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『【毎日更新】異世界転移した元社畜、無限の調味料チートと屋台飯で第二の人生を味わい尽くす』  作者: ヤミラミ


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第18話:店舗化の罠と、次なるグランドデザイン

「……あぶねえ。危うく、前世の固定観念に引きずられて大失敗するところだった」


翌朝、仕込みをしながら俺は冷や汗を拭った。

手元に金貨が増えてくると、どうしても「次は一等地に立派な店舗を構えるか!」という誘惑に駆られる。前世の飲食店ならそれが王道の成長ルートだからだ。


だが、冷静になってビジネスモデルをシミュレーションしてみて、その致命的な欠陥に気づいた。


「俺の最大の強みは、この【創造調理】スキルだ。一瞬で下処理が終わり、仕込んだ食材を『時間凍結』してロスをゼロにし、水も使わず一瞬で洗浄できる。だからこそ、ワンオペの屋台で利益率90%なんていうバグみたいな数字が出るんだ」


もし店舗を構えて、従業員を雇ったらどうなる?

俺の目が届かない厨房で、アルバイトの見習いが仕込んだ肉には、俺のスキル(時間凍結)は乗らない。彼らが使った調理器具は、普通に水と洗剤で時間をかけて洗うしかない。

そこに高額な家賃や人件費という「固定費」が乗っかれば、利益率は一気に普通の飲食店並み(30%前後)にまで急落する。


「自分でハコ(店舗)を持って厨房に引きこもるなんてのは、このチートスキルの一番もったいない使い方だ。俺がやるべきなのは、プレイヤーじゃなく、システム(仕組み)の提供者になることだ」


俺のスキルは、ミニマムな拠点で超高速・ノーリスクで付加価値を生み出す『セントラルキッチン(集中調理場)』として使うのが最も強い。


「自分で店を増やさない。代わりに、バザルタ中の『既存の店』を俺の商品で染め上げる(フランチャイズ化)んだ」


すでに仕込み串の卸売りを始めている『跳ね馬亭』のゲルツさんや、冷え冷えビールを卸しているバルドさんの例が、何よりの証明だ。

俺は自分の屋台(あるいは小さな仕込み専用の部屋)で、スキルをフル稼働させて「絶対に腐らない仕込み串」と「冷え冷えのビール樽」を大量生産するだけ。

あとはそれを周辺の酒場や露店に卸し、彼らに売ってもらい、俺は『システム利用料ロイヤリティ』と『卸値のマージン』を吸い上げる。


これなら、店舗リスクを一切負わずに、売上と影響力を青天井に拡大できる。


「よし、方針は決まった。まずはこの東通り一帯の酒場をすべて俺の“サプライチェーン”に組み込む。そのためには――」


俺が次なる営業資料(提案書)を頭の中で組み立て直していると、屋台の前に、仕込み中にもかかわらず一台の立派な馬車が止まった。

御者台から降りてきたのは、上質な衣服をまとった、いかにも「デキるビジネスマン」といった風貌の男だ。


「失礼、あなたがシュウヤ殿ですな?」


男は慇懃に頭を下げ、一枚の名刺――魔力の刻印が入った高級な銀のプレートを差し出してきた。


「私はバザルタ一の大規模商会、『レオンハルト商会』の幹部でマルクと申します。我が商会の会頭が、今、街を揺るがしている『冷え冷えの麦酒』と『焼き鳥』の噂を聞きつけましてね。ぜひ、その“技術”と“権利”を、我が商会に譲っていただきたいと……。もちろん、金貨100枚(約1,000万円)を下らない、破格の条件をご用意しております」


東通りの小さな路地裏で始まった俺のビジネス。

その爆発的な利益と謎の技術に、ついに街の『巨頭(大資本)』が目をつけ、強烈なアプローチを仕掛けてきたのだった。

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