規格外の評価
溜め込んでたデータが吹き飛んだので、話が追いついてしまうと、2話、なんなら1話投稿になるかもしれません……(頑張って書いていきます。)
「神代君。」
実力測定終了から三十分後。
蓮は協会本部の応接室へ案内されていた。
広い部屋の中央には長机。
その向こう側には新人育成課の職員だけでなく、見覚えのある顔も並んでいる。
佐伯剛志、そして模擬戦の相手だった相良恒一。
さらにスーツ姿の男女が数名。
ただならぬ空気だった。
「座ってください。」
促されるまま席へ腰掛ける。
蓮は思わず背筋を伸ばした。
「まずは実力測定お疲れ様でした。」
育成課課長が穏やかに微笑む。
「結果をお伝えします。」
机の上に一枚の資料が置かれた。
そこには今回の測定結果がまとめられていた。
――――――――――
神代蓮
レベル:76
身体能力:A+
魔力量:測定不能
スキル:ユニーク判定
模擬戦評価:SSS
総合評価:保留
――――――――――
「……保留?」
蓮はそこに引っ掛かった。
課長は苦笑する。
「本来ならここで正式レートを決定します。」
「ですが、あなたの場合は前例がありません。」
「前例?」
「ええ。」
課長は資料をめくった。
「通常、新人探索者のレベルは五から十程度。」
「身体能力もEからD相当です。」
「しかし神代君は違う。」
佐伯が腕を組む。
「率直に言う。今のお前は普通のBレートより強い。」
蓮は思わず目を見開いた。
「そんな……。」
「謙遜じゃなく事実だ。」
相良が口を開く。
「模擬戦では俺も多少加減した。」
「だが最後の《断裂一閃》は新人相手に使う技じゃない。それを正面から受け切った。」
静かな声だった。
だが、その重みは十分伝わる。
「だから協会としては判断が難しい。」
課長が続ける。
「レベルだけならB。」
「魔力量はS以上。」
「スキルは解析不能。」
「総合評価は未知数。」
「そこで……。」
課長は一枚の書類を差し出した。
そこには大きくこう書かれていた。
【特例昇格試験】
蓮は思わず読み上げる。
「特例……昇格?」
「はい。」
「通常は何ヶ月、何年もかけて実績を積み、レートを上げます。しかし神代君の場合、現状のEレートでは活動制限が多すぎる。」
確かにそうだ。
今のままでは第一ゲヘナしか入れない。
特殊個体のブラックホーンウルフを倒した今となっては明らかに不自然だった。
「来月。」
課長が静かに言う。
「第二ゲヘナで実地試験を受けてもらいます。」
部屋の空気が変わる。
第二ゲヘナ。
第一ゲヘナより格段に危険な場所だ。
「合格した場合…神代君をBレートへ特例昇格させます。」
蓮は少し驚いた…が。
「受けます。」
迷いはなかった。
課長も満足そうに頷く。
「ありがとうございます。」
その瞬間だった。
コンコン。
応接室の扉がノックされる。
「失礼します。」
若い職員が慌てた様子で入ってくる。
「課長……。来ました。」
「……もうか。」
課長が小さくため息を吐いた。
「神代君。」
「はい?」
「ここから先は覚悟してください。」
意味が分からなかった、だが次の瞬間、その意味を理解することになる。
扉が開いた。
一人、二人と次々と部屋へ入ってくる。
胸元に輝くクランエンブレム。
テレビで何度も見たことがある。
日本有数のトップクラン。
《フェンリル》
《ヴァルハラ》
《オリオン》
《白銀騎士団》
誰もが知る有名クランの代表者たちだった。
蓮は固まる。
(え……?)
フェンリルの代表が笑顔で名刺を差し出す。
「初めまして。」
「神代君。」
「ぜひ一度、うちのクランに来てほしい。」
直後。
「待て。」
ヴァルハラの代表が割って入る。
「先に声を掛けたから優先とは限らない。」
「条件ならこちらの方が上だ。」
さらに別の代表も口を開く。
「神代君。」
「君には専属育成チームを用意できる。」
「いやいや。」
「うちなら――」
次々飛び交う勧誘。
蓮は完全に思考停止していた。
(なんでこんなことに……)
佐伯だけが面白そうに笑っている。
「だから言っただろ。嫌でも分かるって。」
蓮は頭を抱えたくなった。
そして同じ頃。
本部の廊下。
銀髪の少女は窓際に立っていた。
その手には一枚の資料。
表紙には神代蓮の名前。
少女は静かに微笑む。
「やっぱり面白い。」
その赤い瞳が細められる。
「早く会いたいな。」
誰にも聞こえない声が静かに消えた。
そして運命の歯車は、さらに大きく動き始める。
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