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約束のクレープ

前回のおさらい

特例昇格試験を終えBレートに飛び級する蓮。

試験を終えた蓮は、更衣室で探索者用の装備から制服へ着替えていた。

「終わった……。」

ようやく実感が湧いてくる。

張り詰めていた緊張が解け、どっと疲労が押し寄せた。

ロックリザード。

シャドウウルフの群れ。

アーマードマンティス。

そしてストーンゴーレム。

どの戦いも、一歩間違えれば敗北していた。

「まだまだだな。」

Bレートに認定されたとはいえ、自分より強い探索者は数え切れないほどいる。

相良、佐伯のような上位探索者との差も大きい。

(もっと強くならないと。)

自然とそんな思いが胸に浮かんでいた。

荷物をまとめて部屋を出ると、廊下の向こうから聞き慣れた声がした。

「蓮君。」

振り向くと、一条が立っていた。

「一条さん。」

「終わったみたいだね。」

「うん。」

蓮は照れくさそうに笑う。

「合格した。」

その一言を聞いた瞬間、一条はぱっと表情を明るくした。

「本当に?」

「おめでとう!」

心から嬉しそうな笑顔だった。

「ありがとう。」

「今日はずっと気になってたんだ。」

「でも、蓮君なら大丈夫だって信じてた。」

蓮は少し照れながら頭を掻く。

「結構ギリギリだったよ。」

「そんなことない。」

一条は優しく首を振る。

「努力してきた人は、自分を過小評価しがちなんだから。」

その言葉に蓮は苦笑した。

「そういうものかな。」

「そういうもの。」

一条は少し悪戯っぽく笑う。

「今日この後の予定は?」

「特にないよ。」

「クレープの件今からでもいい?」

蓮は少しだけ考えたあと、小さく頷いた。

「そうだね行こう。」

「決まり!」

一条は嬉しそうに歩き出した。


◇◇◇


夕方。

駅前のクレープ店。

放課後ということもあり、多くの学生で賑わっていた。

「蓮君は何にするの?」

「んー種類が多いな……。」

メニューを見ながら蓮は少し悩む。

「一条さんは?」

「私はこれ。」

一条が指差したのは、いちごと生クリームがたっぷり乗った人気商品だった。

「じゃあ、俺も同じので。」

「ふふ。冒険しないタイプ?」

「失敗したくないから。」

「蓮君らしい。」

二人はクレープを受け取り、近くの公園へ向かった。

ベンチへ腰掛ける。

夕焼けが街を赤く染めていた。

「美味しい。」

一条が一口食べると、蓮は満足そうに笑う。

「良かった。」

穏やかな時間が流れる。

学校でも協会でもない。

ただ友人として過ごす時間。

蓮はそんな空気を心地よく感じていた。

「そういえば。」

一条が空を見上げる。

「Bレートになったから、今までより危ない依頼も受けられるようになるね。」

「うん。」

「Bレートだと、第二ゲヘナの下の階層にも行けるようになる。」

「でも、無理だけはしないで。」

その言葉には、いつも以上に強い感情が込められていた。

蓮は少し不思議そうな顔をする。

「そんなに心配?」

「……うん。」

一条は一瞬だけ視線を伏せる。

「蓮君は、危ないと思っても誰かを助けようとするから。」

その言葉に、蓮は少し驚いた。

「そんな風に見える?」

「見えるよ。」

「だから心配なの。」

蓮は少し考えたあと、静かに笑った。

「ありがとう。でも、大丈夫。無茶と無謀は違うって、この前一条さんが教えてくれたから。」

一条は少し目を丸くした。

そして、ふっと優しく微笑む。

「ちゃんと覚えてたんだ。」

「もちろん。」

その返事を聞き、一条はどこか安心したように息をついた。


◇◇◇


その頃…。

探索者協会本部・極秘会議室。

部屋には数名の幹部だけが集められていた。

机の中央には、一枚の地図が投影されている。

日本列島。

その各地のゲヘナに、赤い光点が十数か所表示されていた。

「これが現在確認されている祠です。」

調査員が説明する。

「第一ゲヘナと同様の構造を持つ祠が、全国のゲヘナで確認されました。」

「共通点は。」

「すべて台座が空になっていたことです。」

部屋の空気が重くなる。

一人が静かに問い掛ける。

「残留魔力は。」

「第一ゲヘナで検出されたものと完全に一致します。」

「……つまり同一個体か。」

「可能性は極めて高いかと。」

別の職員が新たな資料を差し出した。

「さらに気になる報告があります。」

「北海道第四ゲヘナで、探索者が一人だけ証言しています。」

「証言?」

「『黒い人影が祠の中に入っていった』と。」

その場にいた全員が顔を上げた。

「やはり回収しているのはそいつか…。」

誰かが小さく呟く。

一人の職員は腕を組み、地図を見つめる。

「目的は何だ。何を集めている。」

答えは誰にも分からない。

だが、一つだけ確かなことがある。

人型の影の様な魔物は、日本各地のゲヘナを巡り、祠に封じられていた”何か”を回収している。

その目的が判明した時には、もう手遅れなのかもしれない。

静寂に包まれた会議室で、1人がゆっくりと口を開いた。

「全国のAレート以上の探索者へ、水面下で警戒命令を出せ。」

「決して表沙汰にはするな。」

誰も知らない場所で、新たな脅威は静かに動き続けていた。

誤字脱字等御座いましたら指摘お願いします!

続きが気になる!面白い!と思ってくださったら評価お願いします。励みになりますm(_ _)m

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