第十一章 お鶴(おつる)
大正の帝都の裏側に君臨する最悪の怪異であり、すべての陰魔女の源流たる存在。八咫烏神社が創立以来、最大の宿敵として畏怖し続けている絶対的な怨念の母体である。
その実態は、明治維新の激動の時代に生きた、一子相伝の古流剣術を極めた天才女剣士であった。
類稀なる武を誇ると同時に、誰もが見惚れるほどの絶世の美女としても知られていたが、敗戦藩の運命と共にその人生は凄惨な結末を迎える。
近代兵器を操る官軍の前に囚われの身となった彼女は、複数の男たちから凄惨な輪姦を受け、その肉体と剣士としての誇りを完膚なきまでに蹂躙された。
最期は息も絶え絶えのまま闇深い井戸の底へと生きたまま投げ捨てられ、孤独と冷気、そして男社会への狂おしい怨嗟の中で絶命した。
死後、彼女の抱いた底知れぬ屈辱と絶望は、近代化の裏で虐げられてきたすべての女性たちの怨念と融合。
時空を歪め、帝都の裏側で200年もの間、その絶世の美貌を用いて男たちを惑わし、狂わせ、貪り食い殺し続けてきたとされる伝説の怪異へと変貌を遂げた。
「その実態を見た者は誰一人として生きて戻ったことがない」と言われる絶対の禁忌であり、討伐を試みた八咫烏神社の裏巫女側も、これまでに何十人もの手練れが無惨に殺害され、命を散らしてきたという血塗られた敗北の歴史を持つ。
生前の圧倒的な剣技は、漆黒の呪詛を帯びた日本刀を操る怪異の力へと昇華されており、空間そのものを断絶する神速の刃は処女の結界すら容易に切り裂く。
さらに、自身の最期の記憶を具現化した禁忌術「万魔怨皇・常闇国」を展開し、半径数キロを冷たく昏い井戸の底のような精神汚染空間へと変貌させる。
最強の裏巫女である詩織の自己呪詛解放の許容量すら一瞬で超越させる、名実ともに絶対的な深淵である。




