群れでの戦闘
前回のおさらい
ロックリザード撃破、順調に進んでいく。
ロックリザードを倒してから十分ほど。
蓮は端末の地図を確認しながら、慎重に岩場を進んでいた。
『第一目標地点まで 二・四キロ』
第二ゲヘナの空気は重く感じる。
第一ゲヘナとは比べものにならない緊張感で満ちている。
(ここから先は一体ずつ確実に倒していこう。)
その時だった。
ザッ――。
岩陰から黒い影が飛び出す。
「!」
現れたのは黒い毛並みの狼型魔物。
しかし一匹ではない。
次々と姿を現し、あっという間に五匹が蓮を囲んだ。
探索者端末が表示する。
『シャドウウルフ』
『討伐推奨レート:D(個体数で変化)』
「群れか……。」
蓮は剣を構える。
一匹が低く唸りながら飛び掛かってきた。
「ガァッ!」
「《魔法盾》!」
蓮の目前に黄金色の光り輝く盾が展開される。
ガァン!
鋭い牙が盾へ激突し、火花のような魔力が散った。
勢いを失った魔物へ、蓮は迷わず踏み込む。
「はっ!」
二連撃。
シャドウウルフは光となって消えた。
だが、残る四匹はすぐに包囲を狭める。
左右から二匹が同時に襲い掛かる。
蓮は《魔法盾》で一匹の突進を受け流した。
さらに身体を捻りながらもう一匹の爪を剣でガード。
「そこだ!」
蹴りを1発入れすぐさま剣で突き刺し、二匹目も消滅する。
「さすがに連携は厄介だな。」
呟いた直後、残る三匹が同時に飛び掛かる。
《魔法盾》を正面に構え
「《反射》」一匹を弾き返す。
その隙に蓮は横へ踏み込み、二匹目の首を刎ねる。
三匹目は背後へ回ろうとしたが、蓮は素早く振り返り、その爪を剣で受け流しながらのカウンターで二連撃。
残すは弾き返した一匹。
「終わりだ。」
シャドウウルフに肉薄し鋭い突き。
最後の一匹も光の粒となって消えていった。
『シャドウウルフ五体の討伐を確認しました。』
蓮は剣を払って鞘へ納める。
(第二ゲヘナの魔物は、一匹一匹は対処できても、群れになると油断できないな。)
後方から見守っていた試験官は小さく頷く。
(《魔法盾》を無駄なく使っている。防御だけでなく、敵の動きを制限しながら戦う……実戦でも落ち着いて実行できている。)
観覧室でも佐伯が口元を緩めた。
「派手さはないが堅実だ。」
「焦らず、一つずつ確実に処理している。」
育成課長も頷く。
「これなら第二ゲヘナでも十分通用しますね。」
蓮は再び端末へ目を落とした。
『第一目標地点まで 一・九キロ』
まだ試験は始まったばかり。
この先には、Cランクを上回る魔物も待ち受けている可能性がある。
◇◇◇
蓮は周囲を警戒しながら、再び岩場を歩き始めた。
風が吹き抜け、黒い砂が足元をさらさらと流れていく。
静かだ。
シャドウウルフとの戦闘音で魔物が寄ってきてもおかしくない。しかし、不気味なほど周囲に気配はない。
(第二ゲヘナって、こんなに静かなのか……。)
そう思った矢先だった。
ピピッ。
探索者端末が短く電子音を鳴らす。
『目標地点まで一・五キロ』
同時に、前方に魔物を発見。
蓮は岩陰へ身を隠し、ゆっくりと様子を窺う。
そこには開けた岩場が広がり、その中央で一体の巨大な魔物が地面を掘り返していた。
全長は四メートル弱。
鉄のような甲殻に覆われた巨大な昆虫。頭部からは二本の鋭い角が伸び、前脚は大岩さえ切り裂けそうな鎌になっている。
『アーマードマンティス』
『討伐推奨レート:C+』
「C+……。」
蓮は小さく息を吐いた。
ロックリザードよりも一段階危険な相手。
しかも目標地点へ向かうには、この岩場を抜ける必要がある。
(迂回は……。)
地図を確認する。
大きく回れば時間はかかるが進めなくはない。
しかし、それでは試験時間に余裕がなくなる可能性がある。
蓮は静かに剣の柄へ手を添えた。
「……行こう。」
覚悟を決め、一歩前へ踏み出す。
その足音に反応したのか、アーマードマンティスがゆっくりと顔を上げた。
赤く光る複眼が、真っ直ぐ蓮を捉える。
次なる戦いの幕が静かに上がろうとしていた。
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