第5.5話:手の中の銀貨と、恐るべき利益率
翌朝、俺は宿のベッドの上で、昨夜の少女が置いていった銀貨を太陽の光にすかしていた。
窓から差し込む朝日に照らされて、銀色の硬貨がキラキラと美しく輝く。
「……本当に銀貨だよな。夢じゃなかった」
昨日の売上を整理しつつ、改めて手書きのノートにペンを走らせる。
元サラリーマンの血が騒ぐというか、数字をきっちり合わせておかないとどうにも落ち着かないのだ。
【第ニ日目の収支報告】
■ 売上
ヤキトリ(ねぎま)150本:鉄貨450枚(大銅貨4枚と銅貨5枚分)
お忍び美少女からの『月見つくね』代:銀貨1枚(鉄貨1,000枚分=約10,000円相当)
売上合計:銀貨1枚、大銅貨4枚、銅貨5枚(約14,500円相当)
■ 経費(仕入れ)
ホーンチキンのモモ肉(約5キロ):銅貨15枚(約1,500円相当)
ネギに似た野菜、生卵、その他:鉄貨10枚(約100円相当)
※仕立て屋の服代(大銅貨3枚)と宿代(大銅貨1枚)は生活費として除外
経費合計:約1,600円相当
■ 差引利益(純利益)
約12,900円相当の黒字!!
「日給で一万二千円以上……! 物価が安いこの世界なら、これだけで半月は余裕で暮らせるぞ……」
改めて、銀貨の破壊力が凄まじすぎる。
1本30円の焼き鳥をひたすら焼いて手に入れた地道な売上が約4,500円。それに対して、余り肉で作った試作品のつくね2本で、なんと10,000円。
もちろんこれは少女からの「お礼」という名の超破格のチップだが、調味料無限&時間が停止する超鮮度保存というチートスキルがなければ、生卵を添えた『月見つくね』なんて絶対に提供できなかった。
あの神スキルたちが、このとんでもない利益を連れてきてくれたのだ。
「だけど、あの女の子は一体何者だったんだ……?」
普通の旅人や一般市民が、焼き鳥2本に銀貨をポンと出すはずがない。
フードの奥から覗いた、サファイアのような吸い込まれるほど綺麗な瞳。そして、浮世離れした上品な仕草。
「……まあ、深く考えるのはよそう。路地裏の屋台に、客の素性を詮索するなんて野暮な真似は似合わないからな」
俺はコイン袋をしっかりと腰に結びつけ、立ち上がった。
財布は一気に潤ったが、ここで怠けたら商売人としておしまいだ。今日もあの香ばしい匂いを求めて、お腹を空かせた客たちが路地裏にやってくる。
「よし。今日はモモ肉だけじゃなく、つくね用の挽き肉も仕入れるか。昨日買えなかったやつらのためにも、気合入れて焼くぞ!」
俺は宿の部屋を出て、活気あふれる朝の街へと繰り出した。




