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激闘

前回のおさらい

新たなアーツ《前方城壁》を習得。

アーマードマンティスは大きく後退すると、傷ついた鎌をゆっくりと持ち上げた。

ギギギギギ……。

断ち切られた片方の鎌から紫色の体液が滴る。

それでも闘志は失われていない。

赤い複眼は蓮だけを捉えていた。

「まだ来るか……。」

蓮は剣を握り直す。

前方城壁(スクード)》を展開したことで魔力は消費している。

新しく得たアーツは強力だが、いくら魔力量が多いとはいえ、連発すれば魔力切れを招く恐れもある。

試験はまだ終わっていないのだ。

アーマードマンティスが低く身を沈める。

次の瞬間。

地面を砕きながら一直線に突っ込んできた。

「くっ!」

蓮は横へ跳ぶ。

鎌が岩壁を切り裂き、大量の岩片が宙へ舞う。

その破片すら凶器となって降り注ぐ。

「《魔法盾(アイギス)》!」

目の前へ黄金色の盾を展開。

カンッ、カンッ、と岩片を受け止めながら距離を保つ。

(真正面じゃ押し切られる。)

(でも……。)

ここまで戦って分かったことがある。

この魔物は鎌や酸による制圧力は高い。

しかし、攻撃の直後には必ず一瞬だけ体勢が崩れる。

(その隙を突ければ。)

アーマードマンティスが再び大きく口を開く。

「また酸か!」

オレンジ色の液体が溜まり始める。

蓮は迷わなかった。

右手を地面へ向ける。

「《前方城壁》!」

轟音とともに黄金色の城壁が出現する。

直後。

ブシャアァァァッ!!

大量の酸が城壁へ降り注いだ。

ジュウウウウウッ!!

激しい煙が立ち込める。

岩なら一瞬で溶けるほどの酸。


だが《前方城壁》は微動だにしない。

「今だ!」

蓮は消えかける《前方城壁》の横から飛び出した。

酸を吐き終えたアーマードマンティスは、予想どおり動きが止まっている。

一気に間合いへ飛び込む。

「はぁっ!」

剣が首を狙う。

ギィン!

しかし甲殻に阻まれ、浅くしか入らない。

その瞬間、巨大な頭突きが迫った。

咄嗟に《魔法盾》を展開。

ガァン!

衝撃が腕へ伝わる。

だが今度は弾き飛ばされなかった。

《魔法盾》越しに押し返し、そのまま横へ身体を流す。

《魔法盾》は、ただ防ぐだけの力ではない。

攻撃の流れを切り、自分の間合いを作るための武器でもある。

アーマードマンティスが怒り狂ったように残る鎌を振り回す。

縦。横。斜め。

猛烈な連撃。


蓮は《魔法盾》と剣を組み合わせ、すべてを紙一重で受け躱していく。

ガンッ!

キィン!

火花が散る。

観覧室では誰も言葉を発しない。

映像だけを食い入るように見つめていた。

「受けるべき攻撃と避けるべき攻撃を的確に判断している……。」

育成課長が静かに呟く。

佐伯も頷いた。

「戦闘センスがずば抜けている。」

「普通なら新しいアーツを覚えた直後は試そうとするものだ。」

「だが神代は違う。」

「必要な場面だけアーツを使い、それ以外は従来の《魔法盾》を使い分けている。」

トップクランの代表者たちも真剣な眼差しで蓮を見つめていた。

「欲しい人材だな……。」

誰かが小さく漏らす。


◇◇◇


蓮は呼吸を整えた。

アーマードマンティスの左腕は既に切断。

首元にも傷が入っている。

(あと一押し。)

魔物もそれを察したのか、最後の力を振り絞るように咆哮した。

ギシャアアアアッ!!

岩場全体が震える。

そして一直線に突進。

これまでで最速だった。

「来い!」

蓮は逃げない。

ギリギリまで引きつける。

三、二、一メートル。

「《反射(パリィ)》!」

黄金色の盾が一瞬だけ淡く光る。

鎌が《魔法盾》へ激突。

《反射》が決まり魔物の身体が大きく仰け反る。

(今!)

蓮は踏み込み、魔物の懐へ潜り込む。

剣を腰だめに構える。

狙うのは何度も傷を重ねた首の付け根。

「終わりだ!」

全身の力を込め、一閃。

ギィィィンッ!!

甲殻が砕ける音が響く。

刃は深々と首元へ食い込み、そのまま一気に切り裂いた。

アーマードマンティスは数歩ふらつき、大きく身体を揺らす。

複眼から赤い光が消え――。

全身が光の粒となって崩れ始めた。


『討伐確認。』

『アーマードマンティスの討伐を確認しました。』


端末から電子音が鳴る。

蓮は静かに剣を払うと、ゆっくりと鞘へ納めた。

「……勝てた。」

安堵と同時に、額から汗が流れ落ちる。

レートがC+の魔物との戦闘は、厳しいものだった。

しかし、その戦いで《魔法盾》は新たな可能性を見せてくれた。

後方で見守っていた試験官は、小さく息を吐く。

(実力だけじゃない。戦いの中で成長するタイプか。)

その評価は、試験開始前よりもさらに大きく変わっていた。

一方、観覧室では静かだった空気がざわめきへと変わる。

「C+を単独撃破か……。」

「しかも戦闘中にスキルを成長させた。」

佐伯は満足そうに腕を組んだ。

「ここまでは予想以上だ。」

モニターには再び歩き始めた蓮の姿が映っている。

その先には、第一目標地点まであと一キロ。

そして第二ゲヘナ第三層は、まだその牙を隠したままだった。

誤字脱字等御座いましたら指摘お願いします!

続きが気になる!面白い!と思ってくださったら評価お願いします。励みになりますm(_ _)m

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