目覚め、そして初めての討伐報酬
前回のおさらい
探索者パーティーによって無事に帰還したが…
「……ん。」
蓮はゆっくりと目を開けた。
真っ白な天井が視界に映る。
「ここは……?」
身体を起こそうとすると、全身に鈍い痛みが走った。
「いてっ……。」
「無理に起き上がらないでください。」
優しい声が聞こえる。
振り向くと、白衣を着た女性が微笑んでいた。
「ここは第一ゲヘナ管理施設の医務室です。」
「医務室……?」
そこで蓮は意識を失う直前のことを思い出す。
ブラックホーンウルフ。
最後の一撃。
そして、探索者パーティーの姿。
「あ……俺。」
「安心してください。」
女性はカルテを閉じる。
「ブラックホーンウルフは間違いなくあなたが討伐しました。討伐記録も探索者端末へ残っています。」
「よかった……。」
思わず安堵の息が漏れる。
あの死闘は夢ではなかった。
「魔力切れと全身打撲、それに骨折……まだまだありますが、ほとんどは治癒魔法で完治済みです。数時間眠っていました。」
「そんなに……。」
時計を見ると、すでに夜になっていた。
その時、コンコンとノックが響く。
「失礼する。」
入ってきたのは、先ほど自分を助けてくれた大柄な探索者だった。
「目が覚めたか。」
「助けていただいて、ありがとうございました。」
蓮は頭を下げる。
男は豪快に笑った。
「礼を言うのはこっちだ。あのブラックホーンウルフがお前のおかげで街へ出る前に倒された。」
「たまたま勝てただけです。」
「たまたまで勝てる相手じゃねぇよ。」
男は椅子へ腰掛ける。
「自己紹介がまだだったな。」
男は右手を差し出した。
「俺は佐伯剛志。Aレートパーティー《グランツ》のリーダーだ。」
「神代蓮です。」
握手を交わす。
佐伯の手は大きく、長年剣を握ってきた者特有の硬い手だった。
「ブラックホーンウルフの魔石だ。」
テーブルへ黒い魔石が置かれる。
「これは……。」
「お前の戦利品だ。誰も手を付けちゃいない。」
蓮は受け取る。
ずっしりとした重みが伝わる。
「あと、協会から伝言だ。」
「はい?」
「目が覚めたら本部職員が話をしたいそうだ。」
「俺にですか?」
「特殊個体をEレートがソロ討伐した前例なんてないからな。」
佐伯は苦笑した。
「今頃、協会は大騒ぎだろうよ。」
まるでその言葉を証明するように、廊下の外から慌ただしい足音が聞こえてくる。
「失礼します!」
若い職員が勢いよく部屋へ入ってきた。
「神代蓮さんですね!」
「は、はい。」
「体調はいかがですか?」
「もう大丈夫です。」
「それは良かったです。」
職員は安堵すると、一枚の書類を差し出した。
「こちらは今回の討伐報酬の明細になります。」
蓮は書類へ目を通す。
そこには討伐報酬、特殊個体討伐報奨金、魔石買い取り価格などが細かく記載されていた。
そして一番下に書かれた金額を見て、思わず目を疑う。
「えっ……。」
桁を数え直す。
一度、二度。
それでも変わらない。
「いち、じゅう、ひゃく……。」
討伐報酬 5,280,000円
「528万円!?」
思わず大きな声が出た。
「特殊個体ですので。」
職員は笑顔で説明する。
「特殊個体のブラックホーンウルフの魔石は非常に希少です。討伐報奨金も加算されています。」
「こんなに……。」
蓮は言葉を失う。
探索者が夢のある職業だと言われる理由を、初めて実感した。
佐伯は笑いながら肩を叩く。
「命懸けで戦った報酬だ。胸を張って受け取れ。」
蓮は黒い魔石を見つめる。
この一日で人生は大きく変わった。
ハズレスキルだと思われた《魔法盾》。
その力で初めてのゲヘナを生き抜き、特殊個体まで討伐した。
だが蓮はまだ知らない。
この討伐記録が探索者協会だけでなく、多くの有力クランへ送られ、“神代蓮”という名前が少しずつ全国へ広がり始めていることを。
そして、その知らせは翌日、蓮の高校にも届くことになるのだった。
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