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第三十話「湯」

孫尚香と関銀屏と劉禅(俺・謙信)の

3人で大きな露天風呂に入っている。


相手の身体を見ると集中できない。

なるべく香さんの顔を見て話そう。

顔も美人すぎる。

俺の視線が身体から顔に移ると

銀ネェの機嫌も少し治った。


銀ネェは香さんの後ろ側、

俺からは銀ネェの身体が見えない位置で

湯船に浸かってる。


「ハァ〜…。

稽古の後のお風呂サイコー」


銀ネェの吐息が漏れる。

気持ち良さそうだ。

こんな美人2人と混浴できるなんて

幸せだ。

もういっそお湯になりたい。



いかん!

煩悩退散!

信玄(徐庶)は寝る間も惜しんで

合肥城の図面を書き写してくれてたんだ。

俺も信玄から頼まれた

"例の件"を実行しよう。

ここから本番モードだ。

関羽救出作戦スタート



「香さん。

7年ぶりにまた

劉備軍に来てくださいませんか?」


「どうしたん。

玄ちゃんに言われて来たん?」


「違います。

親父からは好きに

道草して来いと言われました」


「玄ちゃんらしいわ」


「だから好きな人に会って、

好きなように話してます。

私が香さんに来て欲しいのです。

一緒にまた暮らしませんか?」


「ええ!!

私も香姉様と暮らしたい」


「フフッ そら楽しそうやなぁ」


「俺はこれから

孫権殿を全力で説得します。

お兄様から許可が貰えたら

来てくれますか?」


「ウチにそ〜んな来て欲しいんか?」


「はい。

孫尚香殿に我が軍へ

どうしても来て欲しい理由が3つ、

否、4つに増えました」


大袈裟に、役者っぽく語ってみた。


「増えたって何よっ!

イヤらしい理由じゃないでしょうね」


香さんの向こう側で銀ネェが

プンスカしてる。

それを香さんも楽しそうに見てる。


「そんなんじゃ無いです。

ちゃんとした理由です」


ツンデレか、銀ネェは。

可愛くて全裸だから全て許すけど。


最近の俺は交渉人ばかりしてます。

この1ヶ月半

多くの人と会って説得して回った。

劉備、孔明、簡雍、紹先、

馬良、関羽、麋芳、士仁、関銀屏

麋商人、徐庶、諸葛瑾、孫権、

そして孫尚香で14人目だ。


三国志最弱能力の劉禅の

知力はたったの『9』 ゴミだ。

交渉コマンドばかり実行してるから

そろそろ知力1ポイントあがってて欲しい。

まぁ、知力9が10になった所で

ようやく二桁か。

あんまり意味無いな。トホホのホ


「謙信。

聞かせてや。

ウチが欲しくてたまらない理由

ってなんや?」


香さんは本当にいつも笑顔だ。

見習いたい。

モテるんだろうなぁ。

美人で胸がデカくて、度胸もある。

そしておっぱいがでかい。

湯船に浮くほどに。


「1つ目は家族をたくさん作って欲しいからです。

親父のところに戻って、

俺の弟や妹を作って欲しいのです」


「みたい!

香姉様の子供なら私も見たい。

オシメ換えるの得意なのよ。

謙信のだって換えたんだから」


なぜか銀ネェは得意げだ。

俺は全く覚えてないけど。

赤ちゃんの時にもう

ちんぽこ見られてたんか。

なんだか気恥ずかしい。


「先月、関羽に言われました。

孫権と曹操にあって、

劉備に無いものがある。

それは強い一門衆であると」


「ホンマや。

孫家は多いで親戚。

面倒な奴もぎょーさんな」


「漢王室が劉姓なんだけど

劉玄徳の直接的な一門衆は圧倒的に少ない。

父玄徳には兄弟もいない。

従兄弟とかも聞いた事ない。

劉表とか劉璋とか

とても遠い親戚はいる」


「言われてみたらそうね」


「一騎当千で最強の義兄弟はいました。

これは非常に恵まれてます。

しかし

直接的な親族や子供が少ない」


「父上はそんな事言ってたんだ〜」


銀ネェも感心する。


「漢中王となり国を作る段階に

きたのだから

沢山一門衆を作る必要がある。

私にもたくさん作れと

関羽に言われました」


「玄ちゃんの子ね。

ウチも欲しかったわ。

僅かな時間しか居られへんかったけど」


「俺も弟や妹がたくさん欲しいです。

それが劉備軍と孫権軍の

血縁ならば尚更、絆も深まります」


「一門衆な。

面倒臭い親戚も多いけど、

まぁ確かに血縁の絆は強い。

女は政略結婚にして

男は武将や太守にすんねんな」


「私が単に子供好きで

大家族に憧れるって理由もあるんですけどね」


「な〜るほど。

ほな2つ目は?」


2つ目の理由は正直言いづらい。

せっかくお風呂で気持ちよく

ご機嫌な雰囲気だから

壊したくないのだけれど。

でも逃げちゃ駄目だ。

覚悟を決めてまっすぐ、

香さんの目を見て語った。


「孫権殿が裏切って魏と手を組み、

関羽を殺そうとしてます」

「兄ちゃんと言うより、

呂蒙と陸遜やな」


香さんもある程度知ってたのかな。

呂蒙都督と

次の陸遜都督が

荊州侵攻派の中心人物だ。

この2人にも会っておかねば。

銀ネェの表情も曇る。


「俺は関羽を救いたくて

漢中からここに来ました」


「関羽は我が父のような存在です。

関羽を失えば劉備軍は終わりです。

香さんから

兄の孫権殿を説得して欲しいのです。

荊州で孫劉が潰しあっても

得するのは曹魏だけだと」


「香姉様。

私からもお願いいたします。

父上を助けるため

力をお貸しください」


「阿斗…。

いや、謙信。

男前になったな」


ニコッと孫尚香は笑った。


「ウチも玄ちゃんが大好きや。

関さんにもぎょーさん世話なった。

兄ちゃんも孫呉も大好きや。

ウチから兄ちゃんに話したるで」


「やったー!!

香姉様大好きーー」


銀ネェが香さんの背中に抱きついた。

裸の2人。イカンオカン。

キャットバトルかいな。

ぷるるんぷるるん


「でも銀、

待ったってな。

ぬか喜びさせたい訳やないねん」


銀ネェの腕を優しく解いて

諭すように語った。


「呉郡四姓っつ〜てな。

呉には、陸、顧、朱、張と4つの名家がおんねん」


指折り数えて説明を続ける。


「他にも周、歩、孔、虞…やらなんやら

偉っそ〜な豪族や頑固ジジイが

いっぱいおんねん」


「面倒臭っ!」 


銀ネェが顔をしかめる


「その通り!

ホンマ面倒臭いねんアイツら」


中国の南部は昔から名士が沢山いた。

キングダムの春秋戦国時代や

呉楚七国の乱の頃からである。

孫呉の支配領域には

元王族や豪族や名士などが

200名以上もいたらしい。


先代の孫策は力で殲滅政策。

滅ぼした名家の恨みも沢山買った。

だから暗殺された。

孫権の代からは逆の方針に変えて

地域豪族と協調政策が好評だ。


地元名士たちは

自分の土地を守るには積極的だが、

遠方まで行って戦争するのは

嫌がる習性がある。

古株や既得権益が多いのだろう。


「でもな策兄がぶっ潰した家にも

権兄の代では和解したり、

ペコペコしたり、嫁がせたり、

色々大変やったんやで権兄も…」


「うわぁ、

根気がないとなかなかできませんね」


「そぅやぁ。特に陸家の陸遜や。

可哀想なやっちゃねん。

策兄ん時に攻め込んで、

陸家をほぼ潰したんや。

その後、権兄の代になってから

恨みもあるだろうけど、

陸遜がよう働いてくれんねん。

そしたら策兄の娘と結婚させたんやで」


「一族の仇の娘とですか。

複雑すぎますね」


「そんなんばっかやで。

他にも頑固ジジイばかりで

自分とこに利益があるかどうかしか、

考えてないねん。

荊州の大きな土地を狙うんも

その利益を色んな家に

配る為でもあるんやろな」


「それならば大丈夫です。

荊州よりも大きな利益が出ますから」


「お!なら話は早いねん。

わかった。

ウチからも兄ちゃんに

言うたるで。

関さんと苦労して戦うよりも

ぎょーさん儲かるでって」


「はい。

孫権殿は妹君に甘いと

聞いてますので

是非お願いいたします」


これは信玄からの助言である。

"例の件"とは

孫尚香から孫権に

関羽討伐中止の説得のお願い。

これが信玄ミッションである。


「他の名家とはウチ、

関わりたくないねん。

呉に戻ってからも

チクチク言うてくるんやで。

イラっと来たら射抜いてまうわ」


香さんは長湯になったから

突然前も隠さずに立ち上がった。


「ふぅ、熱い」


湯から出て正面の岩に腰掛けた。


「あぁ、この岩はひんやり気持ちイィ」


「こら!香姉様の正面に立つな阿呆阿斗!」


いや、

俺は一切動いて無いんだけどね。

むしろ湯の中でジッと座ってた

だけなのですが。

流石に20代の完熟全裸を

湯船から見上げてると

俺も正気が保てなくなる。

俺も香さんの隣の岩に腰掛けた。


ふーーーーーーー。


「な!気持ちええやろ?

銀もおいで」


銀ネェは湯船から顔だけ出して、

こちらに四つん這いで移動して

近づいてきた。

俺は岩に腰掛けてたから

銀ネェを上から見下ろす感じになった。

胸を見られまいと上半身を隠すせいで

真っ白いお尻がひょっこりはんしてる。

銀ネェは銀というより真っ白い雪肌だ。


「こっち見んな!すけべ阿呆阿斗」


銀ネェは俺の更に隣の岩に腰掛けた。

俺が真ん中に座り、

左右に裸の女性だ。

これが両手に花と言うやつか。

幸せすぎて怖いくらい。

俺、もうすぐ死ぬのかな?

死亡フラグが立ってそうだ。


香 俺 銀 と横に並んで腰掛ける。

岩 岩 岩


「謙信!こっち見たら殺すからね」


「ええやん。

減るもんやないし」


「減るの!

私の大事な何かが減るの。

嫁入り前の娘なの!」


「ハッハッハッ」


香さんは大きな乳房を上に向けながら

後ろに手をついて

空に向かって豪快に笑ってる。

女体を一切隠そうとしない。


俺は香さん側に少し体を向けて

目線は顔あたりを見ていた。

横に並んで良かった。

流石に全裸女性と正面から

話すと目がどうしても

身体に吸い寄せられてしまう。


「まだウチを連れ去る理由があるんかい?

もうお世辞も口説き文句も

売り切れてんやろ?」


「あります。

3つ目が大事で、

俺の本心を言います」


笑顔の孫尚香は楽しそうに

ん?と言葉を待ってる。


「1つ目の願いである

父との子供を産んだ後に」


うんうん。

香さんはまるで

心地よい音楽を聴いてるみたいに

俺の話を聴いてる。

ご機嫌だ。


「3つ目の願いは

孫尚香、

貴女を武人として、

将として登用したい」


「「えっ!」!!!」


香と銀が驚きの声をあげる。


「謙信!

何冗談を言ってるの?」


背中側から銀ネェの声。

俺は香さんの顔をじっとみる。


「俺は大真面目だ。

貴女の武勇の腕が欲しい。

そして度胸がある。

どんな環境にも文句を言わない

順応性も備わってる。

笑顔でいるその華やかさは

戦場では味方の士気をあげる。

弓の腕は超一流だ。

孫呉と劉備の同盟強化の絆にもなる。

将軍として劉備軍に登用したい」


いつも笑顔の孫尚香が

珍しく固まっている。


え?どんな反応。

美人に無反応されると

怒ってるかと不安になる。

ちょっと焦ってしまう。

俺はちょっと逃げるように

銀ネェの名を出した。

お願い銀ネェ。フォローして!


「銀ネェだって言ってたじゃん!

香姉様は心が強いって。

政略結婚で振り回されたのに

涙一つ見せず笑顔でいたって」


「…たしかにそう言ったけど…」


銀ネェまでドン引きしてるのだろうか。

背中側にいるから表情はわからない。


「その精神力は趙雲将軍に通づる。

貴女も一身是胆だ。

これは将軍にとって

最も重要な才だと思う。


度胸。

戦場経験は俺と同じで、

今はまだ少ないかもしれない。

これから

父や関羽の部隊に入って

戦場で一緒に経験を積む。

俺の代になった頃には

歴戦の猛将になってますよ。

香さんならば」


「……」


まだ香さんは固まっている。

あれ?どうしよう。

失敗したのかな?

とにかく理由は全部言い尽くさないと。

だんだん不安になってきた。

俺は手をバタバタしながら続ける。


「親父はもしかしたら

香さんの身の安全を心配して

反対するかもしれない。

でも、

貴女なら戦場にだって連れていける。

自分の身を自分で守れる女性なんて

香さんと銀ネェくらいだ。

むしろ弓で親父の戦力にだってなる。

歴戦の傭兵隊長だった親父には

まだまだ最前線で

戦ってもらわなきゃ困る。

そして

強い一門衆を戦場でだって

作る度胸もある。

香さんなら何処でもできるでしょ?

ほら!

香さんにピッタリでしょ」


ちょっと下品すぎたかな。

まだ無反応。

もうなるようになれだ。

こうなったら

俺がずっと移動中に考えてた事を

全部しゃべってやる。


「親父だって60手前だ。

今13歳の俺が

2代目を継ぐ頃には

関羽張飛馬超黄忠趙雲

五虎大将はみ〜んな天に召されてる。

劉蜀は本当に人材不足なんだ」


蜀の滅亡近くまで

働いてくれる猛将と言えば

魏延か姜維か馬岱ぐらいかな。

武力90越えはたぶん魏延だけ。

だから魏延は調子に乗るんだよ。

まだ会った事もないけど、

ボロクソな言い方でごめんね魏延。


南蛮の孟獲と祝融も使えるのかな。

なんとなく同年代の

孫尚香と祝融夫人は馬が合いそう。

なんの根拠もないけど。

2人並ぶところ見てみたい。

夫の愚痴とか主婦会とかあるのかな。


「10年後20年後に戦える人材が欲しい。

多少の知識や武勇があったって

土壇場でビビっちゃう奴じゃ駄目なんだ。」


馬謖や麋芳、士仁、孟達、李厳とかさ

大事な所でミスをする。

度胸がない。

特に馬謖さん。貴方ですよ!

嘘ついたりサボったり、寝返ったりする。

香さんならば裏切る心配なんてない。


「香さんは自由奔放に見られやすいが、

ちゃんと家族を思ってる。

義侠心があり、

忠義の心は関羽に通づる」


決してお世辞ではない。

孫策や孫権をいつも立てている。


「もし良かったら

武装した百人の侍女ごと

欲しいくらいだ。

遊撃部隊か親衛隊にしたっていい。

貧弱な男武将の部隊にだって

負けやしない」


男からしたら、

女部隊は戦い辛いだろう。

今の時代、

女性だって軍隊にいたりもする。


「とにかく強い腕と心を持ってる

孫尚香を

夫人だけでなく

武人としても欲しいんだ」


「…」


あれ?すべったかな。

寒いわーってツッコミを

入れて欲しいのだけれど…。


「そして4つ目の理由も

全部話しちゃうね。」


「4つ目は銀ネェだ」


「わ、私?」


振り向いて銀ネェの顔を見る。

銀ネェは驚きすぎて

正面から裸を見られてる事に

気がついてない。

真っ白くてとても綺麗な身体だ。

湯で少し紅くそまってて魅惑的だ。

銀ネェがまだ呆気に取られてるうちに

香さんへ目線を戻す。

香さんも銀ネェを見つめてる。


「銀ネェは香さんに憧れてる。

だから

関銀屏を孫尚香に匹敵するくらいの

武人に鍛えて欲しい」


「えええええええ!!!

それいい!!

そうしましょう香姉様!」


嬉しそうな銀ネェの悲鳴が上がった。


「香さん1人が女将軍では

やりづらいでしょ?

だから関銀屏部隊も作る。

関羽は父親として

許してくれないかも知れないけど

なんとか説得します」


「謙信!言って。お願い」


「20年後には

孫尚香将軍と関銀屏将軍に

2代目蜀漢を支えて欲しいんだ」


「それにさ。

あれ?

これだと5つ目の理由になっちゃう。

お願い増えちゃうけどいいよね。

ごめん。

親父の子供を妊娠したら

戦場には当分、

連れ回せないじゃん。

その時は、

安全な成都とかで

俺や義弟の紹先、

一門衆だろうが

一般兵士だろうが

未来の人材育成のために

弓をみんなに教えて欲しいんだ」


俺は弓の構えだけを

ジェスチャーでする。


「出来る範囲でいいんだぜ。

妊婦さんって

ツワリとかあるんでしょ?

よくわからないんだけど。

身体や赤ちゃんに負担が無い範囲で

構わないから

香さんの弓の高い技術を

指南役として採用したい。」


「…」


あれれ?

長く話しすぎたかな。


「簡単にまとめるね。

香さんが欲しい理由は

1つ 父玄徳と子供作り

2つ 兄孫権殿の説得

3つ 武人として登用したい

4つ 関銀屏を武人に育てて欲しい

5つ 弓の先生として皆に指導


香さん

お願いします。

俺と一緒に劉備軍に来てください。

お願いします」

「香姉様 お願いします」


銀ネェも一緒にお願いしてくれる。


俺はねるとん告白タイムみたいに

立ち上がって

手を前に出して頭を下げた。


「来てくれるなら

俺の手を握ってください。

お願いします」

さぁ、この手を握って

出した俺の手に

何も反応がない。

あれ、フラれたパターン?

がっくし系

未だに宙ぶらりんの俺の手

全裸な俺は情けなくなって来た


「スン」


何か聞こえた。

俺は顔を上げた。


香さんはいつの間にか

両手で顔を隠して

下を向いてしまっていた。


「謙信!水と浴衣を持って来て」


銀ネェが香さんを優しく抱きしめる。


「早く!」


「はい!」


俺は脱兎の如く湯船を出た。



第三十一話 「亡命」  つづく

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