特例昇格試験開始
前回のおさらい
特例昇格試験が始まろうとしていた。
説明を終えると、係員は静かに立ち上がった。
「それでは、移動します。」
「はい。」
蓮も立ち上がり、深く息を吐く。
長い廊下を歩き、協会本部の地下へと降りていく。
普段は立ち入ることのできない区画。
重厚な金属製の扉が幾重にも並び、その先には厳重な警備が敷かれていた。
「受験者、神代蓮さんを確認。」
「認証完了。」
「ゲート起動します。」
職員の声とともに巨大な扉がゆっくりと開く。
その先に広がっていたのは、直径二十メートルほどの円形の空間だった。
床一面には複雑な魔法陣が刻まれ、淡い青白い光を放っている。
「これが……。」
蓮は思わず見入った。
「ゲヘナへ直接転移するための転移陣です。」
係員が説明する。
「通常、第三層へは第二層を経由して向かいます。しかし今回は試験の公平性を保つため、協会専用の転移装置を使用します。」
蓮は静かに頷き、魔法陣の中央へ立った。
「武器確認。」
「異常なし。」
「通信機確認。」
「異常なし。」
「生命反応測定開始。」
端末が淡く光る。
『受験者確認。神代蓮。』
『試験開始まで十秒。』
蓮は剣の柄を軽く握った。
(落ち着け。いつも通りだ。)
深呼吸を一つ。
『転移開始。』
眩い光が蓮を包み込む。
身体がふわりと浮き上がる感覚。
次の瞬間。
景色が一変した。
◇◇◇
肌を刺すような冷たい空気。
薄暗い空。
黒紫色の雲がゆっくりと流れている。
地面は岩肌がむき出しで、ところどころに黒い結晶が突き刺さっていた。
「ここが……第二ゲヘナ。」
蓮は周囲を見渡す。
第一ゲヘナとはまるで違う。
森の緑はなく、荒涼とした岩場がどこまでも続いていた。
遠くから聞こえる魔物の咆哮。
身体の奥が自然と警戒を始める。
探索者端末が起動した。
『特例昇格試験開始。』
『制限時間 三時間。』
『第一目標地点まで約二・八キロ。』
地図には一本のルートが表示されている。
「指定地点か。」
蓮はゆっくり歩き始めた。
その数十メートル後方。
一人の試験官が無言で後を追っていた。
Aレート探索者。
試験中は介入禁止。
命の危険がある場合のみ救助する役目だ。
(さて……。)
試験官は蓮の背中を見つめる。
(神代蓮。お前がどこまでやれるか見せてもらおう。)
◇◇◇
一方その頃。
協会本部の観覧室。
巨大なモニターには、蓮の映像がリアルタイムで映し出されていた。
最新型の魔導カメラが受験者を自動追尾している。
佐伯が腕を組む。
「始まったな。」
育成課長も静かに頷いた。
「ここからが本番です。」
トップクランの代表者たちも、一言も話さず画面を見つめている。
誰もが注目していた。
規格外の新人探索者。
その実力が本物なのかどうかを。
そして、岩陰で、一匹の魔物が静かに目を開いた。
全長約三メートル。
岩のような鱗でトカゲの様な姿。
鋭い牙を覗かせながら、低く唸る。
『グルルルル……』
その視線の先には、歩き始めた蓮の姿があった。
「ロックリザードか……。」
第2ゲヘナ初めての戦闘が始まろうとしていた。
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