Bレート
前回のおさらい
クレープを一条と共に食べに行く。
翌日。
放課後を告げるチャイムが鳴ると、蓮は教科書を鞄へしまった。
「神代、今日は協会だっけか?」
翔太が椅子を回して振り返る。
「うん。昨日言われた探索者カードを受け取りに行くんだ。」
「そうだった!」
翔太は目を丸くした。
「もうBレートなんだよな!」
「改めて考えるとすげぇ……。」
夏鈴も笑顔で拍手を送る。
「おめでとう、蓮。」
「ありがとう。」
その時、一条も席を立った。
「私も今日は協会へ行く予定なんだ。」
「じゃあ、一緒に行こうか。」
「うん。」
四人で校門まで歩き、途中で翔太と夏鈴と別れる。
「また明日!」
「またね。」
手を振る二人を見送り、蓮と一条は並んで駅へ向かった。
◇◇◇
探索者協会本部。
受付へ向かうと、昨日対応してくれた女性職員が二人に気付いた。
「あ、神代さん。」
「お待ちしておりました。」
職員は奥へ下がると、小さな黒いケースを持って戻ってきた。
「こちらになります。」
蓮はケースを受け取り、ゆっくりと蓋を開く。
中には新しい探索者カードが収められていた。
深い藍色のカード。
中央には銀色で刻まれた探索者協会の紋章。
下部には、
神代 蓮
探索者レート B
と記載されている。
思わず見入ってしまう。
「これで正式にBレート探索者です。」
職員が笑顔で説明する。
「旧カードはこのまま回収いたします。」
「はい。」
職員は端末へ登録を行い、数秒後に頷く。
「登録完了しました。」
「本日よりBレート権限が有効になります。」
「第二ゲヘナ第五層までの入域許可、Bレート専用依頼の受注が可能です。」
「なお、第三ゲヘナへの入域には別途許可が必要となります。」
「分かりました。」
蓮は新しいカードを大切そうに財布へしまった。
その様子を見ていた一条が優しく笑う。
「改めて、おめでとう。」
「ありがとう。」
「まだ実感がないけどね。」
「そのうち慣れるよ。」
一条は自分のカードを軽く見せる。
同じ藍色のBレートカードだった。
「これで本当に同じレート。」
「そうだね。」
蓮は少し嬉しそうに笑った。
受付近くの大型モニターに視線を移動する。
『新規Bレート依頼一覧』
画面には様々な依頼が表示された。
『第二ゲヘナ第四層 魔物討伐』
『護衛任務』
『区域調査』
『魔力結晶採取』
第一ゲヘナの依頼とは報酬額が一桁違う。
「すごい……。」
蓮は思わず呟いた。
「責任もその分大きいけどね。」
一条が苦笑する。
「Bレートになると、一人ひとりが協会の戦力として見られるようになるから。」
蓮は真剣な表情で頷いた。
「もっと強くならないと。」
「焦らなくていいよ。」
一条は穏やかな声で言う。
「蓮君はちゃんと前に進んでる。」
「それに……。」
少しだけ言葉を切る。
「今の蓮君なら、一人で背負わなくても大丈夫。」
「助けてくれる人もいるから。」
その言葉に、蓮は少し驚いたあと、小さく笑った。
「そうだね。」
Aレートの相良や佐伯。
そして一条。
他にも協会に、自分を支えてくれる職員等がいる。
◇◇◇
二人が協会を後にした、その頃。
地下深くにある情報管理室では、一人の職員が新たな報告書を受け取っていた。
「京都第六ゲヘナより緊急報告です。」
「……読め。」
職員は資料を開く。
「本日未明、第六ゲヘナ最深部で新たな祠を確認。」
「内部は既に空。」
「残留魔力は過去の事件と一致。」
「またか……。」
室内に重苦しい空気が流れる。
さらに続きがあった。
「それと。」
「祠の壁面に、これまで確認されていなかった古代文字が刻まれていました。」
「解読は?」
「現在進めています。」
全国各地で空になった祠が見つかっている以上、事態は確実に進行している。
そして、その「古代文字」が何を意味するのか。
その答えを知る者は、まだ誰一人として存在しなかった。
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