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第七話「墓参り」

「謙信様。少しだけお暇を頂きたく存じます。」


成都をこえて船に乗り川を下った。

荊州まで船で降って、

再び陸地にあがった。

もうすぐ目的地の江陵だ。

近くに小さな村があるあたりで、

紹先がお願い事をしてきた。


「ん?勿論いいけど、どうした?

何か用事があるの?」

「はい。

実はこのあたりは、

父と私の故郷であります。

父は漢中王様が立派な墓を成都に建ててくださいました。

骨の一部を故郷にも埋葬したいと思いまして。」

「そうか。

それならば俺も一緒に連れて行ってくれ。

霍峻将軍のならば墓参りしたい。」

「ありがとうございます。

父も喜びます。」


紹先と2人で村の墓地へと向かった。



紹先は霍家の親族の墓に骨を納めた。

手を合わせて語りかけた。


「父上にも漢中王即位を見せたかったです。

いま劉太子様が一緒に来てくださいました。

是非、この夷陵の地からも、

私たちを見守っていてください。」

紹先は素早く立ち上がり

「お待たせいたしました。謙信様」

「ここは夷陵と言うのか?」

「はい、ここら一体は

森の深い田舎の村です。」


そうか益州と荊州の狭間。

ここで劉備軍が孫権軍の陸遜に

火攻めで大敗した場所か。


「紹先、

俺が荊州の関羽を守りたいと以前話したな。」

「はい、手紙を代筆させていただきました。

孫呉が裏切って関将軍を追い詰めると。」

「その悪夢には先がある。

関羽の敵討ちに父が孫呉を攻めて、

ここ夷陵の地が戦場となったのだ。」

「なんと!こんな場所までも戦場に。」

「ここら一体に大掛かりな火計で、

劉備軍は大敗北する。」

「大敗北……」

「俺は決してこの村を戦火には巻き込みたくない。お前もそうだろう?」

「はい、ここには親戚がたくさんいますし、幼馴染もいます。」

「そのために関羽へ会いにいく。

関雲長あっての劉玄徳なんだ。

絶対に関羽を亡くしてはならないのだ。

それほどに父達の絆は強い。

親子以上かもしれない。

あの絆に俺も憧れてる。」

「はい、

劉三兄弟の義侠心は天下に轟いております。」

「紹先。

俺と義兄弟の契りを結ばないか?

俺一人ではあまりに非力だ。

俺の片腕となってくれないか?

紹先。」

「謙信様

太子様と私では

あまりに身分不相応でございます。」


ゴソッと背後の墓石の向こうから誰かが出てきた。


「何者だ!!」

すぐに紹先が俺を庇うように前に立つ。

「アッシだよ。」

「おっちゃんかぁ、脅かすなよ。

付いてきてたのか?」

「霍峻には世話になったからなぁ。

墓に酒をお供えしようと思ってさ。」


紹先は剣を降ろして膝をついた。


「紹先、いいじゃねぇか。

義兄弟ってのは赤の他人と信頼するからこそ、

そこに義が生まれる。

他人を裏切らない。

血縁でも身分でもない。

利他の心が義侠の心となる。

大将が漢中王になれたのも、

雲長と益徳がいたからさ。

お前が坊ちゃんの雲長役になりゃいい。

お前ならなれるさ。」

「関将軍に!恐れ多いです。」

「武力だけじゃない。

大事なのは心構えだ。

今だってとっさに

謙信を護ったじゃねぇか。」

「頼む。紹先。」

「分かりました。

未熟ながら父と関将軍を目標に精進致します。

謙信様

お願いいたします。』

「よし!

ならおっちゃんが後見人だな。」


俺と紹先は共に剣を抜き、

剣先を高く上げて重ねた。


「我ら義兄弟はここに誓う。

夷陵の地を決して戦火には巻き込まない。

霍峻将軍の墓前にて宣言する。

我ら二人、

姓も生まれも違えども兄弟の契りを結びしからは、

心を同じくして助け合い、

困窮する者たちを救わん。

上は国家に報い、

下は民を安んずることを夷陵の誓いとする。」


おっちゃんが懐から酒器を用意してくれた。

いつも持ってるなお酒。

桃園の誓いとまではならないが、

俺にも頼もしい義弟ができた。


なんと!

戦士ショーセンが仲間が加わった。

ズンチャチャチャチャチャチャん。

ゲーム音楽が脳内再生された。


おっちゃんはグビグビ飲みながら


「夷陵の誓い

ってかぁ。

めでてぇなぁ。

こうなると益徳みたいな

お笑い担当の

猪武者も必要だなぁ。」


と言ってきた。


「そうだな、おっちゃんも入るか?」

「ヒャッヒャッヒャッヒャッ

そういうのは若いモンでやってくれ。」

「たしかに、

俺もおっちゃんを兄者と呼びたくないなぁ。」

「ちげぇねぇ、アッシも年が離れすぎた義弟は勘弁だ。

お前はアッシらの息子だ。」


「紹先、

我らはこれより義兄弟。

これからは敬語を禁ずる。」

「わかった。」

「おっちゃん。

関羽は父の事をなんて呼んでた?」

「『兄者』だな。」

「よし、では紹先、

俺の事を兄者と呼べ。」

「兄者、わかった。」

「早速だか紹先、頼みがある。」

「なんでもやるさ!」


素直で気持ちいい。


「俺は諜報部隊が欲しい。

これから荊州は大戦になる。

局地的な武力もそうだが情報が大事だ。

身内の動向を調べたり、

他国に潜入調査をしたり、

父や孔明との素早い連絡係が必要となる。

ここはお前の故郷だったな。

素早く動ける者を集められないか?」

「父の親戚、昔馴染みに声かけます。」

「おっちゃんも面接とか裏取引とか得意だろ?

紹先と組んで諜報部隊の立ち上げの面倒を見てやってくれ。

これはおっちゃんへの前報酬だ。」


俺は身につけていた装飾品を外した。

大きい方をおっちゃんに渡した。


「悪くねえ品だ。いいぜ坊ちゃん。」


紹先にも装飾品を渡す。


「これを金に変えて支度品としてくれ。

報酬は今後も定期的に渡す。

家族が安心して暮らせるくらいの報酬だ。

人数が揃い次第、

俺を追って関羽の城に来てくれ。」

「わかった兄者。何人欲しい?」

「むむむ、

まずは10名。

いや4組に分けたいから12名集めてくれ。

多い分には問題ない。」

「それならすぐに集まる。」

「関羽が動き出したら荊州は大きく揺れる。なるべく早く集めて欲しい。」

「わかった。」

「おっちゃんも頼んだよ。」

「人遣いが荒いなぁ。

大将そっくりだ。」

「褒め言葉だ。

あと、城に着いた後も

おっちゃんの息子のまま

身分は伏せておこうと思う。

関羽や馬良らには明かすけど。」

「そいつがいい。

いざって時に明かすのがいい。」



よしこれで情報収集はできそうだ。

いよいよ関羽将軍に会える。

生ける武神、父の片腕、義侠心の塊

英雄の中の英雄

三国志ファンにはたまらない髭殿。

会うのが楽しみだ!


第一章 立志編  了



第二章 堅城編 第八話 関雲長 つづく

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