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ユーノとレスファート同様、リディノとジュナの接近に、リディノの付き人、ジノ・スティルも不安なものを感じていた。
(姫さま……一体何を話されている?)
リディノは誰かも好かれ愛され、どこへ行っても話しかけられ微笑みかけられる。ミダス公邸を訪れる視察官達も例外ではなく、訪問の際にリディノとことばを交わしていくのはよくあること、そう自分に言い聞かせながら、一方で常ならぬ状況にもジノは気づいている。
(何度も何度も、姫さまからジュナ・グラエティアスに話しかけられている)
それは自分の幼い嫉妬から来るのかも知れない、と自分を諌めても見たが、胸に巣食った鈍色の不安は日増しに大きくなるばかりだ。
しかも、いつもならば、リディノはいろんな相手と話した内容を、物語のようにジノに話して楽しむものだが、ジュナとの会話はただの一度もジノに話してくれたことがない。
(妙な男だ)
リディノは気づかないだろうが、温かな環境で恵まれて育っていないジノには、ジュナの眼の光が気になって仕方がない。きっとかなりの野心家で自信家だ。自分の選ぶ手立てが最高のものだと信じて疑わないし、それを妨げられるのを何よりも不愉快に思う男だ。
なのに、ジュナはその鋭さを一度を見せないし、その手の野心を満たすような進言や提案にも一切関わらない。お姫様育ちのリディノの通り一遍の恋愛論、知りもしない男の気持ちの揺れを思い込みで語っても、如才なく同意を示しリディノの賢明さを褒め讃えるのが引っ掛かる。
何より、才能からも性格からも、リディノのような子ども子どもした女を相手にするはずがない男なのに、リディノをひたすら賛美し敬慕しへりくだっている様子が気に障る。
(ミダス公の娘として姫さまを狙っているなら、まだいい)
そんな男は掃いて捨てるほどいるし、少しでもそんな動きをするならすぐにジノが排除すれば済む話だ。
(どうもそれだけでは、ないような)
リディノを単なる手がかりとして、彼方の高みに狙いを定めているような感覚さえある。彼方の高み、それは他ならぬラズーン中心部、『太皇』おわす『氷の双宮』そのものへの野望。
(また、あの方まで巻き込まねばよいが)
思わず案じたのはユーノのことだった。
(ようやく一時休まれているのに……)
何気なく考え、はっとして思わず顔が熱くなった。
(いけない…姫さまのことをご心配しなくては)
最近、時々自分がリディノのことよりユーノのことを気にかけているのに気づいてうろたえることが多い。おかしなことだと思い直すそばから、ジノは考えている。
(そうだ、一度ご相談してみよう。音に聞こえた『星の剣士』(ニスフェル)殿なら、ジュナについて何か気づかれているかもしれないし)
迷う心に光明を見つけた気になったが、そこで再びユーノが病み上がりであることを思い出した。
(今こんなことをお耳に入れては……)
ユーノのことだ、きっとまた起き出してあれこれと動いてしまうに違いない。
(もう少し…もう少し待ってみよう)
ジノは小さく溜め息をついた。
(せめて、アシャ様がお戻りになられてから)
その判断を、後々まで後悔することになるとは、さすがのジノも思わなかった。




