モンスタートラップ
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前回のおさらい
剣を新たに新調し再度第三ゲヘナに。
工房を出ると、夏の日差しが蓮を包み込んだ。
腰には新たな剣。
背中には祖父から受け継いだ剣。
「……よろしく。」
誰に聞かせるでもなく、新しい剣の柄を軽く叩く。
そして背中の剣にもそっと触れた。
「今まで、本当にありがとう。」
祖父の剣はもう戦えない。
だが、それは弱かったからではない。
祖父の時代から何年も戦い続け、自分の代でも数々の強敵を退け、最後にはBレート魔物・レッドオーガとの死闘を支え切った。
十分すぎるほど役目を果たしたのだ。
蓮は小さく笑うと、そのまま駅へ向かった。
◇◇◇
蓮は《探知》を発動したまま、第三ゲヘナ第一層を進んでいた。
探知範囲は半径七十五メートル。
以前とは比べものにならないほど周囲の状況が鮮明に分かる。
魔物、探索者、魔力鉱石。
それらを避けたり、必要に応じて向かったりしながら探索を続けていた。
その時だった。
(……人?)
《探知》が二つの人影を捉える。
同時に、その周囲には十を超える魔物の反応。
「これは……!」
反応は絶えず動き続けている。
囲まれている。
蓮は迷わず駆け出した。
「急がないと!」
通路を抜けると、その先には広い空洞が広がっていた。
「はぁぁぁっ!」
巨大な戦斧が振るわれ、一体のゴブリンを吹き飛ばす。
「まだ終わらないの!?」
短剣を操る女性が素早く魔物を切り伏せる。
「高坂さん! 石坂さん!」
蓮は思わず声を上げた。
二人もこちらへ気付く。
「神代!?」
高坂の周囲には十数体のゴブリンソルジャーとケイブウルフ。
さらに後方には一回り大きなゴブリンナイトまでいた。
地面には倒した魔物の死体が光となって消滅し始めている。
高坂が苦笑する。
「宝箱見つけたと思ったら、魔物の巣だった!」
石坂も肩で息をしている。
「倒しても倒しても終わらないのよ!」
蓮は一瞬で状況を把握した。
(ゴブリンナイトが群れを統率している。)
あれを倒さない限り終わらない。
「加勢します!」
蓮は白い剣を抜いた。
「《魔法盾》!」
黄金色の盾が展開される。
直後、飛び掛かってきたケイブウルフを真正面から受け止めた。
ガンッ!
勢いを殺されたウルフを、そのまま一閃。
「速い!」
石坂が目を丸くする。
蓮は止まらない。
《探知》で魔物の位置を把握しながら次々と剣を振るう。
背後から近付くゴブリンも、振り返ることなく《魔法盾》で受け止める。
「高坂さん!」
「右が空きます!」
「任せろ!」
高坂の戦斧が豪快に振り抜かれ、三体まとめて吹き飛ばした。
「石坂さん!」
「後ろ!」
「分かってる!」
短剣が閃き、忍んで弓を構えていたゴブリンアーチャーの喉を裂く。
三人の連携が自然と噛み合っていく。
高坂が前線を押し上げ、
石坂が死角を潰し、
蓮が《探知》で全体を把握しながら穴を埋める。
「神代!」
高坂が叫ぶ。
「あのでかいのをやれ!」
視線の先。
ゴブリンナイトが剣を掲げ、魔物たちへ指示を飛ばしていた。
蓮は一気に駆け出す。
途中、数体のゴブリンが立ちはだかる。
「邪魔だ!」
《魔法盾》で弾き飛ばし、そのまま駆け抜ける。
ゴブリンナイトも迎え撃つように剣を振るった。
ガキィン!
刃と刃がぶつかる。
「思ったより重い!」
しかし、レッドオーガを経験した今の蓮には脅威ではない。
相手の動きを読み、一歩踏み込む。
「そこだ!」
白い剣が鎧の隙間を正確に貫いた。
ゴブリンナイトが苦痛で顔を歪める。
さらに追撃。
二撃目が首を斬り裂いた。
「ギャァァッ!」
指揮官が倒れた瞬間だった。
残っていた魔物たちの動きが目に見えて乱れる。
「今だ!」
高坂が雄叫びを上げる。
「押し切るぞ!」
三人は一気に攻勢へ転じた。
数分後。
最後のケイブウルフが倒れる。
静寂が戻った。
「終わった……。」
高坂は戦斧を肩へ担ぎ、大きく息を吐く。
「助かったぜ、神代。」
石坂も苦笑しながら近付いてくる。
「本当にギリギリだった…あと少し遅かったら危なかったかも。」
高坂は空洞の奥を指差す。
そこには、岩壁に埋め込まれるように木製の宝箱が置かれていた。
「見つけた瞬間、あいつらが一斉に襲ってきたんだ。」
「完全に罠だったわ。」
石坂が肩をすくめる。
高坂は蓮へ向き直ると笑った。
「神代。」
「今回はお前が助けてくれた。」
「だから、この宝箱はお前が開けろ。」
「えっ?」
蓮は驚いて二人を見る。
「いや、それは……。」
「遠慮すんな。」
高坂は豪快に笑う。
「安いかもしれねえが俺たち二人の命代だ。」
石坂も優しく微笑んだ。
「うん。私たちだけじゃ、たぶん帰れなかった。だから受け取って。」
二人の真っ直ぐな視線を受け、蓮は少し考えた後、小さく頷いた。
「……ありがとうございます。」
第三ゲヘナでは、宝箱は早い者勝ち。
それが暗黙のルールだ。
それでも二人は、自分の命を救ってくれた礼として、その権利を蓮へ譲ってくれた。
蓮はゆっくりと宝箱へ歩み寄る。
《探知》で周囲に魔物や罠がないことを確認すると、静かに蓋へ手を掛けた。
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