間話「初めての手紙」
時は遡る。
建安24年(219年)7月9日。
謙信が漢中を立って7日経った時のことだった。
漢中の玄徳と孔明の元に手紙が届いた。
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父上、孔明
私のわがままで、荊州に行かせていただき有難うございます。
私が何度も見た夢の展開を、
紹先に代筆させて送ります。
樊城の戦い
8月長雨と関羽水軍で
湿地の于禁軍降伏、
龐徳撃破で有利な展開
魏に動揺走り内乱があちこち起きる
曹操が遷都を考える。
樊城が陥落寸前。
于禁3万の降伏兵で食糧不足
麋芳、士仁の失火で補給失敗
関羽が激しく叱責、不信感が募る。
国境沿いの呉の食糧を奪って呉激怒。
徐晃の増援で長期戦に。
司馬懿の計で呉が裏切り
合肥の張遼も増援に移動開始。
呂蒙と陸遜が奇襲で麋芳、士仁寝返り江陵陥落し関羽が窮地に。
上庸へ援軍要請するも、
孟達劉封が領内不安のため援軍を拒否
12月 孫権軍に追い詰められ関羽捕縛
関羽の首を孫権が曹操に贈る
220年正月 曹操、呂蒙が病で没す
無名だが陸遜の才は
呂蒙以上であり
孔明に並ぶ知謀の将。
陸遜こそ蜀にとっての難敵で
要注意人物なり。
以上です。
私は関羽将軍に呉への警戒を強く伝えます。
父上、孔明
漢中王軍のご武運を祈っております。
簡義 謙信
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手紙を読むと玄徳は問うた。
「孔明、どう思う?」
「あまりの内容で、
今までの太子様とは思えません。
13歳の想像力を越えてます。」
「阿斗じゃあねぇと?」
「もしくは本当に天啓を得られたか。
太子様の正体と検証は後々に。
仮に偽物であった場合、
相手の狙いを考えるべきもの。
私たちを漢中から引き離す狙いか。
蜀漢の戦力を落とすためか。」
「オイラはそう思えねぇ。
この上庸の孟達劉封が援軍拒否
ってのが気になる」
「左様でございます。
魏の工作と考えると矛盾が多い。
また、呉の陸遜なる人物の警鐘を書く必要もありません。
むしろ関将軍と蜀の危機を回避できるよう、
重要な点だけを記してあります。」
「だろ、謙信が雲長を助けたがってるのがビシバシ伝わってくる。
誰かの入れ知恵にしたって
于禁の三万降伏ってのは予想できるものか?」
「内通を疑いますが、
于禁の増援と降伏を一月前から暴露し、
魏の動揺を知らせる必要がありません。
罠でも否でも、どちらの場合になっても対応できるよう策を練ります。」
劉備はゴクっと茶を一気飲みした。
「こりゃぁ大博打になるかもしれねぇな!」
「わが君はもう乗る気満々でございますね。」
「当たり前だ。
謙信が誰であれ、
雲長を助けたいって義侠心で、
自らここを飛び出してったんだ。
オイラだって本当は一緒に行きたかったぜ。」
「隠密に援軍を成都方面から行かせましょう。
趙雲に成都へ急行してもらい、
成都から千
江州4千
永安5千の合計1万の援軍を先発させてはいかがでしょうか?
「子龍ならピッタリだ!」
「そして、降伏兵が出るとあります。いずれにせよ兵站が肝要。成都より東の兵糧を荊州へ運ばせましょう。」
「いいぜ孔明。
さらに面白くなってきやがった!」
孔明はその後も、
手紙の内容を分析し、
あらゆる可能性の方策を編み出した。
そしてまずは、
関羽に向けて手紙を書き始めた。
……
早朝、漢中から密かに旅立つ一団を劉備と孔明は見送る。
「子龍、休む間もなく荊州に行かせて済まんな」
「王、雲長殿と同じ戦場に立てるのは武人の誉。
久し振りで気持ちが昂っております。
荊州はわが戦場、
12年前より阿斗様を守るは我が使命。
任命していただき光栄の至りです。
必ずや任務を全うしてきます。」
「嗚呼、
オイラからの命令は唯一つだ。
"子龍 お前は絶対に死ぬな。"
いつも激戦地ばかりだが、
お前は無くちゃならなぇ存在だ。
いいな。
この命令は絶対に守れよ。」
「はい。」
孔明は副官と話していた。
「馬謖、
趙将軍に全て従い、
全てを吸収しなさい。」
「はい!孔明先生」
「これより荊州は赤壁を超える大戦となります。
3万の降伏兵に対応できる兵站を用意しなさい。」
「必ずや」
「兵站が戦の勝敗を分けます。
あなたは蜀漢の未来を背負う将になっていただかねばなりません。
死地へ向かい、
趙将軍と共に任務を全うして下さい。」
「はい!」
「趙将軍。
現場の判断は全て貴方に任せます」
「ハッ!」
「趙将軍、ご武運を」




