第三十五話「越境」
巴丘港にて
孫権と別れる事になった。
ここは周瑜が陣没した場所だった。
長沙城から北の端にある港だ。
赤壁の戦いで勝利を収めた周瑜都督。
その後、曹仁と江陵城を巡って
激闘を何度も繰り返した。
劉備軍はその間に荊州南部、
長沙柱陽零陵武陵の
弱小四君主を平定。
210年、ついに周瑜は江陵を制圧。
ここから益州へ攻め入り
天下二分の計を進める途上に
この巴丘港にて36歳で没した。
巴丘港から船で西に渡ると
劉備軍の士仁が守る公安がある。
北に行けば烏林がある。
赤壁の時に曹操軍が大船団を
配置して燃やされた場所だ。
今の烏林は江陵の範囲内なので
劉備軍の領域だ。
東北に長江を進めば柴桑、建業へ至る。
つまり巴丘港は
三国が交わる長江の防衛の要所拠点。
孫権と陸遜は
孫皓や潘璋など
主軸の武将を船に乗せて
先に建業へ戻るらしい。
兵士はなるべく隠密に
合肥と広陵攻めのために移動を開始する。
香さんは孫権とサクっとお別れして、
公安へ向かう船に乗り込んだ。
「お兄さんとの別れはアッサリでしたね」
「散々呑んだし、
また会えるからええねん」
「お酒強いんですね」
「普通やろ。あんくらい」
香さんの普通って凄いなぁ。
体力が桁違いにあるんだろう。
「謙信。お願いがあんねん」
「何ですか?なるべく叶えます」
「侍女を2人連れてってええか?」
「2人だけ?
100人は来るかと思ってました」
「色んな名家の子女も沢山おってん。
みんな連れてくわけにはいかん。
内通されても困んねん。
ホンマに信用できる2人だけ」
そして香さんの後ろに
2人の侍女を紹介してもらった。
2人だけでも凄い存在感を発してる。
「林と山や。
こっちの背が高いのが林
異民族の仮面つけてゴツいのが山や」
「リンとサン?解りやすいですね」
「こいつらは名家の子女でもない。
ウチと昔から一緒やった。
信用できる。
連れてきたいねん。ええか?」
「勿論いいですよ」
「林はもう知ってるよな。
何度も稽古もしたし」
「はい。
林さん。
銀ネェも懐いてるし
また稽古を宜しくお願いします」
「はい。姫様に一生ついていきます」
短髪バレーボール選手の槍使いだ。
いつも香さんと一緒にいるイメージ。
護衛役なのかな。
姫様って呼ばれてるんだな。
「この仮面の山とも稽古したなー?」
「はい。怪力でとても強かったです」
「山は異民族の教えがあって
人前で素顔もさらせん。
一切喋れない。
でも一緒に虎狩りもしたから強いで。
こっちの言葉はちゃんと理解できる。
男が苦手やから、
頷く事しか出来へんけど宜しくな」
呉には山越族やら台湾の方やら
色々と異民族の宝庫だ。
屈強な部族も多く反乱も多いらしい。
「宜しくお願いします。山さん」
コクッと山は頷いた。
この2人が香さんの両サイドにいるから、
威圧感が半端ない。
なんちゃらボカンシリーズの悪役3人組みたいだ。
魔女様にノッポとデブ。
いかん。笑ってしまいそう。
香さんにお似合いだ。
お仕置きだべ〜
「どないしたん?なんか変か?」
「いいえ。
とても仲良しな3人組ですね」
俺たちは孫権軍が用意してくれた船に乗り込んだ。
紹先の諜報隊に予め、
公安に行くと連絡済みだ。
孫呉の船だが攻撃される心配はない。
ついに長い道草を終えて
劉備軍との国境沿いへ向かう。
1ヶ月間以上道草してた。
江陵城を出たのが7月下旬。
麋商人の案内で船に乗せてもらった。
徐州で信玄(徐庶)を三顧の礼で登用
建業で孫権諸葛瑾呂蒙と会い、
香さん(孫尚香)を風呂で口説き
銀ネェ(関銀屏)と婚約?
長沙に来て陸遜と会合。
関羽救出作戦の準備は整った。
樊城では于禁が降伏した。
これから公安に渡り、
いよいよ戦場へ合流する。
父と孔明宛に
これまでの経過報告の手紙を
紹先に代筆して貰った。
時は219年9月
樊城の戦いからの逆転劇
軍神 関羽の英雄譚の続きが見たい。
俺たちの策は張遼を倒せるか?
孫呉と硬く結んで曹操を倒す。
天下をひっくり返す2年間になってくれ!
第三章 道草編 了
第四章 戦場編
第三十六話 「合流」 つづく




