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解析

前回のおさらい

新たなパーク《解析》を使うべくゲヘナに向かう、

翌朝。

まだ街が目覚めきる前の時間。

蓮は朝食を済ませると、装備へ身を包み、自宅を後にした。

新たに習得したパーク《解析(アナライズ)》。

「今日はこっちも試してみるか。」

そう呟きながら、第三ゲヘナへ足を踏み入れる。

入口を抜けると、冷たい空気が全身を包んだ。

「《探知(ディテクション)》」

まずはいつものように探知を展開する。

半径200メートル。

数十もの魔力反応が頭の中へ浮かび上がる。

その状態のまま、蓮は第二層へ向かった。


◇◇◇


第二層へ到着して十分ほど。

岩陰からグレイファングが姿を現した。

「まずは……。」

蓮は剣を構えながら《解析》を発動する。

視線を魔物へ向け続ける。

すると、頭の中へ情報が流れ込んだ。

――――――――――

《グレイファング》

レート:C

特徴:高い脚力と群れでの連携。

弱点:喉部・腹部。

――――――――――

「なるほど……。」

思わず感心する。

《探知》では位置しか分からない。

しかし《解析》なら相手の特徴まで読み取れる。

グレイファングが飛び掛かる。

蓮は半歩だけ横へ。

そのまま喉へ一閃。

光となって消滅した。

「本当に弱点が分かる。」

まだ情報量は少ない。

それでも戦闘効率は確実に上がっていた。


◇◇◇


その後も《解析》を試し続ける。

ストーンガーディアン。

ケイブスパイダー。

ゴブリンソルジャー。

一体ずつ情報を取得していく。

熟練度も徐々に上昇していた。

《解析 Lv.2》

「もう上がった。」

こちらも成長速度は悪くない。

魔力量の多い蓮だからこそ、探索中ずっと使用し続けられる恩恵は大きかった。


◇◇◇


昼頃。

《探知》が宝箱を捉える。

周囲に敵はいない。

慎重に近付く。

蓮は試しに宝箱へ《解析》を使ってみた。

――――――――――

木製宝箱

状態:正常

罠:無し

封印:無し

――――――――――

「罠まで分かるのか。」

思わず目を丸くする。

今までは《探知》を使い慎重に確認していた。

しかし《解析》があれば、さらに安全に宝箱を開けられる。

蓋を開く。

中から現れたのは魔鋼鉄鉱石五個と、中級魔力回復ポーション一本だった。

「悪くない。」

収納ポーチへしまう。


◇◇◇


午後。

蓮は第二層でも未踏だった区域へ足を踏み入れていた。

ここは探索者の姿も少ない。

静かすぎるほど静かだった。

《探知》には魔物が映っている。

しかし何かがおかしい。

「……?」

反応が少ない。

今までなら二十体ほどいた魔物が、この周辺だけ極端に少ない。

「どういうことだ……?」

魔物同士が争ったのか。

いや違う。

《解析》で岩壁を見る。

魔力の残滓。

巨大な爪痕。

岩盤が抉られている。

「これは……戦闘跡?」

しかも新しい。

数時間以内。

その時だった。

《探知》が大きく揺れる。

ドクン……

蓮は思わず立ち止まった。

200メートル先。

あの巨大な魔力反応。

昨日感じたものと同じ。

「いた……。」

しかも今度は動いている。

ゆっくり。

こちらではない。

別方向へ歩いている。

距離があるにも関わらず、地面が微かに震えているような錯覚すら覚えた。

蓮は呼吸を殺す。

《探知》を維持したまま、その動きを追う。

巨大な反応は他の魔物へ近付く。

すると一体、また一体。

魔物の反応が消えた。

戦っている様子ではない。

まるで、一瞬で消されている。

「……。」

蓮の額へ汗が流れる。

レッドオーガですら、ここまで圧倒的ではなかった。

あれは間違いなく、この第二層の頂点。

篠崎が言っていた『主』。

その可能性は極めて高かった。

「まだ戦う相手じゃない。」

蓮は即座に判断する。

勝率を考えるまでもない。

逃げる。それが最善。

静かに来た道を引き返し始める。

しかし、その時だった。

《探知》へ別の反応が映る。

探索者三人。

その進行方向が最悪だった。

巨大な魔力反応へ真っ直ぐ向かっている。

「まずい……!」

距離は約150メートル。

まだ気付いていない。

蓮は迷う。

知らせに行くべきか。

だが、自分まで接近すれば『主』と遭遇する危険がある。

一瞬の逡巡。

しかし答えは決まっていた。

「放ってはおけない。」

蓮は白い剣の柄を握る。

《探知》で巨大な魔力の位置を確認しながら、三人の探索者へ向かって走り出した。

静まり返った第二層。

誰も知らない巨大な存在が暗闇を歩く中、蓮は再び危険の中心へと足を踏み入れる。

その判断が、第二層最大の脅威との邂逅へ繋がることを、この時の蓮はまだ知らなかった。

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