過去
前回のおさらい
探索者である事を忘れ学校を満喫する神代蓮。
その夜。
蓮は夕食と風呂を済ませ、自室のベッドへ倒れ込んだ。
「疲れた……。」
探索者協会での実力測定。
トップクランからの勧誘。
そして突然現れた転校生、一条恵。
ここ数日で起きた出来事とは思えないほど濃い時間だった。
「結局、一条さんって何者なんだろう。」
そう呟くと、自然と眠気が押し寄せてくる。
目を閉じると、意識はゆっくりと夢の中へ沈んでいった。
◇◇◇
眩しい夏の日差し。
小さな公園。
まだ幼い男の子と女の子が楽しそうに遊んでいる。
「…くん、待ってー!」
茶色にも見える明るい髪を揺らしながら笑う少女。
男の子は振り返り、大きく手を振る。
「早くおいで!」
二人は笑い合いながら走っていく。
その光景はどこか懐かしく、温かい。
シーンが飛び、景色が白く霞み始めた。
少女が何かを言っている。
だが声は聞こえない。
『――約束、だからね。』
その声だけが聞こえた瞬間。
蓮は目を覚ました。
「……夢?」
時計を見る。
午前五時半。
まだ目覚ましが鳴る前だった。
「なんだったんだ……今の。」
内容はほとんど思い出せない。
ただ、小さな女の子と遊んでいたような気がする。
「昔の記憶……かな。」
首を傾げながら支度を始めた。
◇◇◇
2時間後。
住宅街の一角。
一条恵は制服姿で窓の外を眺めていた。
手には古びた写真が一枚。
そこには幼い男の子と女の子が笑顔で並んで写っている。
一条は写真を優しく撫でる。
「昨日は少しでも思い出してくれたかな。」
嬉しそうに微笑む。
「でも、まだ無理に思い出さなくていい。」
そう呟くと、大切そうに写真を鞄へしまった。
「あの約束は、今度こそ私が守るから。」
誰にも聞こえない小さな独り言。
その瞳には、再会を喜ぶだけではない強い決意が宿っていた。
◇◇◇
その日の登校中。
通学路で偶然、蓮と一条が顔を合わせる。
「おはよう、蓮君。」
「あ、おはよう。」
自然に並んで歩き始める二人。
すると一条が公園の方を見て、ふと立ち止まった。
「懐かしいな……。」
「え?」
「ブランコ。」
公園の隅には、小さなブランコが二つ並んでいた。
一条はどこか懐かしそうに微笑む。
「昔ね、よく遊んだんだ。」
「そうなんだ。」
蓮も何気なくブランコを見る。
その瞬間。
目の奥がわずかに痛んだ。
ほんの一瞬だけ。
茶色の髪の小さな女の子が笑っている姿が頭をよぎる。
「……?」
だが次の瞬間には消えていた。
「どうしたの?」
「いや……何でもない。」
蓮は首を振る。
一条はそんな蓮を見つめ、誰にも気付かれないように小さく微笑んだ。
春の終わりを告げる風が通学路を静かに吹き抜けていった。
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