第三十四話「手柄」
「ドワッハッハッハー!!!
もっと飲めぃ!!」
孫権がもう悪酔いしてる。
簡雍のおっちゃんと秒で意気投合したようだ。
「ヒャッヒャッヒャッ」
やはり、おっちゃんはコミュニケーションお化けだ。
お酒お化けモンスターだ。
"人たらし"というか"酒たらし"。
酒好き相手ならば
万夫不当かもしれない。
「ナンボのもんやー!」
香さんも一気飲みしてる。
香さんもやっぱりお酒強いのね。
麋商人に熟練護衛兵も
今夜は無礼講だ。
そして信玄も一緒に飲んでる。
ちょっとビックリした。
軍師も呑むんだね。
人間だからそりゃそうか。
元々は義理人情の義侠者。
「良い呑みっぷりですねぇ!」
信玄もノリノリだ。
凄い知恵者だけど
仁義同士は気が合うのかな。
裁判長とかの仕事に就く人は
あまり飲み歩けないらしい。
プライベートでも
あまり人付き合いや
お酒の場には行かないと
聞いたことがある。
知人が多いと公平な裁判が
やりづらくなるらしい。
汚職まみれ、コネまみれ、裏金まみれ
いつの時代、どの国でも
悪い方に知恵を使う人はいるんだな。
孔明はあまり酒で
馬鹿騒ぎをしなさそう。
完璧主義者っぽい。
勝手なイメージだけど。
まぁ、蜀の未来を背負って
責任感が強い。
非情な人事で
馬謖を切ったりするから
ゆっくり酒飲んで馬鹿騒ぎも
できないのかもしれない。
信玄は低い身分から
努力して知識を得た努力家。
色んな層の人と飲んだ経験も多そうだ。
信玄の方が人付き合いは
上手いのかもしれない。
「ドワッハッハッハ!!
それいいなぁ。
酒が足りんぞぉ」
「やったれやったれ!」
「なんとかなんべ
ヒャッヒャッヒャッ」
「「「「かんぱーい」」」」
また悪巧みしてそうな
会話が聞こえてきた。
よく飲むし、よくしゃべる。
「かかってこいやーー!!」
「喧嘩や!喧嘩〜!」
「どっちに賭けっか?」
「虎の娘!」
「異民族娘!」
喧嘩に相撲、賭博まで始まった。
大人の席も楽しそうだ。
一方、
俺たちはお酒無しの
お子様テーブルといえば、
銀ネェと紹先は食べまくってる。
「紹先!このお魚
美味しいわよ!」
「はい。頂きます」
「これ辛〜い。でも美味しい〜」
「はい!激辛です」
「甘くて頬っぺた落ちちゃう」
「はい。こんなに甘いもの
初めて食べました」
銀ネェもよく食べるなぁ。
あんな綺麗な白肌して
どこに入るのだろうか。
肌の色は関係ないか。
風呂場の銀ネェの肌を思い出す。
綺麗な身体してたなぁ。
樊城の戦いが終わったら………。
ヤバい!
銀ネェと目が合った。
また叩かれる。
「この肉まんはあげないわよ!
最後の一個だったんだからね」
ふーっ。良かった。
勘違いしてくれて。
いやらしい妄想はバレてなかった。
銀ネェにお酒を飲ませたら
どんな酔い方をするのだろうか。
泣き上戸か、怒り上戸か、甘え上戸か
妄想は止まらない。
人の夢は終わらない。
宴会と食事で夜は更けていく。
………
……
…
翌朝、船の甲板から
兄妹が川へ向かって
仲良くレインボーリバースしていた。
あんだけ飲めば当然のことだ。
でも夜にはまた宴会が始まる。
すごい体力だ。
ウル虎タイガーブラザーズ。
江東の虎の血は伊達じゃない。
仲良しやんけ。
銀ネェはこのままじゃ
太っちゃうと言って、
毎日相手を変えて鍛錬していた。
根は真面目だ。
女将軍にしたいと聞いて
張り切ってくれてる。
稽古相手は紹先だったり俺だったり。
香さんも酒が抜けてる時は
相手してくれた。
香さんの侍女が沢山いて
槍や戟で稽古相手をしてくれた。
噂通りに弓腰姫の侍女は
猛者だらけだった。
異民族の仮面を付けた女性。
凄い巨漢で棍棒みたいの振り回す女性?
背の高いバレーボール代表選手みたいな女性もいる。
180cmは超えていそうだ。
髪は短くして動きやすさを
優先してるような女性だ。
うん。
たしかこの侍女さん
お風呂の時に手伝ってくれた人だ。
俺も紹先も稽古相手をして貰った。
女性とは思えない怪力な人もいた。
父の玄徳もビビるわけだ。
こんな人達がが百人くらい武器持って
寝室を護衛してたら
やりにくかっただろうに。
船は長江をすごいスピードで
荊南に向かっていった。
長江は川というよりも海だ。
向こう岸が見えない。
これならば
関羽軍が荊南に奇襲受けても
気が付かないわけだ。
宴会と訓練だらけの船は
ようやく長沙に着いた。
信玄はいつも通り色々と書いてた。
酒にも船酔いにも強いらしい。
次の策の準備を色々
やってくれてるのだろう。
長沙といえば韓玄!
俺の大好きな荊州弱小四天王。
何度プレイしたことか。
しかし
配下に黄忠と魏延がいるから
とても楽しい。
2人は今漢中に居るはずだ。
黄忠は夏侯淵を打ち取り、
魏延は漢中太守に任命された。
赤壁直後の11年前
韓玄の配下だった2人が
ここから紆余曲折の大出世するなんて
想像もしてなかっただろう。
そう考えるとロマンを感じる。
遂に陸遜と会う
蜀の天敵
呉と決戦するならば
ラスボス的存在感。
魏のラスボスは司馬懿かな。
陸遜に会うにあたって
信玄から助言を受けた。
地味な服装にして
孫権の後ろに隠れるべし。
最初は目立たないように。
さすれば陸遜の自然の姿が見れますよと。
孫権の後についていき
陸遜と会った。
「仲謀様!
自ら前線に来てくださるとは。
関羽討伐の準備は万端であります」
「おう伯言。
曹操からも爵位やっから
関羽を打てって書状が来よった」
「ちょうど良いではございませんか。
大きな恩を売っておくのも今後のため。
天の機が来てますな!」
「すまん伯言。
関羽攻めは辞めじゃ!」
「なんですと!
呂蒙都督に何かあったのですか?」
「いや、子明は建業におる。
もっと大きな好機が
転がり込んで来よった」
「関羽討伐よりも大きな好機なんですね?」
「嗚呼、間違いない。
伯言。
大手柄を挙げる絶好機やぞ!」
「関羽より大きなものとは…?」
「張遼に曹操じゃ!」
「この好機に合肥攻めですな?」
「その先、許昌もじゃ」
「分かりました。
すぐに精鋭部隊を組み直して
北上します」
「いや、全部じゃ」
「なんですと!?」
「動かせる兵を全部連れてくぞ!」
「それではここの守備が。
関羽軍や異民族につけ込まれますぞ」
「関羽にそんな余裕は無い。
異民族は放ってけ。
あとでなんぼでも取り返せる。
今は曹操を殺す最後の好機じゃ」
「大勝負にでるのですな」
「赤壁の比じゃないで。
周瑜を超えろ!伯言。
大手柄あげろ。
ワシ以外の重臣にも
文句言わせん程の手柄を。
次の都督は伯言
お前じゃ!」
「ハッ!ご期待に応えて見せます」
孫権は陸遜の肩を叩いた。
「何か劉備軍と密約ができたのですかな?」
「おう!そうじゃった。
こいつじゃ」
「むむ…」
…!
………。
何かを感じた。
俺も。
陸遜も。
見つめ合った。
「劉備んとこの二代目じゃ」
「はじめまして陸遜殿。
劉禅 字を公嗣と申します。
宜しくお願いいたします」
「陸遜 字を伯言です。
宜しく」
…
…
「2年の不戦協定を結んだ。
子明んとこ行って
天下取りの算段を考えてくれ!」
「仲謀様。
かしこまりました。
ただちに」
………。
陸遜とは最低限の言葉しか交わさなかった。
彼とは将来
何かあるのだろう。
きっと向こうも同じ事を感じたのだろう。
信玄の言う通り、
最初は隠れてて良かった。
孫権とはめちゃくちゃ話してた。
俺が出た瞬間、態度は急変した。
少しだが、陸遜の自然の姿が見れた。
そして俺の情報はほぼ出してない。
上出来だ。
今はこれでいい。
関羽討伐の準備は万全だと言ってた。
それをギリギリで
阻止する事に間に合ったのかな。
陸遜…。
油断ならない最重要人物だ。
第三十五話「越境」 つづく
三国志人物紹介
陸遜リクソン 字は伯言ハクゲン
36歳
揚州呉郡出身 生183-245年没
呉の武将。元の名は陸議。「呉の四姓」陸家の出。陸抗の父。年少の又従兄弟・陸績に代わり一族を率いる。
三国志演義では
孫策の死後、孫権の幕下に招かれる。219年、へりくだった書状を送って関羽を油断させ、呂蒙の荊州攻略を支援した。夷陵の戦いでは、劉備の大軍に火攻めで勝利。石亭の戦いでも曹休を大破し、呉の大黒柱となる。
正史では
早くに父を失い、陸康の下に身を寄せるが、陸康は孫策に討たれる。孫権の代に和解し、孫策の娘を妻とした。以後、異民族の討伐に活躍。244年、丞相となるが、孫和と孫覇の後継者争いに巻き込まれ、憤死。
統率96.武力69.知力95.政治88.魅力91
ゲームで若者イメージがあるが、
この時点で中年親父なのがビックリ。
そして三国志あるあるの憤死。
今でいうストレスによるものか。




