましたら指摘お願いします!

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