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対ロックリザード

前回のおさらい

特例昇格試験が始まりました。

ロックリザードは低く唸りながら、ゆっくりと岩陰から姿を現した。

全長は三メートルを超え、全身を覆う灰褐色の鱗は岩そのもののように硬そうだ。

四肢は太く、地面を踏みしめるたびに鈍い音が響く。

探索者端末が自動で反応する。


『対象を確認』

『ロックリザード』

『討伐推奨レート:C』


蓮は静かに剣を抜いた。

(第一ゲヘナの魔物より一回り大きい……。)

だが、不思議と恐怖はなかった。

これまで積み重ねてきた実戦経験が、自然と身体を落ち着かせてくれる。

ロックリザードが大きく口を開いた。

「グォォッ!」

次の瞬間、地面を蹴る。

巨体とは思えない速度だった。

一直線に突進してくる。

「速い!」

蓮は横へ跳ぶ。

ドォンッ!

ロックリザードは勢いのまま岩へ激突し、岩肌を砕いた。

砕けた岩片が周囲へ飛び散る。

(あれをまともに受けたら危険だ。)

蓮は距離を取りながら相手を観察する。

真正面から力比べをする相手ではない。

その時だった。

ロックリザードの尾が大きくしなった。

「っ!」

横薙ぎ。

鋼鉄の鞭のような一撃が迫る。

蓮は剣を構え、受け流す。

ガキィン!

重い衝撃が腕へ伝わった。

「重っ……!」

勢いを殺し切れず、数メートル後方まで滑る。

試験官は少しだけ目を細めた。

(今のを受け流したか。)

普通の新人なら吹き飛ばされて終わりだ。

しかし蓮は体勢を崩していない。

観覧室でも小さなどよめきが起こる。

「受け切ったぞ。」

「身体能力だけなら本当に新人離れしている。」

トップクランの代表者たちも無言のまま映像を見つめていた。


◇◇◇


蓮は再び構える。

(鱗が硬い。)

(正面から斬っても浅い。)

視線を動かす。

首。関節。腹部。

鱗が薄そうな場所を探す。

ロックリザードが再び突進した。

今度は真正面。

「だったら!」

蓮は前へ踏み込んだ。

「えっ……!」

観覧室で誰かが声を漏らす。

逃げるどころか、自ら懐へ飛び込んだのだ。

ロックリザードが牙を剥く。

その寸前。

蓮は身体を低く沈めた。

牙が頭上をかすめる。

そのまま巨体の横へ回り込み——

「はぁっ!」

鋭く一閃。

ギィン!

硬い音が響く。

しかし狙いは胴体ではない。

前脚の付け根。

関節部分だった。

「グアアァッ!」

ロックリザードが苦痛の咆哮を上げ、体勢を崩す。

「今だ!」

蓮は一気に距離を詰めた。

四連撃。

関節だけを狙って連続で斬りつける。

硬い鱗ではなく、わずかな隙間。

「グォォォォッ!」

ロックリザードが暴れる。

だが、片脚を傷つけられたことで動きが鈍る。

(見切れる。)

蓮の集中力がさらに高まる。

巨大な尾が振り下ろされる。

紙一重で回避。

牙が迫る。

半歩だけ身体をずらす。

動きが、少しずつ見えてきていた。

試験官は腕を組みながら呟く。

「戦いながら学習しているのか……。」

一度見た攻撃への対応が、目に見えて速くなっている。

佐伯もモニター越しに笑みを浮かべた。

「やっぱり面白い奴だ。」


◇◇◇


蓮は剣を握り直した。

ロックリザードの呼吸が荒くなっている。

片脚の関節を傷つけられたことで、動きは先ほどより鈍い。

(今ならいける。)

ロックリザードが再び突進してくる。

「グォォォッ!」

蓮は正面から迎え撃つことはしない。

直前まで引きつける。

あと三メートル…二メートル…一メートル。

「今だ!」

地面を強く蹴り、横へ滑るように回避する。

巨体が目の前を通り過ぎた瞬間、蓮は振り返りざまに剣を振り抜いた。

ギィンッ!

狙ったのは首ではなく、首と胴を繋ぐ鱗の隙間。

「グアアアッ!」

ロックリザードが大きく体勢を崩す。

蓮は追撃に移る。

一歩踏み込み、さらに二撃、三撃。

同じ場所だけを正確に斬りつける。

頑丈な鱗も、同じ箇所へ何度も衝撃を受ければ耐えきれない。

やがて鱗が砕け、小さな傷口が開いた。

「はぁっ!」

最後の一撃。

剣が深く突き刺さる。

ロックリザードは苦しげな咆哮を上げ、その巨体がぐらりと揺れた。

数歩よろめいた後、光の粒となって消えていく。

探索者端末が電子音を鳴らした。

『討伐確認。』

『ロックリザードの討伐を確認しました。』

蓮は剣を軽く振って血を払い、静かに鞘へ納める。

「……第二ゲヘナの魔物は、やっぱり一筋縄じゃいかないな。」

初戦こそ勝利したものの、第一ゲヘナの魔物とは比べものにならない硬さと力を実感していた。

後方から見ていた試験官は、表情を変えないまま小さく頷く。

(スキルに頼らず、弱点を見抜いて倒したか。身体能力だけじゃない。状況判断も優秀だ。)

そして観覧室でも、佐伯が腕を組みながら満足そうに笑った。

「いい戦い方だ。」

「無理に力押ししない。」

「相手を観察して、確実に急所を狙っている。」

「新人とは思えんな。」

試験はまだ始まったばかりだった。

誤字脱字等御座いましたら指摘お願いします!

続きが気になる!面白い!と思ってくださったら評価お願いします。励みになりますm(_ _)m

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