第24.5話:元営業マンの仕様再定義(デバッグ)と詳細ログ解析
試食会を大成功で終えた夜。
俺は拠点の厨房で、一人静かに羊皮紙のノートを広げていた。
前世のシステム営業時代、プロジェクトが大きく動く前には必ず「要求仕様の再確認」と「スケジュールの進捗確認」を行っていた。異世界でビジネス帝国を築く今も、その習慣は変わらない。
「まずは、今回の最大の発明……【無限の調味料チート】のバグ利用、もとい仕様の再定義についてだ」
俺はペンを走らせ、脳内システムの挙動を整理する。
【無限の調味料チート】の最新仕様書(Ver. 2.0)
基本ルール:
前世(現代日本)で、俺自身が「味と存在を明確に知っている調味料」を無限に取り出せる。
今回判明した仕様:
単一の原材料(醤油、塩、みりん等)だけでなく、現代日本において「市販の調味料」としてパッケージされ、棚に並んでいる複合品も対象に含まれる。
出力可能が確認されたもの:
赤い缶のカレーパウダー、固形カレールウ、ウスターソース、マヨネーズ、めんつゆ、ガラスープの素、豆板醤など。
制限事項(仕様制限):
「俺が味を知らないもの」や「現代日本で『料理(完成品)』と定義されるもの」は出せない。
カツ丼やラーメンそのものは出せないが、「カツ丼のタレ」「ラーメンのスープの素」なら調味料の範疇として出力可能。
「よし、チートの出力限界は完全に把握した。これなら今後の商品開発(R&D)はいくらでも応用が効く」
次に、俺はもう一つの重要なデータ――「この世界に転移してからの詳細な業務日誌」を見返す。話数ごとのタイムラインをここで正確に整理しておかないと、今後の店舗拡大のスケジューリングに狂いが生じるからな。
佐藤修也の異世界業務ログ(第1話〜現在)
【1日目(第1話〜第3.5話)】: 転移。森でガルツ達に救われ、バザルタへ。
【2日目(第4話〜第5話)】: 商業ギルド登録&屋台ビジネスの構想策定。
【3日目(第5.5話〜第6話)】: 初出店準備と仕込み。
【4日目(第6.5話〜第8.5話)】: 屋台オープン。「焼き鳥&タレ」で口コミが爆発。
【5日目(第9話〜第11.5話)】: 売り上げ爆増、リピーターの固定客化。
【6日目(第12話)】: 営業拡大に伴う資材調達とオペレーション改善。
【7〜8日目(第13話〜第13.5話&間話)】: 仕入れルートの安定化と冒険者たちとの絆。
【9日目(第14話〜第14.5話)】: レオンハルト商会のマルクと接触、フランチャイズ打診。
【10日目(第15話〜第16話)】: 商会との交渉&契約締結。
【14日目(第17話)】: (※数日後)エリス令嬢との遭遇と公爵家バッキングの獲得。
【17日目(第17.5話)】: (※数日後)提携店舗の改修とシステム導入。
【18日目(第18話〜第19話)】: FC1号店の開店と大繁盛。
【19日目(第19.5話〜第20話)】: 飲食店業界の重鎮たちの嫉妬と嫌がらせの兆候。
【22日目(第21話)】: (※数日後)利益爆発の収支チェックと『黄金の鹿亭』の本格妨害。
【24日目(第22話)】: (※数日後)玉ねぎ買い占め発生。カレー開発に着手するもスパイスで難航。
【25日目(第23話)】: チートの仕様再定義(カレーパウダー発見)と試作成功。
【26日目(第24話〜第24.5話・本日): 公爵邸での試食会大成功&明日へのシミュレーション。
「よし……! 転移してちょうど26日目か。数日の準備期間を挟みつつも、ビジネスのスピード感としては完璧な推移だ」
そして、明日(27日目)はいよいよ待ちに待った「金曜日」。
今回の『海軍カレー』の最大の強みは、その圧倒的な低オペレーションコストだ。
お米は事前に大釜で炊いて保温。ルーも前日に寸胴鍋で大量に仕込んでおける。
注文が入れば、皿にご飯をよそってルーをかけるだけ。わずか15秒で提供可能なファストフード。
「客がどれだけ並ぼうが、俺は一切手を止めることなく、メインの『焼き鳥』を炭火でジューシーに焼く作業だけに全リソースを集中できる。一人で大行列を捌き切る、現代の効率化システムの見せ所だ」
飲食店業界の老害ども。
お前たちが必死に買い占めた玉ねぎを横目に、俺は明日、バザルタの街をカレーの香りで支配してやる。
ノートを閉じ、俺は不敵に笑って明かりを消した。
いつもご愛読ありがとうございます!
先ほど第32話が未投稿のまま飛ばされていたことを確認しました。
展開に違和感を覚えられた読者の皆様には、ご迷惑とお手数をかけしてしまい大変申し訳ございません。
現在は第32話を正しく掲載しております。
話がつながらないと感じられた方は、お手数おかけしますが「第32話」にお戻りいただけば幸いです。
今後はこのようなことがないよう再発防止に努めます。引き続きお楽しみいただければ幸いです!




