届いた依頼
学校の話が多かったのでそろそろ探索者としても再度活動再開
朝のホームルームが終わり、一時間目までの短い休み時間。
「そういえば蓮君。」
一条が机に頬杖をつきながら声を掛ける。
「探索者って、学校がある日は毎日活動してるの?」
「毎日ってわけじゃないよ。」
蓮は教科書を取り出しながら答えた。
「危険だから、無理はしないようにって協会からも言われてるし。」
「なるほど。」
「休日か、授業が早く終わる日に行くことが多いかな。」
「へぇ。」
一条は興味深そうに頷く。
「ちゃんと考えてるんだね。」
「当たり前だよ。」
蓮は苦笑する。
「探索者って、命懸けだから。」
その一言に、一条の表情がほんの少しだけ曇った。
「……そうだよね。」
小さく呟く声は、どこか実感がこもっていた。
だがすぐに笑顔へ戻る。
「でも、無茶はしちゃ駄目だからね。」
「分かってる。」
その返事を聞いて、一条は安心したように微笑んだ。
◇◇◇
昼休み。
いつもの四人で屋上へ向かう。
青空の下、ベンチに腰掛け、それぞれ弁当を広げる。
「そういやさ。」
翔太が唐揚げを頬張りながら口を開いた。
「探索者って依頼とか受けるんだろ?」
「うん。」
「初心者でも?」
「Eレートでも受けられる依頼はあるよ。」
蓮は思い返すように答えた。
「採取系とか、第一ゲヘナの巡回補助とか。」
「へぇー。」
翔太は感心したように頷く。
「テレビで見るのは派手な戦闘ばっかだから、もっと大変なのかと思ってた。」
「地味な仕事も結構多いよ。」
「そうなんだ。」
夏鈴も興味深そうに聞いていた。
「じゃあ探索者って、公務員みたいな仕事もあるんだね。」
「協会から依頼されることもあるしね。」
そんな何気ない会話が続く。
◇◇◇
放課後。
「じゃあ俺、部活!」
翔太が元気よく教室を飛び出す。
「また明日。」
夏鈴も図書室へ向かっていった。
蓮は鞄を持ち、一条へ視線を向ける。
「今日は探索者協会に寄るから、一緒には帰れないかな。」
「そっか。」
一条は少し残念そうに笑った。
「じゃあ気を付けてね。」
「ありがとう。」
二人は校門で別れた。
◇◇◇
探索者協会支部。
夕方ということもあり、ロビーには探索者たちが行き交っている。
受付へ向かうと、見覚えのある女性職員が笑顔で迎えてくれた。
「神代さん、こんにちは。」
「こんにちは。」
「ちょうど良かったです。」
職員は端末を操作し、一枚の資料を取り出す。
「神代さん宛てに依頼が届いています。」
「僕に?」
蓮は目を丸くした。
探索者登録をしてまだ間もない。
個人宛の依頼など来るとは思っていなかった。
「はい。」
資料にはこう書かれていた。
《第一ゲヘナ・定期調査依頼》
「定期調査?」
「第一ゲヘナの一部区域で魔物の出現数に少し変化が見られています。」
職員は説明を続ける。
「危険度は低く、Eレート以上なら受注可能です。」
「討伐というより、巡回が中心ですね。」
蓮は資料へ目を通した。
単独でも受注可能。
報酬は三万円。
半日程度の任務。
初心者向けとしては悪くない内容だった。
「受けます。」
即答だった。
第二ゲヘナでの特例昇格試験まで、まだ時間がある。
経験は少しでも積んでおきたかった。
「ありがとうございます。」
職員は微笑みながら端末へ入力する。
「出発は明日の午後以降ならいつでも大丈夫です。」
「分かりました。」
受付を終えた蓮は資料を端末に転送してもらい鞄へしまった。
(まずは第一ゲヘナで経験を積もう。)
焦る必要はない。
一歩ずつ前へ進めばいい。
そう自分に言い聞かせながら協会を後にした。
◇◇◇
その頃。
駅前の書店。
一条恵は一冊の文庫本を手に取りながら、スマートフォンへ視線を落としていた。
画面には探索者協会の通知。
『神代蓮 第一ゲヘナ調査任務 受理』
それを見ると、一条は小さく笑う。
「やっぱり受けたんだ。」
予想どおりだった。
蓮なら、安全な依頼でも必ず経験を積もうとする。
昔から変わらない性格だ。
「少しだけ様子を見に行こうかな。」
そう呟くと、本を棚へ戻す。
その笑顔には、幼なじみを見守る優しさと、まだ誰にも話していない秘密が静かに宿っていた。
翌日。
蓮にとって初めての正式な協会依頼が始まろうとしていた。
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