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『【毎日更新】異世界転移した元社畜、無限の調味料チートと屋台飯で第二の人生を味わい尽くす』  作者: ヤミラミ


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間話:路地裏の地殻変動と、共存のピッチ

「おいおい、最近あの東通りの裏路地、おかしなことになってないか?」

「ああ、あの焼き鳥屋だろ? なんでも、冷たい奇跡の水みたいなエールを出すらしいぜ」


バザルタの朝の市場や酒場では、今やシュウヤの屋台の噂でもちきりだった。

だが、光が強ければ影も濃くなる。シュウヤの店が爆発的に繁盛したことで、割を食った者たちがいた。


大通り沿いにある中堅の酒場『跳ね馬亭』の店主・ゲルツは、午前中の仕込みの間、ずっと苦虫を噛み潰したような顔で帳簿を睨みつけていた。


「クソッ、ここ二日、うちの夜の売上が二割も落ちてやがる……。みんな、あいつの屋台に吸い込まれていきやがって。ぬるいエールじゃ満足できねえだと? 生意気な……!」


さらに、これまで路地裏で細々とぬるい酒を売っていた簡易酒露店のオヤジ、バルドも頭を抱えていた。


「あそこの店主に客を全部持っていかれちまった。うちはただでさえ薄利多売なのに、これじゃ今月を越せるかどうか……。チキショー、ちょっと懲らしめてやるか?」


彼らのような不満を抱えた同業者たちが、シュウヤの「商売あがったり」の原因である屋台を、敵意をはらんだ目で見つめ始めていたのだ。


そしてその日の夕方。

開店準備を進めるシュウヤの前に、腕を組んだバルドら近隣の露店商と、酒場主のゲルツが連れ立って現れた。

周囲の空気がピリッと張り詰める。


「おい、新入り」

バルドが不機嫌そうに口を開く。


「お前が美味いもん出すのは勝手だが、やりすぎだ。お前のせいで、うちの常連もみんなエールを飲みにそっちへ行っちまう。商売あがったりなんだよ。少しは手加減するか、場所を移りな」


ゴロツキのような暴力的な脅しではない。

だが、長年このエリアで商売をしてきた者たちからの、切実でリアルな「営業妨害(圧力)」だった。


しかし、シュウヤは慌てず、むしろ「待っていました」とばかりに穏やかな笑みを浮かべた。

前職のシステム営業で、数々の競合他社や代理店との交渉をまとめてきた彼にとって、これは「潰し合う」局面ではなく、「シェアを分け合う」ビジネスチャンスだった。


「皆さん、お気持ちはよく分かります。実際、私の店だけでビールを捌くのも、体力的に限界を感じていたところだったんです」


「……あん? どういう意味だ?」

ゲルツが眉をひそめる。


シュウヤは懐から、綺麗に整理された提案書(手帳の切れ端)を取り出し、彼らに見せた。


「私の屋台のウリは、あの『冷え冷えの麦酒』と『焼き鳥』です。ですが、うちには席がありません。お客様はみんな立ち飲みで、すぐにジョッキを返さなければならない。ゆっくり飲みたい客層は、本当は皆さんのような腰を落ち着けられる店に行きたがっているんです」


「それは……まあ、そうだが……」


「そこで提案です。バルドさん、もしよければ、私の冷やす技術を施した『冷え冷えのビール樽』を、うちの仕入れ値に少しの手数料を乗せて卸しましょうか?」


「な、なんだって!?」

バルドが目を見開いた。


「うちの店で並んで待つのが嫌な客に、『あっちのバルドさんの店でも、同じ冷たいビールが飲めるよ』と紹介します。うちで焼き鳥を買った客が、バルドさんの店でその冷たいビールを飲みながら食う……どうですか? 持ちつ持たれつです」


「そ、そんな美味い話が……。だが、それじゃお前のビールの売上が減るだろ?」


「いえ、私の屋台だけでは売れる量に限界があります。皆さんのお店に卸すことで、私は『ビールの卸業者』としても利益を得られます。そして――ゲルツさん」


シュウヤは『跳ね馬亭』の店主に向けて微笑んだ。


「ゲルツさんのお店には、うちの『焼き鳥の串』を、焼く前の仕込み済みの状態で、卸値で提供します。冷え冷えビールと、うちの焼き鳥がお店のメニューに加われば、落ちた売上を取り戻すどころか、新しい看板メニューになると思いませんか?」


「なっ……! うちの店に、あの焼き鳥を置かせてくれるのか!?」

ゲルツの目の色が変わった。


焼き鳥のレシピを盗むのは至難の業だし、タレの技術はチートスキルに依存している。彼らが真似しようとしてもできない。ならば、最初から「公式ライセンス(仕入れ先)」として彼らを取り込んでしまった方が、シュウヤにとっても自分で焼く手間を省いて大量に串を売りさばける(利益が出る)のだ。


「敵対して潰し合うより、一緒にこのエリア一帯を『美味い酒と焼き鳥が食えるグルメ街』にして盛り上げた方が、お互いに何倍も稼げます。どうでしょう、この共存の提案は?」


バルドとゲルツは顔を見合わせ、それから驚嘆の混じったため息をついた。


「……お前、本当にただの屋台の小僧か? 恐ろしい商人だな」

「おいおい、これじゃ怒るに怒れねえ。……その話、乗らせてくれ」


こうして、路地裏の暴動になりかねなかった衝突は、シュウヤの鮮やかな「プラットフォーム戦略」によって、一瞬にして『共存共栄のビジネスアライアンス(同盟)』へと変貌を遂げたのだった。

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