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異世界転移した元社畜、無限の調味料チートと屋台飯で第二の人生を味わい尽くす  作者: ヤミラミ


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第37話:黄金の衣と、夜の酒場を狂わせる唐揚げ

夕暮れ時。港町バザルタの空がオレンジ色から深い群青色へと染まり始める頃、街の空気は昼間とは打って変わった「熱気」を帯び始める。


過酷な肉体労働を終えた港の男たち、商談を終えた商人、そしてダンジョンや森から生還した冒険者たちが、一日の喉の渇きと疲れを癒やすために酒場へと繰り出す時間だ。


「師匠……今日の夜の営業、いつもの焼き鳥に加えて『新メニュー』を出すんですよね?」


屋台のカウンター奥で、カイが仕込みの手を動かしながら尋ねる。


「ああ。昼のランチ需要(丼もの)は完璧に掴んだ。だが、夜のバザルタで一番金が落ちるのは『酒の席』だ。酒が進んで止まらなくなる、圧倒的な『つまみ』を投入する」


修也の目の前に用意されているのは、今朝『ギルバート農園』から届いたばかりの新鮮なコッコ(鳥風魔物)のモモ肉。適度に身が引き締まり、溢れる肉汁と旨味が詰まった極上の部位だ。


修也はそれを、一口では少し大きく感じるゴロリとした大ぶりに切り分けていく。


「カイ、唐揚げの命は『下味』と『衣の食感』だ。異世界の揚げ物は、ただ衣をつけて揚げるだけだから肉に味が染みてないし、衣が重い。だが、肉の芯まで『旨味のタレ』を吸わせたらどうなると思う?」


「肉の……芯まで……!? そんなことできるんですか!?」


「見とけ」


修也は胸ポケットから、チート能力【調味料自動生成】によって生み出した【特製・極旨塩ニンニクダレ】を取り出した。


精選された海塩のキリッとした旨味。

すりおろしたニンニクのガツンとくる強烈なパンチ。

隠し味の胡麻油の芳醇な香りと、生姜の清涼感。

そして熟成された和風出汁のコク。


それらが完璧なバランスで合わさった琥珀色のタレを、切り分けた大量の肉へと一気に回しかける。


――ボウルの中で、修也の手が力強く動き出す。


グッ、グッと力を込め、肉の繊維の奥深くまでタレを揉み込んでいく。

肉がタレをグングンと吸い上げ、表面が艶やかなタレの光沢を帯びていく。


「このまま15分置く。肉の細胞一つ一つにニンニク塩ダレが染み渡ったら……次に『衣』だ」


修也はボウルに【片栗粉】と【小麦粉】を独自の黄金比率(片栗粉多めのザクザク仕様)で混ぜ合わせた粉を投入した。

全体に軽く粉を纏わせると、肉の表面に白い雪が降ったようなダマができる。


「サクサク感を極限まで高めるなら、この片栗粉のまぶし方が肝なんだ。いくぞ、油の海へ!」


大鍋の中で、170度に熱せられた黄金色の油。

そこへ、下味の染み込んだ肉が次々と投げ込まれた。


―――――シュワワワワッッッッ!!!!!!


けたたましい揚げる音が屋台の周囲に響き渡る!

油の中で弾ける泡の音。一瞬遅れて、熱せられたニンニクと胡麻油、そして香ばしい肉の焦げる匂いが、爆風のように路地裏へと広がっていった。


「〜〜〜〜〜〜っっっ!??!??!」


カイが思わず鼻をひくつかせ、両手で自分の胃袋を押さえた。


「な、なんですかこの匂い……!! 焼き鳥のタレとも、生姜焼きとも違う……ガツンと鼻を突き抜けるニンニクと胡麻油の匂いが……っ! 匂いだけで唾液が溢れて止まりません!!」


「フッ、一度揚げで火を通したら、一度引き上げる。そして余熱で中に火を通し……最後に190度の高熱油で『二度揚げ』だ!」


一気に高温の油に投入し直すと、衣の水気が完全に飛び、表面がカリカリとした綺麗な狐色へと変化していく。


油の音が「パチパチ」と高い甲高い音へと変わった瞬間、修也は網ですくい上げた。


カリッ……ザクッ……!


網の上で踊る、黄金色に輝く『特製・塩ニンニクジューシー唐揚げ』。


仕上げに、チート生成した荒挽き黒胡椒ブラックペッパーをパッパッと振りかけると、あまりにも暴力的で完成された「悪魔の夜のつまみ」が姿を現した。


「よし! カイ、熱々のうちに一つ食ってみろ!」


「は、はいぃっ!! いただきますっ!」


カイはハフハフと息を吹きかけながら、大きな一塊の唐揚げを箸で掴み、ガブリと豪快に噛みちぎった。


サクッッッ……!!!!


静かな仕込み場に、恐ろしいほど鮮烈な「衣の割れる音」が響き渡った。


次の瞬間――


ジュワワワワッッ!!!!


「んんんんんんんんっっっ!!??!???!!!」


カイの口内で、熱々の肉汁が文字通り「噴水」のように弾け飛んだ!


噛んだ瞬間のザクザクとした軽い衣の食感。

そこから溢れ出す、ニンニクと塩ダレが完璧に染み込んだ熱々の肉汁!

噛めば噛むほど肉の旨味が溢れ出し、後味に黒胡椒のピリッとした刺激が追ってくる。


「あつっ! うまっ! 熱いけど美味いっっ!! 師匠、なんですかこれぇぇぇっ! 外はザックザクなのに、中はびっくりするくらい柔らかくてジューシーです……! 下味が中まで染みてて、一口噛むたびにニンニクと塩の旨味が爆発します!!」


「ははは! だろ? そして……ここに合わせるのが『これ』だ」


修也は氷をたっぷり入れた木製のジョッキを取り出すと、チート生成した冷えたシュワシュワの『特製エール(冷やし柑橘ハイボール風炭酸酒)』をなみなみと注いだ。


「マルクさんに頼んで作ってもらった『氷結魔法の魔導具』でキンキンに冷やした酒だ。唐揚げを食ったら、これを流し込む」


カイは言われるがまま、口の中に残る熱い唐揚げの旨味と脂を感じながら、キンキンに冷えたジョッキに口をつけた。


ゴクッ……ゴクッ……ゴクッ……!


「――――――っはぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」


冷たい炭酸と柑橘の爽やかさが、喉を駆け抜ける!

口の中に残っていた唐揚げの濃厚な脂身を、シュワシュワの泡が一瞬でさっぱりと洗い流し、喉奥に最高の清涼感を残していった。


「な……なんなんですかこの組み合わせ……っ!? 唐揚げを食べたら酒が飲みたくなって、酒を飲んだらまた熱々の唐揚げが食べたくなります……! 永遠に終わらない、悪魔の無限ループです……っ!!」


カイが感動と驚愕で興奮を抑えきれずにいると、屋台の暖簾がガバッと威勢よく捲られた。


「おいおいおい兄ちゃん!! なんだこのニンニクと油の凶悪すぎる匂いはよぉ!!」


入ってきたのは、港の船乗りたちのリーダー格である大柄な男・ベックだ。後ろには同じく腹を空かせた荒くれ者の船乗りたちが大勢控えている。


「ベックさん、いらっしゃい。今夜の新メニュー『塩ニンニク唐揚げ』と『キンキンに冷えた柑橘エール』だ。一杯やっていくかい?」


「唐揚げぇ? 揚げ物なんて重くて酒のつまみになんか……」


ベックは言いかけながらも、カウンターに並べられた黄金色の唐揚げを一塊つまみ、口へ放り込んだ。


ザクッ……ジュワッ……!


「――〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!??!?」


ベックの目がハチノスのように見開かれた。


「な、なんだこの衣のザクザク感は!? 中から溢れるニンニクの汁がヤバすぎる……! おい! 兄ちゃん! その冷えてそうな酒を早くくれ!!」


手渡されたキンキンのジョッキを、ベックは一気に干した。


「ぶっはぁぁぁぁぁぁぁッッ!! ぐ、美味ぇぇぇぇええええっっっ!! なんだこの酒の冷たさとシュワシュワは!? 唐揚げと合いすぎて頭がおかしくなりそうだぞ!!」


「お、おいベック! 一人で美味ぇ顔してんじゃねぇ! 俺たちにも食わせろ!」


「兄ちゃん! 唐揚げ10個! いや、20個持ってこい! 酒もだ!!」


後ろにいた船乗りたちが、匂いとベックのリアクションを見て雪崩のように屋台へと押し寄せてきた!


「あいよ! カイ、二度揚げの準備だ! 今夜は揚げて揚げて揚げまくるぞ!」


「はいっ!! 師匠っ!!」


夜のバザルタの街に響き渡る、ザクザクという心地よい揚げ音と、男たちの歓喜の叫び声。


安価な鳥肉を「圧倒的な下味」と「二度揚げの技術」、そして「冷えた酒との相乗効果」で極上のエンターテインメントへと変えた修也。


バザルタの夜の酒場文化を塗り替える『唐揚げ&冷えた酒』の爆発的ブームが、今まさにこの小さな屋台から世界へと広がり始めていた。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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