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第二層の主

前回のおさらい

5人組を助け、探索を続ける。

第二層の探索は、蓮が思っていた以上に順調だった。

探知(ディテクション)》を発動したまま慎重に進む。

半径200メートルという広大な索敵範囲は、第二層でも絶大な効果を発揮していた。

魔物の群れを避ける。

宝箱がありそうな所を優先して調べる。

まるで洞窟全体の地図を頭の中へ描きながら歩いているような感覚だった。

(本当に便利だ……。)

蓮は思わず苦笑する。

《探知》を覚える前とは探索効率が比較にならない。

危険な場所へ踏み込む回数は減り、それでいて収穫は増えている。

この日だけでも魔力鉱石を十数個。

中級回復ポーション三本。

魔鋼鉄の鉱石を数個発見した。

「第二層は素材もいいな。」

収納ポーチへしまいながら呟く。

その直後だった。

《探知》へ新たな反応が映る。

「……宝箱?」

魔物はいない。

周囲にも危険な反応は見当たらない。

慎重に近付くと、岩陰へ木製の宝箱が置かれていた。

蓮は周囲をもう一度確認する。

《探知》にも何も映らない。

「罠もなさそうだ。」

ゆっくりと蓋を開く。

ギィ……

所中に入っていたのは、小さな革袋だった。

袋を開く。

中から転がり出たのは、親指ほどの大きさの透明な結晶。

内部で虹色の光が揺らめいている。

「これは?……。」

見覚えはない。

アーティファクトではないようだ。

「また鑑定かな。」

苦笑しながら収納ポーチへしまう。

第三ゲヘナでは、正体不明のアイテムも珍しくない。

分からない物は無理に使わない。

それも探索者として重要な判断だった。


◇◇◇


さらに探索を続けること数時間。

蓮は第二層の中央付近まで到達していた。

《探知》には無数の反応が映っている。

その中で、一つだけ異様な魔力反応があった。

大きい。

しかも動いている。

「……またか。」

レッドオーガを初めて見つけた時と似た感覚。

だが今回は距離が遠い。

約180メートル。

相手はこちらへ向かって来る様子はない。

(近付くべきじゃない。)

本能が警鐘を鳴らしていた。

レッドオーガ以上。

そう感じるほど濃密な魔力。

蓮は迷わず迂回を選ぶ。

(今の実力じゃ勝てるかわからない。)

無理な戦闘はしない。

勝てる相手だけを確実に倒す。

巨大な反応を避けるように進路を変える。

やがて、その魔力も《探知》の範囲外へ消えていった。

蓮は小さく息を吐く。

「危なかった。」

《探知》がなければ、鉢合わせになっていた可能性もある。

そう考えると背筋が寒くなった。


◇◇◇


帰還まで残り一時間。

《探知》へ五つの探索者反応が映る。

そのうちの一人が蓮へ近付いてきた。

「おっ。」

現れたのは『焔』の篠崎だった。

「神代君!」

「あ、篠崎さん。」

「まだ一人で探索してたのか。」

「はい。」

篠崎は苦笑した。

「若いなぁ。」

「俺たちはもう帰るところだ。」

後ろには他の四人もいる。

傷は残っているものの、応急処置は済ませたらしい。

女性探索者が笑顔で頭を下げた。

「さっきは本当にありがとう。」

「いえ。」

「それより皆さん、怪我は大丈夫ですか?」

「ポーションで何とかね。」

篠崎は笑う。

「それより神代君。」

「新たな情報だ。」

「何ですか?」

「この階層には”主”がいるって噂だ。」

蓮は眉を上げた。

「主?」

「正式には確認されちゃいない。」

「だがそいつを見て生きて帰った探索者はみんな同じことを言う。」

篠崎の表情が真剣になる。

「巨大な黒い影を見た。」

「赤い目だけが暗闇で光っていた。」

「姿を見ただけで逃げた。」

「そんな証言ばかりだ。」

蓮は先ほど感じた巨大な反応を思い出す。

(もしかして……。)

篠崎は肩をすくめた。

「噂程度だがな。」

「もし遭遇したら迷わず逃げろ。」

「俺たちCレートでも勝てる気がしない。」

蓮は静かに頷いた。

「分かりました。」

「じゃあまた会おう。」

「はい。」

『焔』の五人は第一層への階段へ向かって歩いていく。

その姿を見送りながら、蓮は再び《探知》を広げた。

静かな洞窟。

魔物の反応。

探索者の反応。

そして、遠く離れた場所。

探知範囲の外へ消えたはずの巨大な魔力が、一瞬だけ揺らいだ気がした。

まるでこちらを見ているかのように。

蓮は思わず立ち止まる。

「……気のせい、か。」

そう呟いたものの、その胸の奥には小さな緊張が残り続けていた。

第三ゲヘナ第二層。

その奥には、まだ誰も知らない強敵が静かに息を潜めていた。

誤字脱字等御座いましたら指摘お願いします!

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