ライセンス登録
前回の軽いおさらい
スキル《魔法盾》だった蓮は帰路につく。
会場を後にした蓮は、諦めるには早いと思いつつもどこか重い足取りで市役所を出た。
六月の暖かな風が頬を撫でる。
だが、その心は晴れない。
「魔法盾、か……」
スマートフォンを取り出し、探索者協会が公開しているスキルデータベースを開く。
検索欄に『魔法盾』と入力するが──
該当するスキルはありません。
「……やっぱりか。」
未知のスキル。
本来なら喜ぶべきことなのかもしれない。
しかし、周囲の反応を見れば期待などできない。
スキルには大きく分けて三種類ある。
攻撃系・支援系・生産系。
そして《魔法盾》は、どれにも当てはまらない曖昧な能力だった。
「お兄ちゃん!」
振り返ると、美咲が駆け寄ってくる。
「お疲れ様!」
「美咲か、早かったな。」
「うん! 気になって待ってた!」
美咲は期待に満ちた瞳で尋ねる。
「どんなスキルだったの?」
「……魔法盾。」
「え?」
「盾を作るスキルらしい。」
少しだけ沈黙が流れる。
普通なら気まずい空気になるところだが、美咲は満面の笑みを浮かべた。
「かっこいいじゃん!」
「そうか?」
「だってお兄ちゃん剣道やってたし、盾があれば騎士みたい!」
「そんな簡単な話じゃない。」
「でも、お兄ちゃんなら絶対使いこなせるよ!」
その言葉に、蓮は思わず笑ってしまう。
家族だけは、どんな結果でも信じてくれる。
それだけで少し気持ちが軽くなった。
◇◇◇
帰宅すると、父と母も仕事を切り上げて待っていた。
「おかえり、蓮。」
「結果はどうだった?」
蓮は隠すことなく答える。
「《魔法盾》だった。」
一瞬だけ空気が止まる。
しかし父は静かに頷いた。
「そうか。」
それだけだった。
「がっかりしないの?」
蓮が尋ねると、父は笑う。
「スキルが人生を決めるわけじゃない。」
「でも探索者は……」
「確かに有利不利はある。だが、最後に強くなるのは努力を続けた人間だ。」
母も優しく微笑む。
「蓮は昔から諦めなかったでしょう?」
「……。」
「だから、お母さんは心配してないわ。」
家族の言葉が胸に染みる。
蓮は改めて決意した。
「俺、一度ゲヘナへ行ってみる。」
「いきなりか?」
「このスキル、本当に弱いのか自分で確かめたい。」
父は少し考え、
「まずは探索者登録を済ませろ。」
そう言った。
「初心者向けゲヘナなら、協会の監視もある。無茶だけはするな。」
「分かった。」
◇◇◇
翌日。
蓮は探索者協会・名古屋支部を訪れていた。
巨大なガラス張りの建物には、多くの探索者が出入りしている。
全身を鋼鉄の鎧で固めた男。
杖を背負った女性。
巨大な戦斧を軽々と担ぐ青年。
誰もが自信に満ちた表情だった。
「今日から俺も探索者か。」
受付で登録を済ませると、一枚のカードが手渡される。
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探索者ライセンス
名前:神代 蓮
年齢:18
レート:E
スキル:《魔法盾》
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「初めての方ですね。」
受付の女性が説明を始める。
「Eレート探索者は第一ゲヘナのみ入場可能です。」
「はい。」
「初心者向けですが、死亡事故は毎年発生しています。決して無理はしないでください。」
「分かっています。」
説明を受け終えた蓮は、建物を出ようとして足を止めた。
ロビーの巨大モニターに、一人の探索者が映し出されていたからだ。
『本日、国内三人目となるSSSレート探索者が誕生しました。』
歓声が響く。
画面に映るのは、黒いロングコートを羽織った青年。
年齢は二十代前半ほど。
圧倒的な存在感に、誰もが目を奪われる。
「SSS……。」
探索者の頂点。
世界中が憧れる存在。
蓮はその映像を見つめ、小さく呟いた。
「いつか俺も、あそこまで行く。」
笑われてもいい。
ハズレスキルと呼ばれても構わない。
自分の可能性は、自分で証明する。
そう胸に誓った蓮は、探索者協会を後にする。
そして翌朝。
人生初となるゲヘナ攻略へ向かうため、名古屋第一ゲヘナの入口へと足を踏み入れるのだった。
――ここから、《魔法盾》の伝説が始まる。
ゲヘナではどんな出会いが待っているのでしょうか……
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