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前回おさらい
無事に退院し、佐伯から助言をもらう。
探索者協会を後にした蓮は、佐伯の車で自宅近くまで送ってもらっていた。
「ここまでで大丈夫です。」
「そうか。」
車が住宅街の前で止まる。
蓮はシートベルトを外し、佐伯へ頭を下げた。
「本当にありがとうございました。」
「気にするな。」
佐伯は笑いながら腕を組む。
「困ったことがあったら《グランツ》を頼れ。」
「はい。」
「あと一つ。」
佐伯の表情が少し真剣になる。
「お前のことを調べようとする奴が増えるだろう。」
「え?」
「特殊個体をソロ討伐した新人なんて前例がない。」
「クランだけじゃない。企業やスポンサー、記者まで動き始める。」
「……。」
「全部相手をする必要はない。」
「今は自分のことだけ考えろ。」
「分かりました。」
佐伯は満足そうに頷く。
「じゃあな。」
車が走り去っていく。
蓮は深く一礼してから家へ向かった。
◇◇◇
「ただいま。」
玄関を開けると、次の瞬間。
「お兄ちゃん!」
妹の美咲が勢いよく飛びついてきた。
「うわっ!」
危うく倒れそうになる。
「心配したんだから!」
「ご、ごめん。」
「協会から『命に別状はありません』って連絡が来るまで、お母さん泣きそうだったんだよ!」
奥から母・真希が現れる。
目元は少し赤かった。
「おかえり。」
「……ただいま。」
その一言だけで十分だった。
母は安心したように笑う。
「ご飯、温め直すね。」
食卓には蓮の好きなハンバーグが並んでいた。
「豪華だ。」
「退院祝い。」
美咲が得意げに胸を張る。
「それと!」
スマホを差し出してくる。
「お兄ちゃん、ニュースになってる!」
「え?」
画面を見る。
『第一ゲヘナで特殊個体ブラックホーンウルフ討伐』
『討伐者の氏名は非公開』
映っているのはゲヘナ入口や救護班の様子だけ。
名前は伏せられていた。
「よかった……。」
少し安心する。
まだ普通の高校生活は送れそうだった。
しかし、その考えは甘かった。
ピンポーン。
インターホンが鳴る。
「こんな時間に?」
母が玄関へ向かう。
数秒後。
「蓮、お客様よ。」
玄関へ行くと、スーツ姿の男女が立っていた。
二人とも胸には探索者協会のバッジが付いている。
「神代蓮さんですね。」
「はい。」
「探索者協会本部・新人育成課です。本日はご挨拶に伺いました。」
蓮は目を丸くする。
「家まで?」
「ええ。」
女性職員は苦笑する。
「実は昨日から、多くのクランがあなたへ接触しようとしています。」
「……。」
佐伯の言葉通りだった。
「そこで協会として、一つお願いがあります。」
男性職員が名刺を差し出す。
「来週、本部で実力測定を受けていただけませんか。」
「実力測定?」
「はい。」
「正式な能力測定です。」
「レベル。」
「身体能力。」
「魔力量。」
「戦闘技術。」
「スキル適性。」
「すべてを測定します。」
蓮は少し考える。
断る理由はない。
むしろ、自分がどれくらいの強さなのか知りたかった。
「分かりました。受けます。」
その返事に、二人は笑顔になった。
「ありがとうございます。」
「日程などは後日改めてご連絡いたします。」
職員たちは一礼し、そのまま帰っていった。
玄関のドアが閉まる。
美咲が目を輝かせていた。
「お兄ちゃん!テレビみたい!」
「まだ何も決まってないよ。」
苦笑しながら部屋へ戻る。
玄関には、祖父から譲り受けた片手剣が立て掛けられていた。しかしブラックホーンウルフとの戦闘で既にかけていたりしている。静かに剣を手に取る。
「もっと強くならないと。」
ブラックホーンウルフとの戦いは、紙一重だった。
次も勝てる保証はない。
《魔法盾》も、まだ未知の力を秘めている。
蓮の瞳には新たな決意の光が宿っていた。
一方その頃、探索者協会本部では、神代蓮の実力測定に向けて、日本を代表する複数のSレートクランが見学を申請していた。
本人の知らないところで、“Eレートの新人”を巡る動きは、さらに大きくなり始めていた。
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