第五話:神鳴の残響、命脈の楔
帝都を脅かした上級陰魔女の残滓は、深夜の八咫烏神社にまで昏い影を落としていた。
陸軍の歩兵を児戯のように屠ったあの圧倒的な陰魔術。
その呪詛を浴びた二人の裏巫女の明暗が、境内の月明かりの下で分かれようとしている。
本殿の縁側で、帝都最強の裏巫女・詩織は、月を仰ぎながら大きく紫煙を燻らせていた。
「ふぅ……」と長く深い息が吐き出される。
その瞬間、彼女の雪白の肌の毛穴という毛穴から、体内に残留していたドス黒い陰呪が、清烈な神気とともにシュウシュウと音を立てて蒸発していった。
『自己呪詛解放』。
己の圧倒的な霊的器だけで怨念を強引に噛み砕き、無害な霧へと変えてみせる神技。
詩織は、呪いの毒に一切の正気を狂わされることなく、涼しい顔で大太刀の血を払う。
だが、その詩織が憐れみと焦燥の混じった視線を向ける先「奥の院」の重い扉の向こうでは、もう一人の裏巫女が完全に限界を迎えていた。
「っ、あ、が、あぁ……おのれ、陰魔女……っ!」
本殿一等巫女、お蓮。
彼女には、詩織のような自力での排毒能力は一切備わっていない。
男を知らぬ清らかな肉体である彼女は、怪異を倒し、その怨念を浴びる戦闘の度に、この奥の院へと逃げ込んで、千代による命懸けの浄化を受けなければ生き長らえることすらできない宿命だった。
上級陰魔女から逆流した「男への肥大化した怨嗟と淫らな渇望」は、心臓を直接掴まれるに等しい死の劇薬。
畳に這いつくばるお蓮の白衣ははだけ、汗ばんだ未開発の双丘が、荒い呼吸に合わせて痛々しいほどに波打っている。
お蓮は恐怖に涙を流しながら身悶えを繰り返していた。
このままでは、呪いによって肉体も精神も内側から破裂して死に至る。
その時、神域の襖を激しく押し開けて、最下位の見習い巫女・千代が姿を現した。
昼間の気弱な表情は消え失せ、その瞳にあるのは、お蓮を絶対に死なせないという悲壮なまでの決意。
お蓮が戦いから戻る度に、千代もまた、自らの霊的器が破壊されるリスクを背負いながら、この排毒の苦行に挑み続けている。
これまで幾度となく、数え切れないほどに身体を重ね、お蓮の命を繋ぎ止めてきた二人。
だからこそ、千代はお蓮の肉体のすべてを、どこをどう扱えば毒が抜けるのかを熟知していた。
千代は、処女の誇りをズタズタにされ、涙目で身悶えするお蓮の前にすかさず膝を突いた。
「お蓮様……!
今、今すぐ抜いて差し上げますから……どうか、耐えてください……っ!
いつものように、私に全部預けて……っ!」
「ち、よ……来るな……お前まで、呪いに、呑まれる……っ!」
「嫌です!
お蓮様を死なせるくらいなら、私のみだらな身体ごと、どうなったって構いません!」
千代は躊躇うことなく見習いの上衣を脱ぎ捨て、お蓮の背後にぴったりと跨った。
千代の手が、お蓮の紅い袴の帯を、焦燥に駆られながらきつく引き解いていく。
露わになったのは、大正の雪のように白い、千代以外には一度も誰の手にも触れられたことのないお蓮の秘丘。
その中心は、呪いの熱によってすでに禍々しく充血し、黒ずんだ蜜を溢れさせてひくついている。
千代は自身の指先を、お蓮の最も敏感な蕾へと押し当てた。
快楽を与えるためではない。
お蓮の体内に巣食うドス黒い陰呪を、自身の身体へと「肉体の結合」を通じて強制的に吸い上げるための、必死の霊的作業だった。
何度も重ねてきた記憶が、お蓮の未垢な粘膜を千代の指へと馴染ませていく。
千代の細い人差し指が、深く、躊躇なくその最奥へと潜り込んでいく。
「ひゃ、あ、うぅぅッ!?
熱い、痛い、千代、それ以上は……っ!」
お蓮の背中が弓なりに跳ね上がる。
処女の狭隘な最奥を抉るたび、お蓮の体内からドス黒い陰呪の霧が、千代の指を伝って千代自身の身体へと逆流し始めた。
「く、あぁぁ……っ!」
千代の顔が苦痛に歪む。
お蓮を救うため、千代自身の霊的許容量の限界まで、そのドス黒い怨念を自分の肉体へと吸い込んでいるのだ。
吸い上げた呪いの熱によって千代の下腹部もまた強烈に疼き、自身の快感へと強制変換されていくが、千代は必死に歯を食いしばる。
お蓮の命を繋ぎ止めるため、懐から怪しく明滅する琥珀色の神代の「張形」を掴み取った。
何度も使い込まれ、お蓮の形を覚えているその滑らかな呪具が、処女の狭い門を、一切の容赦なく根元まで一気に突き刺す。
「あ、が、あぁぁぁあああーーーッッ!!」
空を衝くような絶叫。
内側から破裂しそうなほどの結合感と、脳髄を焼き尽くす陰呪の排毒反応に、お蓮の全身が激しく痙攣した。
戦いの度に繰り返されるこの苦痛と狂乱の中で、千代は涙を流し、脂汗を垂らしながら必死に腰を振り、お蓮の聖域から、すべての毒を絞り出すようにして貪り、蹂躙していく。
何度も体を合わせてきたからこそ、最も深い場所へと呪具が届き、お蓮の理性を完全に消し去っていく。
「あほ、ぉ、ちよ、ちよ……私、壊れちゃう、あぁッ!」
お蓮の緋色の瞳は完全に反転し、涙とよだれを流しながら白目を剥いて悶絶する。
極限の調伏の瞬間。
お蓮の最奥から、すべての陰呪が純白の神気へと完全反転し、凄まじい勢いで「聖水」となって畳へと噴き出した。
お蓮は激しく白目を剥いたままガクガクと震え、そのまま千代の腕の中で、完全に脱力して失神した。
千代はお蓮の身体をきつく抱きしめ、激しく肩を上下させながら、自身の内側に溜まった熱い快感を、深い吐息とともに吐き出した。
お蓮の髪を愛おしそうに撫で、その寝顔を見つめながら、千代は消え入りそうな声で呟く。
「……よかった。
お蓮様、今日も、お守りできて……よかった……っ」
帝都の夜の静寂の中、命を懸けた主従逆転の救済の儀式は、二人の狂おしい吐息とともに、静かに幕を閉じた。




