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初めてのゲヘナ

前回のおさらい

蓮はゲヘナへ向かうため、ライセンス登録をする。

翌朝、午前八時。

僕は、新しく購入した黒いバックパックを背負い、名古屋第一ゲヘナへと向かっていた。

住宅街を抜けると、巨大な黒い結界が視界に入る。

高さ三十メートルはあろうかという漆黒の亀裂。

その周囲は高さ五メートルほどの防壁で囲まれ、自衛隊や探索者協会の職員が厳重に警備していた。

「これが……ゲヘナ。」

テレビでは何度も見た。

しかし実物はまるで違う。

黒い霧が絶えず噴き出し、空間そのものが歪んでいる。

近くにいるだけで、本能が「近づくな」と警告してくる。

それでも、ゲート前には数百人もの探索者が集まっていた。

初心者らしい学生。

ベテランと思われる重装備の男たち。

四、五人で談笑するパーティー。

「よぉ、新人。」

突然声を掛けられた。

振り返ると、筋肉質な男性探索者が笑みを浮かべている。

「今日が初か?」

「はい。」

「なら気を付けろよ。第一ゲヘナだからって舐めると死ぬ。」

「ありがとうございます。」

男は蓮の腰に差した剣を見る。

「剣士か。」

「そんなところです。」

「パーティーは?」

「ソロです。」

その瞬間、男の表情が変わった。

「……やめとけ。」

「え?」

「初心者のソロは死亡率が高い。」

周囲の探索者も会話を聞いていたのか、小さく頷いている。

「悪いことは言わん。誰かと組め。」

「お気遣いありがとうございます。でも、一人でやってみます。」

男はため息をついた。

「命だけは大事にな。」

そう言い残し、自分の仲間の元へ戻っていった。


◇◇◇


受付に向かう。

「探索者カードをお願いします。」

カードを端末へかざす。


Eレート 神代蓮


「初回入場ですね。」

受付の女性は慣れた様子で説明を始めた。

「第一ゲヘナは初心者向けですが、ゴブリンやホーンラビットなどの魔物が出現します。」

「はい。」

「異変を感じたら非常用転移石を使用してください。」

手のひらサイズの水晶を受け取る。

「これを砕けば入口まで転移できます。ただし支給は一度きり。それと、非常用転移石はゲヘナに入った持ち物以外は全て消滅します。」

「分かりました。」

説明を終えると、目の前の巨大なゲートがゆっくりと開いていく。

中から冷たい風が吹き抜けた。

蓮は小さく息を吸う。

(行くか。)

一歩踏み出した瞬間。

世界が反転した。


◇◇◇


気付くと、そこは深い森だった。

空は薄暗く、木々はどこまでも続いている。

「ここが……ゲヘナ。」

現実世界とは明らかに違う空気。

魔力なのか、身体が少し軽い。

蓮は腰の剣を静かに抜く。

祖父から受け継いだ愛用の片手剣。

探索者用に作られた祖父が現役の時に使っていた片手剣だ。

そして、意識を集中させる。

「《魔法盾(アイギス)》。」

ブォン――。

淡い光が集まり、透けてはいるが、一枚の盾が目の前に現れた。直径は約六十センチほどで、表面には見たことのない紋様が刻まれている。

触れてみると金属のような硬さがありながら、不思議と重さを感じない。

(思ったより扱いやすい。)

腕を振ると、盾も意思に合わせて滑らかに動く。

手の甲に装着する事もできれば、手のひらの前で浮かべることもできた。

「なるほど。」

「操作は簡単そうだな。」

その時だった。

ガサッ。

草むらが揺れる。

蓮は反射的に剣を構えた。

茂みから現れたのは、小柄な緑色の魔物。

赤い目。

鋭い牙。

錆びた短剣を握っている。

「ゴブリン……!」

探索者なら誰もが最初に戦うと言われる魔物。

だが、本物を前にすると威圧感が違う。

ゴブリンは蓮を見つけると、不気味な笑みを浮かべた。

「ギィッ!」

叫び声と共に一気に距離を詰めてくる。

陸上部より少し遅いぐらい速度だ。

(落ち着け。)

蓮は前へ踏み込むことなく、魔法盾を操作した。

ガンッ!!

ゴブリンの攻撃が盾に弾かれる。

「ギッ!?」

体勢を崩した一瞬。

蓮の身体はすでに動いていた。

祖父に何千回と叩き込まれた剣術。

最短最速の一閃。

ザシュッ!!

鮮血が舞い、ゴブリンの身体が崩れ落ちる。

「……倒した。」

人生で初めて魔物を倒した。

しかし、不思議と恐怖はなかった。

むしろ蓮が驚いたのは別のことだった。

(今の盾……)

ただ防いだだけではない。

衝撃を受けた瞬間、ゴブリンの身体が仰け反っていた。

まるで盾自体が衝撃を反射したかのように。

「もしかして……。」

蓮の瞳に、初めて確かな期待が宿る。

《魔法盾》は、本当に「守るだけ」のスキルなのか。

その答えを確かめるように、森の奥から次々と魔物の気配が近づいてきた。

盾は反射のような使い方もできるそうです…


誤字脱字等御座いましたら指摘お願いします!

続きが気になる!面白い!と思ってくださったら評価お願いします。励みになりますm(_ _)m

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